第30話 コスモ山浦
文字数 1,627文字
「じゃあ私のどこがいいんですか?明確な理由、納得できる理由をしっかり教えて下さい」
そう言うと彼は飄々と言った。
「うん、話すテンポがいい」
正直、意味不明な理由でイラッとした。
「テンポがいいって漫才コンビの相方選ぶんじゃないんだから、一緒に漫才コンビでも組んでほしいんですか?」
丸山さんはまた笑った。
「漫才の相方は北澤一人で十分、亜紀先生いや亜紀ちゃんは間がいいスピードもいい、切り返しの内容もいい」
「今さりげなく敬称変えましたね、というかよく喋る人が好きってことですか?それなら」
「いいか、亜紀ちゃん。話すテンポは人それぞれ生まれつきのもので、なかなか変えられない。ほんの0.1秒ずれても俺は話してると気持ち悪い」
「はぁ」とにかく相槌をうった。
「亜紀ちゃんは俺が求めてるテンポと間合いで素人としては合格点以上の返しをくれるから」
何故か丸山さんは得意気に言った。
「そんな意味不明な理由でですか?怪しい、裏があるんじゃないですか?ドッキリ?宗教の勧誘?」
「最近はドッキリは絶対に素人にはやらない、全員エキストラだ。俺はクリスマスにケーキお正月に神社にいく典型的な無宗教日本人、マルチの勧誘でもない」
「マルチまでは言ってません」そう言うと丸山さんは「こういう所だよ」と言ってまた笑った。
「あの、丸山さんのいうことを全て信用するなら、あれじゃないんですか?吊り橋効果ってあるじゃないですか?
全然好きじゃないのに吊り橋怖いから一緒に渡ったら。何か好きだって思っちゃう奴。ほらゲレンデマジックみたいな」
そう言うと「吊り橋効果はよくわからん、けれどもう一回誰かと山登るの嫌だから、別にそれでもいいだろ?
それに俺は今日山じゃない所で会ったけどやっぱり好きだなって思ったよ。
君は塩飴じゃない、イチゴキャンディだ」と彼は自信満々に言い切った。
「嬉しいのか嬉しくないのかよくわからないセリフ」
私はそう言ってあのイチゴキャンディを思い出して黙った。
駅の階段を上りかけた時彼は「そっか、じゃあさ、結婚しよっか」と言った。
「はぁ!?何言ってんですか、たった二度会っただけの人に」
私の怒りの熱量とは正反対に彼は落ち着き払っていた。
「じゃあどっちか選んで、結婚するか付き合うか、どっち、どっちにする?」
「えっ…じゃあ付き合う方でって、丸山さん今私にそう言わせたいが為に結婚してって言いましたよね。余計腹ただしいんですけど」
そう怒っても丸山さんに堪えた様子はない。
「そっかじゃあさ、来週も同じ時間帯に金沢で仕事あるから、アキちゃん家また来て飯食ってもいい?」
「えっ、それは別に構いませんが」「じゃあまた来週」
そう言うと丸山さんはポケットから新幹線の切符を、取り出し改札に入れるとホームへと続くエスカレーターをのぼっていった。
私は今の様子を呆気にとられて、誰も乗っていないエスカレーターをただ見ていた。
もしかして丸山さんの本当の目的は来週も来るということなのだろうか。一体何のために?本当に私のことが好きなんだろうか?
