第32話 習字が得意な人

文字数 719文字

明日土曜日は運動会だ、学校は午前中の二十分休みも子供達はどこか浮き足だっていた。

翌日の日曜日は丸山さんが家に来るって言ってる日だ。

本当に来るんだろうか。教室の窓越しに見える青空を見ながら丸山さんのことを考えていると

ヒロ君が自由帳を持って来て、「亜紀先生、俺ネタ書いたんだ」と見せて来た。

見てもどこが笑う所かわからなかったけれど、「わぁ凄い面白い、ひろくんは天才だね」と言って教師としての役目を務めた。

子供のやる気をそがない、大切な仕事だ。

「俺も丸ちゃんみたいにお告げ来ないかな」と言ったので「お告げって?」と聞くと

「丸ちゃんのWWikipediaに書いてあったんだけど、丸ちゃん中学生の頃に夢で神様に漫才師になれって言われて漫才師になったんだって」と得意気に言った。

「えっ、ネタ見せ番組見てじゃなくて?」

「WWikipediaみて見てよ、そう書いてあるよ」

そう言ったのでヒロ君と近くにいた何人かと教室備え付けのパソコンで丸山さんのページを調べた。本当にお告げの話がのっていた。

ついでに言うと私に話してくれた子供の頃の話が一切載っていなかった。

急に「亜紀先生にだけ、特別だよ」という丸山さんの真剣な眼差しを思い出し、鼓動が速くなった。

私かなりおかしくなってる。しっかりしろ、コラ。


学校の運動会は村の大切な行事の一つでもある。 

準備の手伝いに集まってきた村人たちも明日に備えて全員が帰宅した。私も早く帰ろうと足早に歩いていると、職員玄関で待ち構えていた森野先生に捕まってしまった。

「亜紀先生、今日という今日は逃がしませんから」

満面の笑みでそう言われた私は背筋がゾッとした。
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