第177話 クリスマスイブ

文字数 1,133文字

夜テレビ局の人と電話すると、年末の特番で使いたいので彼に関するアンケートを書いて欲しいとのことだった。

どれだけ考えても自分にとって利点は一つもない、乗り気ではなかったけれど「もし断られたら、丸山さんのアンケート行きつけの店の女の人に頼むしかなくて」の一言で「書きます」と答えた。

テレビ局の人に上手いことやられた感はあるけれど、これ以上店の人に関わられたくない。


テレビ局の人と入れ替わりで彼から電話がかかってきた。
「今の電話また保護者?」と聞かれたので「そうなんだよね」と嘘をついた。こういうのって本人に言っちゃいけないんだよね?それとなく話しを変えた。

「そういえば23日に高校の時の友達が里帰り出産で帰ってきてるから久しぶりに友達で集まって赤ちゃんに会いに行くんだ」

「亜紀は友達沢山いるよな」
「そんなことないよ、小中高大と同じ職場だった人達と数人ずつまだ付き合いを細々と続けている感じ。おまけにみんな子供いるから滅多に遊べないからね」
「後は婚活で知り合ったゲイの友人がいるから十分だろ?俺未だに連絡取り合って会おうと思える奴なんて川井さん一派と後は木村くんだけ」

「団蔵さんは?」「団蔵は川井派に入ってんだよ」
「派閥って中学生女子みたい」
「まぁな、この世界は大変なんだよ」

彼はビール腹団蔵さんと今からご飯を食べに行くらしい。ビール腹団蔵さんとは彼を慕っている後輩芸人さんの一人で、ぬぼっとした雰囲気のビール腹のピン芸人さんだ。彼のことをひたすら褒めてくれるイエスマンだけれども、どうしてもの時は「ちょっとまずいですよ」と教えてくれる有難い人らしい。

「そう言えば団蔵さんのユウチュウブ見たよ」
「本当?どうだった?」
「何かシュールだった」「俺も一回みたけどつまんなかったな」「何で3分間も無言の時間あるんだろ?」「若いうちはそういうことやりがちなんだよ」
そう言って二人で笑った。

「団蔵、単独ライブ見に来てるから探して見て」「うん、生団蔵さん見れるの楽しみにしてる」

電話を切るとパソコンを確認した。テレビ局の人がもうアンケートを送って来ていた。何故だか手書きに拘っていて、これを印刷して送り返して欲しいらしい。

ダウンロードすると質問項目がいくつかあって
「旦那さんの好きな所」「旦那さんの嫌いな所」全て旦那さんがと書いてある。

こういうの書くの奥さんの仕事だよね。

自分のイメージアップの為に私のこと利用するだけ利用して責任は取らないって、やりがいがあるからお金を払わなくていいでしょ?というやりがい詐欺みたいだ。

あーもう何もかも考えない!

臭い物に蓋をして面倒な事を先送りした。










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