第210話 再会は突然に

文字数 1,330文字

翌日もまだ冬休みで子供達は学校に来ていない。グダグタと来週のことをまだ悩んでいた。どれだけ悩んでも神様は過去の経験なんか与えてはくれない事はわかっているけれども相変わらず悩んでいた。

健がホラ吹かなければこんなに悩むこともなかったのに。急に健に対して殺意が湧いて来た。というか何でみんな健のホラ話信じたの?

授業で使う予定の備品の支払額を計算をしている時にふと美香先生が視界に入った。

美香先生はパソコンをタイピングしながら髪をかき上げた、美香先生の甘くていい匂いが5メートル離れた私の所まで届いてドキッとした。

適材適所、この人なら色々詳しいと思う。

美香先生が一人でお昼ご飯を休憩室で食べていたので、一つ開けて隣の席に座った。
「美香先生、ちょっと聞いてもいい?」「何?」「あの下世話なこと聞いてもいい?」
美香先生は何故だか身を乗り出した。

「何?何?どんな話?」
「あの友達の話しなんだけど、35歳ぐらいでそういう性的なことが未経験の女ってどう思う?」

「恋愛しない主義とか結婚するまでしない主義の人最近多いらしくて、そういう人は何とも思わないけれど、恋愛したい人でそうなんて可哀想。その歳で普通に恋愛してきてないなんて可哀想」

可哀想という言葉が金属化し鋭利な刃物となって後頭部から突き刺して来た。

「じゃあ男の人はどう思うと思う?」
「えーそういう主義の人なら何とも思わないと思うけれど」
私は恋愛したいってもう知られてるんだよね。おまけに趣味の風俗通い辞めさせてるんだから、結婚するまでしないとは今更言えないよな、

「そういう主義じゃなかったら?」
「十代二十代なら嬉しいんじゃない?三十五じゃちょっと地雷、怖いというか何かあるんじゃないかって疑いたくなるかも」

今度は「地雷」「怖い」が頭を突き刺して来た。やっぱりこれは彼には悟られてはいけないのだ。

「じゃあどうしたら未経験ってバレずにできると思う?」
「えっそんなの簡単。違う誰かと肌を重ねてみればいいと思う」

出た、肌を重ねる。何か口にするだけでもセクシー。そしてこの人割ととんでもないこと言ってるかも。

「簡単に言うけど、どこで知り合うの?」
「今の時代はアプリが流行ってるって、私たちの時は出会いなんて合コンしかなかったけど」

「アプリ?」

そう言うと美香先生は自分のスマホで出会いアプリと検索した。

「ほら試しに見てみようか」

美香先生が検索条件で群馬県、30〜45歳 と入力した。すると男性の写真付きプロフィールがずらっと現れ目玉が飛び出るかと思った。

「何これ?」
「この中から条件があった好みの人選ぶのが最近の出会い方なんだって」
「凄いね」
「羨ましい、私も独身だったらこんなショッピングみたいな恋愛してみたかった」
「いや別に恋愛がしたいわけじゃ」
「大丈夫!ここに登録してる人達もそんな真剣に付き合い求めてる人たちってわけじゃないと思う。大人の恋愛してもいいんじゃない?」

「大人の恋愛?」
「そう、大人の恋愛。寂しい時に割り切った付き合い」

この大人の恋愛という言葉に衝撃を受けた。私に足りなかったのはこういう要素ではないのだろうか。
「それにアキ先生好みの人居るかもよ」
「……いや、私じゃない、友達の話だから」

そう言ってご飯を一口食べた。
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