第109話 勿忘草
文字数 1,607文字
あまりに眠くて夜の9時に寝ると、深夜1時に目が覚めてしまった。どうやっても眠れないのでテレビをつけると怪し気なお色気番組が放送されていて、しげちゃんが出ていることに気がつく。
彼は熱心に夜のお店のお姉さんとどんなことをしたか語っていた。
司会の大物芸人さんが「そんな事ばっかり言ってるけれど、彼女作ったんだよね?」と尋ねると
「彼女は作ったけれど、それとこれとは別だから。俺の生きがいだから」と何故だか爽やかな笑顔で答えていた。
この間、電話でテレビに出るときに下ネタや拗らせキャラを求められ過ぎてつらいと溢していた、彼も大変なんだろう、流石に今は行ってないだろうし。
「丸山君はじゃあ結婚しても通うの?」
「結婚なんてしないから大丈夫です、何の為にするのか意味わかんないから」
彼はまた爽やかにそう答えた。
私はすぐにテレビを消して布団に入った。
今まで何回もこの発言は聞いたことがある。前まで気にもならなかった彼の結婚しない発言が何故だか急に胸に引っ掛かるようになってしまった。
翌日の金曜日の夜、私達は相変わらず電話していた。
「今日ユウチュウブの登録者数が五十万人突破したらしい、マネージャーが喜んでた」
彼が自慢気にそう報告してきたので、私もちょっと大げさに喜んだ。
「すごいね!大人気チャンネルじゃん!私も今度観るね」
「いや、観なくていいや。テレビじゃ放映できない企画やってるから」
「また夜の店の女の人の思い出話してるの?」
「……うわっ、あー何であの深夜番組みてるの?仕事だから」
電話越しでも彼が慌てているのがわかる。
「大丈夫だって今は行ってないってわかってるから。ユウチュウブは企画も自分達で考えてるの?」
「あー事務所の社員がユウチュウブではこういうトークが受けるとか、こういう企画受けるとか考えてくれてるから上から降りて来た通りに俺らがやる」
「サラリーマンみたい」そう笑うと
「俺らおっさんだからユウチュウブ内の流行は良くわかんねぇんだよ」と彼も笑った。
「今までの仕事に加えて動画も作ってるから、もう毎日忙しくて死にそうだ、亜紀ちゃんに会いたいのに仕事が俺らのことを邪魔する。もう二週間弱も会ってない」
父さんの件で東京に行って以来会えていない。本当は私も会ってないから会いたいと言いたかったけれど、敢えて物分かりのいい女を演じてみた。
「毎晩電話くれるし、私はそれでいいよ。ほら仕事がいっぱいあって有難いじゃん」
「有難いよ、有難いけどこんなに仕事仕事で俺何の為に働いてるんだよって虚しくなるんだよ」
「まぁ、仕方ないよ」
彼の仕事の愚痴を慰めながら聞いていた。確かに私だって忙しい時は同じこと思うとがある。
「じゃあせめて何か買わせて、亜紀ちゃんが欲しいもの買う為に働いてるんだと思ったら元気出てくるから」
「えー前も言ったけどもう30過ぎてから欲しいもの無いんだよね」
「じゃあ服買ってあげようか」
「今の村に勤めてるうちは休日もお洒落できないんだよね、村で働くってそういうことだから」
「じゃあ他に欲しい物本当にないの?「これくれたの?ありがとう」って喜ぶ顔が見たいんだけど」
「えー思いつかないな」
口ではそう言いながらも欲しい物が実は一つだけある、子供だ。
智と健を育てたとは言え自分の子供が欲しかった。
子供好きなのも勿論ある。
でもそれ以上に理由は上手く言えないが本能がそう求めているのだ。
自分のお腹の中で命を宿し産んで育てたい。
正直に言うと自分の年齢を考えると焦りがかなりある。「絶対に結婚しない」って言い切っている人と付き合っている暇はない。それはよくわかっているんだけどな。
