第147話 夜の街で

文字数 1,026文字

「あー本当にな、亜紀ちゃんは駄目な男に騙されていいように使われそう」

「失礼なこと言わないでよ……それ友達全員にも同じこと言われるから!」

「あーやっぱりみんなそう思うよな」
彼は呆れたように笑った。

親しくなる人全員にこれを言われる。自分の情深い性格が原因なんだろうが、私は浮気する男、働けるのに働かない男、ギャンブルに嵌る男は嫌いだし付き合っていけないと思っていた。

でも現実は付き合っている人に風俗店に行かれ、それを許そうとしている自分がいる。人はなかなか理想通りには生きていけない。


「確かにね、彼氏に浮気されたし」
「浮気じゃない、風俗は浮気じゃない」
暗闇の中キッと睨むと彼は気配を感じたようで全面降伏した。
「ごめんなさい、もう二度と行きません」


「お世話になった大学の時のゼミの先生にも言われたことあるから。
先生のお兄さんだか弟さんだかがどうしようもない人みたいで、「そいつみたいにまともに働かなくて女癖の悪い男とだけは絶対に付き合っちゃいけないよ」って。
先生にまで言われるって、よっぽどそう見えてるんだって流石にショックだった」

「大学教授にも言われるってよっぽどそうなんだぞ、自覚しろ」

「……そうなのかな」
流石にショックで黙り込んだ。恋人から見ても私はよっぽどいいように使われ騙されやすい女に見えるらしい。

「落ち込むな、俺がどうしようもない人間にならなければいいだけの話だろ?ちゃんと働いてるし二度と風俗店行かない」
「……嫌がってた人間ドックにちゃんと行って」 
「わかったよ」

彼はそう言うと欠伸をし「眠い」と呟いた。

「明日も始発で東京帰らなきゃいけないんでしょ?もう寝よう」
「なぁ亜紀、この間みたいに一緒に寝ようか」

「いやだ、今日はしないから!あのヌード写真の女が目を閉じるとチラついてムカつく!ああいう私と正反対のゴージャスな感じの人が好きなんだってまたムカついてきた」

「袋とじまで破ったんかい……不快な思いをさせてすみませんでした。本当に何もしないから一緒に寝よう」

「本当に何もしない?」
「しない、性欲に負けてフラフラ風俗に行ってた自分への罰だと思って朝まで苦しんで悶々としてる。それに俺かなり疲れてるからすぐ寝そう」

「じゃあ一緒に寝ようかな」
そう言ってベッドから降りて彼の布団に潜り込みこの間みたいに彼の胸に顔をつけた。彼は私の首の下に腕を入れて抱きしめた。
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