第197話 再会は突然に

文字数 2,042文字

12月28日より冬休みに入った。まだ二十代の時は友達と遊んで冬休みはとても楽しい思い出が沢山ある。

いつもの愚痴になるけれど、友にも家庭ができ子供ができると私の冬休みは途端に色褪せた。

今年の冬休みも好きな時間に起きてDVDを観て好きな時にご飯を食べてマリオメーカーをしてテレビを見て寝る。時々智が来たり、たかちゃんが来たり、何故だか村人が餅と野菜を持ってきたり、そんな日々はあっという間に過ぎていく。

気づけば紅白歌合戦が終わり近所にある唯一のお寺で除夜の鐘がつかれていた。

今日深夜から明け方の年越し特番にしげちゃんが出ると言う情報があるのでそれを待っていた。欠伸が止まらない深夜二時それは始まった。

芸人さん達が三十人くらい集まって新年らしくとにかく明るく騒いでいた。

どんな服を着た女の人が好きかという話をしていて、それぞれが好きな服をマネキンに着せていた。

大学生風とか女子高生風とかワンピースとか色々あったけれども、彼はスリットがチャイナドレスのように大胆に入り、胸元からヘソまで切れ込みが入ったようなワンピースをチョイスしていた、こんな服よく見つけてきたな。


目が虚になってきた午前三時、それは始まった。

誰かの奥さんが書いてくれたアンケートでとんでもない暴露がされて周りが囃し立てて盛り上がっていた。

しばらく寝てしまい慌てて目を覚ますと北澤さんの奥さんが書いたアンケートが読まれていた。自分には全く関係のない他人事だと思って重ちゃんはヒッヒッと笑っている。

司会の大物芸人さんが「おい横で俺独身やから関係ないと思って笑ってる奴おるけど、俺こんなの持ってるからな」と言って見覚えのある茶色の封筒を取り出した。

「えっ、何それ?誰の関係者?」「誰?誰?」と芸人さん達がうるさいくらいに叫んでいる。

司会の人がアンケートを読み始めた。
「丸山君と関係のある人に書いて貰いました」
しげちゃんの顔が引きつっている。
「えっ、誰だろう?」

「まずは丸山君の好きな所、凄く優しくて一緒にいて楽しい所です。後習字が上手な所も好きです」
重ちゃんは数秒目を瞑った後大声で叫んだ。「どうせ店の女だろって油断してたけれど、これ書いたの俺のリアル彼女だろ?!」

周りの芸人さんが「いやまだわかんないよ。店の女かもよ」と適当な相槌を入れた。

司会の人が話を続ける。
「まだ続きあるから、彼はとても優しくて広い心でなんでも受け止めてくれます。後習字を書いている姿はとてもかっこいいです」

周りの人が「ヒューヒュー」と適当な賑やかしを入れてる。
彼は頭を抱えて椅子に座っていると思ったら、「おいこれ間違いなく俺の彼女だろ!」と立ち上がった。北澤さんが「こいつロケ先の小学校の先生ナンパしたんやぞ?頭おかしいだろ!」と余計な情報を付け足し会場に笑いが起こった。「ロケ先の一般人に声かけるって頭おかしすぎ」と他の芸人さんに言われている。

頭痛がした、このテレビ村の関係者が見てたらどうするんだろう。

司会者の人が私が書いたアンケートを読み上げる。「あと最近ムカついた所、風俗店通いを写真誌にもられた時に家まで謝りに来てくれたまではいいのですが、彼はドヤ顔で「俺店でキスはしてないから」と語っていて殺意が湧きました」

周りの芸人さん達が手を叩いて笑っていた。彼が言い訳をし出した。
「だから俺潔癖症だから店の人とキスするの嫌なんだよ。彼女とは興奮するから愛してるのは君だけだということを伝えるつもりで言ったら、凄い怒られた」


すごくウケているけれど、何度も繰り返し言うが村とか学校の関係者見てたらどうすんの。

司会の人が「丸山君の意外な一面、いつでもどこでもやたらと手を繋ぎたがる」と読み上げると周りの人達は手を叩いて喜んでいた。
重ちゃんが叫んだ。

「ヤメロ!俺のキャラ考えてアンケート書け!」

だから考えて書いたんだって。

北澤さんが「亜紀ちゃん見てる?」と言うと「名前言うな!」と彼が突っ込んだ。

司会の人が「まだあるから、嫌いな所は今のところ特にありませんだって。
周りの芸人さんが「ヒューヒュー」とまた冷やかしている。彼は照れたような困ったような顔をしていた。本当に恥ずかしいこれ。

司会の人が「じゃあ丸山くん、彼女に治してほしい所ないの?」と聞くと彼が「そうですね……服が地味なんですよね」

周りの人達が「どういう風に?」と相槌をいれた。

「色がないんですよね、グレーとか白とか黒とかしか着てないから、もっと派手な服が着てほしいですね」

司会者の人が「はい、という訳で彼女にあの丸山くんが好きな服着てもらいました」
彼が立ち上がった。「駄目だろ!何で彼女にあんな服着せるんだよ!無理!絶対に無理!」
北澤さんが「お前が選んだんだろ!」と突っ込んだ。

私はあんな服着た覚え一切ない、嫌な予感がする。

司会の人が「丸山くんの大切な人に今日着てもらってます、はいどうぞ」というとスタジオの赤いカーテンが開いてそこには彼が選んだ服を着た彼のお気に入りソープ嬢、雪乃さんが立っていた。
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