「結婚してなんて言わない、認知するだけでいいから、後は勝手に育てるから」
なんて彼に言えるわけがない。
彼は熱心に夜のお店のお姉さんとどんなことをしたか語っていた。
司会の大物芸人さんが「そんな事ばっかり言ってるけれど、彼女作ったんだよね?」と尋ねると
「彼女は作ったけれど、それとこれとは別だから。俺の生きがいだから」と何故だか爽やかな笑顔で答えていた。
この間、電話でテレビに出るときに下ネタや拗らせキャラを求められ過ぎてつらいと溢していた、彼も大変なんだろう、流石に今は行ってないだろうし。
「丸山君はじゃあ結婚しても通うの?」
「結婚なんてしないから大丈夫です、何の為にするのか意味わかんないから」
彼はまた爽やかにそう答えた。
私はすぐにテレビを消して布団に入った。
今まで何回もこの発言は聞いたことがある。前まで気にもならなかった彼の結婚しない発言が何故だか急に胸に引っ掛かるようになってしまった。
翌日の金曜日の夜、私達は相変わらず電話していた。
「今日ユウチュウブの登録者数が五十万人突破したらしい、マネージャーが喜んでた」
彼が自慢気にそう報告してきたので、私もちょっと大げさに喜んだ。
「すごいね!大人気チャンネルじゃん!私も今度観るね」
「いや、観なくていいや。テレビじゃ放映できない企画やってるから」
「また夜の店の女の人の思い出話してるの?」
「……うわっ、あー何であの深夜番組みてるの?仕事だから」
電話越しでも彼が慌てているのがわかる。
「大丈夫だって今は行ってないってわかってるから。ユウチュウブは企画も自分達で考えてるの?」
「あー事務所の社員がユウチュウブではこういうトークが受けるとか、こういう企画受けるとか考えてくれてるから上から降りて来た通りに俺らがやる」
「サラリーマンみたい」そう笑うと
「俺らおっさんだからユウチュウブ内の流行は良くわかんねぇんだよ」と彼も笑った。
「今までの仕事に加えて動画も作ってるから、もう毎日忙しくて死にそうだ、亜紀ちゃんに会いたいのに仕事が俺らのことを邪魔する。もう二週間弱も会ってない」
父さんの件で東京に行って以来会えていない。本当は私も会ってないから会いたいと言いたかったけれど、敢えて物分かりのいい女を演じてみた。
「毎晩電話くれるし、私はそれでいいよ。ほら仕事がいっぱいあって有難いじゃん」
「有難いよ、有難いけどこんなに仕事仕事で俺何の為に働いてるんだよって虚しくなるんだよ」
「まぁ、仕方ないよ」
彼の仕事の愚痴を慰めながら聞いていた。確かに私だって忙しい時は同じこと思うとがある。
「じゃあせめて何か買わせて、亜紀ちゃんが欲しいもの買う為に働いてるんだと思ったら元気出てくるから」
「えー前も言ったけどもう30過ぎてから欲しいもの無いんだよね」
「じゃあ服買ってあげようか」
「今の村に勤めてるうちは休日もお洒落できないんだよね、村で働くってそういうことだから」
「じゃあ他に欲しい物本当にないの?「これくれたの?ありがとう」って喜ぶ顔が見たいんだけど」
「えー思いつかないな」
口ではそう言いながらも欲しい物が実は一つだけある、子供だ。
智と健を育てたとは言え自分の子供が欲しかった。
子供好きなのも勿論ある。
でもそれ以上に理由は上手く言えないが本能がそう求めているのだ。
自分のお腹の中で命を宿し産んで育てたい。
正直に言うと自分の年齢を考えると焦りがかなりある。「絶対に結婚しない」って言い切っている人と付き合っている暇はない。それはよくわかっているんだけどな。
「結婚してなんて言わない、認知するだけでいいから、後は勝手に育てるから」
なんて彼に言えるわけがない。