第58話 ちゃんとした場所
文字数 886文字
斎藤君に三年ぶりに話しかけられ、動揺してしまった。
「あっ、何でここに、あっそうかダムで何かあったら役場にも通報行くよね」とやたらと早口で喋った。
丸山さんが訝しげに私を見たような気がした。色々と頭が回る人だから、動揺していることに気づかれたかもしれない。
私はこの場をなんとか取り繕おうと慌てて喋り出した。
「ダムで大変な事になっちゃいましたね」
そういうと、斎藤君は三年前と変わらぬ穏やかな調子でこう言った。
「そうですね、今後この件がどう響いてくるか」
「心配ですね」
私も相槌をうった。
「警備員でも雇うか、村の雇用にもなるし」「それがいいかも、休耕期みんな暇そうにしてるし」
三年ぶりに二人で目を合わせて笑った。
「あっ、お子さん産まれたそうでおめでとうございます」
私がそう言うと斎藤君は「ありがとうございます」と頭を下げた。
「やっぱり可愛いですか?」
「可愛いよ、暇な時はついつい写真見るんだよね」
「良かった」
そう心から喜ぶと彼は悲しそうな顔をした。
「そんなに喜ばれると複雑だよ」
内心「何を言い出すんだ」と思いながらも彼を軽くあしらうことにした。
「村長に初孫誕生!ってみんな祝ってましたよ、広報にも二ヶ月連続で写真載ってたし。私も村人ではないけれど、素直に嬉しいです」
斉藤君は大きく息を吐いた。
「テレビ見てたけど、山浦先生が本当に丸山さんと付き合ってるなんて思わなかったよ」
丸山さんに付き合うと言ってないのに、ここで肯定するのも変な気がして何も言わなかった。
「私達署に行かなくちゃいけないのでこれで失礼します」私が丸山さんと目を合わせてその場を二人で立ち去ろうとした時、斎藤君に「亜紀ちゃん」と呼ばれた。
何故下の名前で呼ぶんだと怒り気味に振り返ると「色々ごめん、迷惑かけた。幸せになって」とあの日と同じ泣きそうな、でもあの日と違ってほっとしたような顔で言われた。
「はい、それでは」と他人行儀に言い、会釈すると私を訝しげに見ていた丸山さんに「行きましょう」と言って車に向かって歩き出した。
「あっ、何でここに、あっそうかダムで何かあったら役場にも通報行くよね」とやたらと早口で喋った。
丸山さんが訝しげに私を見たような気がした。色々と頭が回る人だから、動揺していることに気づかれたかもしれない。
私はこの場をなんとか取り繕おうと慌てて喋り出した。
「ダムで大変な事になっちゃいましたね」
そういうと、斎藤君は三年前と変わらぬ穏やかな調子でこう言った。
「そうですね、今後この件がどう響いてくるか」
「心配ですね」
私も相槌をうった。
「警備員でも雇うか、村の雇用にもなるし」「それがいいかも、休耕期みんな暇そうにしてるし」
三年ぶりに二人で目を合わせて笑った。
「あっ、お子さん産まれたそうでおめでとうございます」
私がそう言うと斎藤君は「ありがとうございます」と頭を下げた。
「やっぱり可愛いですか?」
「可愛いよ、暇な時はついつい写真見るんだよね」
「良かった」
そう心から喜ぶと彼は悲しそうな顔をした。
「そんなに喜ばれると複雑だよ」
内心「何を言い出すんだ」と思いながらも彼を軽くあしらうことにした。
「村長に初孫誕生!ってみんな祝ってましたよ、広報にも二ヶ月連続で写真載ってたし。私も村人ではないけれど、素直に嬉しいです」
斉藤君は大きく息を吐いた。
「テレビ見てたけど、山浦先生が本当に丸山さんと付き合ってるなんて思わなかったよ」
丸山さんに付き合うと言ってないのに、ここで肯定するのも変な気がして何も言わなかった。
「私達署に行かなくちゃいけないのでこれで失礼します」私が丸山さんと目を合わせてその場を二人で立ち去ろうとした時、斎藤君に「亜紀ちゃん」と呼ばれた。
何故下の名前で呼ぶんだと怒り気味に振り返ると「色々ごめん、迷惑かけた。幸せになって」とあの日と同じ泣きそうな、でもあの日と違ってほっとしたような顔で言われた。
「はい、それでは」と他人行儀に言い、会釈すると私を訝しげに見ていた丸山さんに「行きましょう」と言って車に向かって歩き出した。