第134話 夜の街で

文字数 1,248文字

いつの間にか寝ていて、次に目が覚めたのは午後十時半だった。
身体中が冷える、もう冬が近い。

お風呂を沸かし風呂の中でも考えた。自分の体をどこからどう見ても、あの女の人に勝ってるところなんて一つもない。

「あっ、一つあった年齢だ」つまらない冗談を自分で言って自分で笑った。

彼がごく一般平均人の私と付き合ってる必要性って何だろう?たまにしか会えない分燃えるとか?田舎娘が好きとか?

「あーもう娘って年齢じゃないなハハハ」
またつまらない冗談を自分で言って笑った。

どうして彼は私のことを好きなのだろうか、全く持って意味不明だ。

やっぱり違う目的があるんじゃないのか。でも特にお金持ちなわけでもない、いい家柄なわけでもない、特技があるわけでもない、その違う目的も私にはない。

彼はこんな取り柄もない私のことをちゃんと愛してくれていた。そんなこと自分がよくわかっている

どうして彼は如何わしいお店に行ってたんだろう。

元々好きで行ってたのは知っている、でも付き合ってるからには行くのやめてくれてると勝手に思っていた。

本当に殆どの男の人が行っているものなのだろうか。
女の人はそれを黙認してるの?

彼と付き合っていくには黙認しなくちゃいけないの?

でも私は付き合ってるのに他の女の人に何かしに行くなんて絶対に許せない。

男と女は違うことは良くわかっている。けれど恋愛感情がないから、お金払ってプロの人と関係を持ってもいいという理屈がどうしても納得できないのだ。


ということは私がプロの人にお金払って関係持っても彼は気にならないのだろうか。

この間腰を痛めた時に街の有名な整体師さんの所に行こうとしたら、整体師が男だったら行って欲しくないとブツブツ言っていた。だからサロンシップ貼って我慢したのに。

自分勝手すぎるよ。

どうしたらいいんだろう。

こういう時にみっちゃんか男友達がいたら男の人の気持ち聞けたのに。たかちゃん以外の男友達作っておけばよかった。

その時だった、玄関のチャイムが鳴った。

こんな時間に来るのなんて智しかいない、また美子ちゃんと喧嘩でもしたのだろう。

「はい、はい智?ちょっと待っててお風呂から上がるから」

そう玄関に向かって呼びかけ急いで服を着た。

「ねぇ何があったか知らないけれど、美子ちゃんが悪いわけないでしょ?智が100パー悪いんだって、いつもみたいにすぐに帰って土下座してよ」

そう言いながら玄関のドアを開けるとそこには智じゃなくてしげちゃんが立っていた。

彼の頭には大きな雪の塊が少し積もっていた。駅からこの寒い中歩いて来たんだ。
おまけに都会仕様の薄いコート着てる。

外は雪が降っている、冷たい風と共にボタン雪が家の中にも舞い込んできた。

初雪、今年は早いなとぼんやり思った。

「ごめん、亜紀ちゃん。ちゃんと顔見て謝ろうと思って」

本当は怒りたかった、怒鳴りたかった、でも本人の顔をみるとそれはできなかった。
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