わからないことだらけでまだ頭が混乱している。
「また来週ってどういうこと?」
背後から聴き慣れた声が聞こえて振り向くとそこには森野先生が旦那さん、お子さん二人という家族連れで立っていた。
「どういうこと?丸ちゃんと付き合ってるの?」
森野先生がどんどん近づいてきてパーソナルスペースを半分ほど侵入してくる。
ご家族の皆さんは呆気にとられてこちらを見ている。
「いや付き合ってるわけではなくて、忘れ物を届けに来てくれたというか」
「じゃあまた来週ってどういうこと?」何も答えられなかった。
私の選択肢は逃げる、全力で。
「ちょっと待ちなさい!」後ろで声が響いた。
けれど逃げる、逃げる。
言葉がでない時は一旦退散する。
そう言うと彼は飄々と言った。
「うん、話すテンポがいい」
正直、意味不明な理由でイラッとした。
「テンポがいいって漫才コンビの相方選ぶんじゃないんだから、一緒に漫才コンビでも組んでほしいんですか?」
丸山さんはまた笑った。
「漫才の相方は北澤一人で十分、亜紀先生いや亜紀ちゃんは間がいいスピードもいい、切り返しの内容もいい」
「今さりげなく敬称変えましたね、というかよく喋る人が好きってことですか?それなら」
「いいか、亜紀ちゃん。話すテンポは人それぞれ生まれつきのもので、なかなか変えられない。ほんの0.1秒ずれても俺は話してると気持ち悪い」
「はぁ」とにかく相槌をうった。
「亜紀ちゃんは俺が求めてるテンポと間合いで素人としては合格点以上の返しをくれるから」
何故か丸山さんは得意気に言った。
「そんな意味不明な理由でですか?怪しい、裏があるんじゃないですか?ドッキリ?宗教の勧誘?」
「最近はドッキリは絶対に素人にはやらない、全員エキストラだ。俺はクリスマスにケーキお正月に神社にいく典型的な無宗教日本人、マルチの勧誘でもない」
「マルチまでは言ってません」そう言うと丸山さんは「こういう所だよ」と言ってまた笑った。
「あの、丸山さんのいうことを全て信用するなら、あれじゃないんですか?吊り橋効果ってあるじゃないですか?
全然好きじゃないのに吊り橋怖いから一緒に渡ったら。何か好きだって思っちゃう奴。ほらゲレンデマジックみたいな」
そう言うと「吊り橋効果はよくわからん、けれどもう一回誰かと山登るの嫌だから、別にそれでもいいだろ?
それに俺は今日山じゃない所で会ったけどやっぱり好きだなって思ったよ。
君は塩飴じゃない、イチゴキャンディだ」と彼は自信満々に言い切った。
「嬉しいのか嬉しくないのかよくわからないセリフ」
私はそう言ってあのイチゴキャンディを思い出して黙った。
駅の階段を上りかけた時彼は「そっか、じゃあさ、結婚しよっか」と言った。
「はぁ!?何言ってんですか、たった二度会っただけの人に」
私の怒りの熱量とは正反対に彼は落ち着き払っていた。
「じゃあどっちか選んで、結婚するか付き合うか、どっち、どっちにする?」
「えっ…じゃあ付き合う方でって、丸山さん今私にそう言わせたいが為に結婚してって言いましたよね。余計腹ただしいんですけど」
そう怒っても丸山さんに堪えた様子はない。
「そっかじゃあさ、来週も同じ時間帯に金沢で仕事あるから、アキちゃん家また来て飯食ってもいい?」
「えっ、それは別に構いませんが」「じゃあまた来週」
そう言うと丸山さんはポケットから新幹線の切符を、取り出し改札に入れるとホームへと続くエスカレーターをのぼっていった。
私は今の様子を呆気にとられて、誰も乗っていないエスカレーターをただ見ていた。
もしかして丸山さんの本当の目的は来週も来るということなのだろうか。一体何のために?本当に私のことが好きなんだろうか?
わからないことだらけでまだ頭が混乱している。
「また来週ってどういうこと?」
背後から聴き慣れた声が聞こえて振り向くとそこには森野先生が旦那さん、お子さん二人という家族連れで立っていた。
「どういうこと?丸ちゃんと付き合ってるの?」
森野先生がどんどん近づいてきてパーソナルスペースを半分ほど侵入してくる。
ご家族の皆さんは呆気にとられてこちらを見ている。
「いや付き合ってるわけではなくて、忘れ物を届けに来てくれたというか」
「じゃあまた来週ってどういうこと?」何も答えられなかった。
私の選択肢は逃げる、全力で。
「ちょっと待ちなさい!」後ろで声が響いた。
けれど逃げる、逃げる。
言葉がでない時は一旦退散する。