第121話 勿忘草
文字数 1,538文字
変な間が空き、気持ち悪くて口がちょっと話題とずれたことを勝手に喋り出した。
「私女子校出身だから、恋に恋焦がれてて、高校卒業したら東京に出てレイくんに何となくでいいから似てる同じ年ぐらいの人かIT企業の社長と劇的な恋愛して25歳で結婚してって思ってたんだよね」
「そっくりさんかIT社長限定?」と聞いてきたので「昔はっていう話」と答えた。
彼が急に真剣な表情になった。
「あきちゃんいいか?」
思わず彼を見つめ返した。
「俺は42歳のおじさんで、レイ君にも似てないしIT企業の社長でもないし、安定した職にもついてないし、喧嘩もめちゃくちゃ弱いけど、同世代に比べて金は持ってるぞ」
思わず笑ってしまった。
「何その自慢、お金持ちってそんなに魅力的な要素じゃないから」
彼は誰もいないと思って「そう言われる気はしてたけど一応叫んでおく、何だとー?」と叫んだ。駅の構内に彼の声が反響する。
「もうお金に関することで色々考えるのうんざり、自分一人だったらいくら貧乏暮らししても気楽でいいけど、小さい子達抱えてお金ないのって追い詰められるんだよ。あの精神状態には二度と戻りたくない」
「じゃあ金持ちがいいんじゃないの?」
「お金ってあったらあったで怖いんだよ、爺ちゃん死んだ時の遺産相続であんなに醜い顔した大人達みたくなかった。仲が良かったはずの親戚の何年にも渡る遺産相続裁判って悲惨以外の何者でもないから。お金って本当に人を狂わすんだよ」
「説得力あるな、じゃあ俺のアピールポイントは何?俺がテレビ出てるのもそんなに興味なさそうだし」
「興味あるよ、しげちゃん出てたらちゃんと真剣に見るようにしてる」
「そういうことじゃなくて、テレビに出てる人と付き合ってるんだ。いいでしょ?みたいな雰囲気がない」
「そんなに自己顕示欲が激しい女と付き合ってたの?小学生が俺の父ちゃん警察って自慢して偉そうにしてるんじゃないんだからさ」
「父ちゃんは息子に自慢されたら嬉しいだろ?女はそれで自己顕示欲が満たされて、俺も性欲と自尊心が満たされてウィンウィンの関係」
「ちゃんとギブアンドテイクが成立してるんだ」
「じゃあ俺は何を亜紀ちゃんにギブしてるの?」
「ギブ?」
「そう、要するに亜紀ちゃんは一体俺の何が好きで付き合ってるの?優しいっていう便利な言葉はなしで答えて」
「……優しいが使えなかったら何て言えばいいの?しげちゃんの何が好きなんだろう」
「よく考えろ、潔癖症なのに何で俺にキスされても抱きしめて寝られても許せるの?」
彼は何故だかどこか得意気だった。元々自信家なところがある人なんだけれども、自分は好かれていると言う絶対的な自信があるらしい。
構内に新幹線が通過するアナウンスが流れた、
「……思いついた、体温かな。あったかい所が好き」
私がそう答えると、彼は面食らったような顔をした。
「そこら辺歩いてる人もみんな体温あってあったかいけど」
「だから他人の座ってたソファのぬくもりって気持ち悪いし、それとは違うんだって」
「どう違うの?」「しげちゃんの体温はあったかくて気持ちいい」
そう言うと彼に私を抱きしめられた、外でこんなことしないで欲しいと思ったけれど、この駅の構内には相変わらず誰もいなかった。
ふと自分が言ったことを思い出すと恥ずかしくなってきた、失敗したな。
彼の肩越しに「何でこんな恥ずかしいこと言っちゃったんだろ」と言うと「常日頃から思ってるからだろ?」と返された。
「じゃあしげちゃんは私の何が好きなの?優しい抜きで答えて」
「あーやっぱりそう来ると思った」
そう言うと彼は私を抱きしめるのをやめた。
「私女子校出身だから、恋に恋焦がれてて、高校卒業したら東京に出てレイくんに何となくでいいから似てる同じ年ぐらいの人かIT企業の社長と劇的な恋愛して25歳で結婚してって思ってたんだよね」
「そっくりさんかIT社長限定?」と聞いてきたので「昔はっていう話」と答えた。
彼が急に真剣な表情になった。
「あきちゃんいいか?」
思わず彼を見つめ返した。
「俺は42歳のおじさんで、レイ君にも似てないしIT企業の社長でもないし、安定した職にもついてないし、喧嘩もめちゃくちゃ弱いけど、同世代に比べて金は持ってるぞ」
思わず笑ってしまった。
「何その自慢、お金持ちってそんなに魅力的な要素じゃないから」
彼は誰もいないと思って「そう言われる気はしてたけど一応叫んでおく、何だとー?」と叫んだ。駅の構内に彼の声が反響する。
「もうお金に関することで色々考えるのうんざり、自分一人だったらいくら貧乏暮らししても気楽でいいけど、小さい子達抱えてお金ないのって追い詰められるんだよ。あの精神状態には二度と戻りたくない」
「じゃあ金持ちがいいんじゃないの?」
「お金ってあったらあったで怖いんだよ、爺ちゃん死んだ時の遺産相続であんなに醜い顔した大人達みたくなかった。仲が良かったはずの親戚の何年にも渡る遺産相続裁判って悲惨以外の何者でもないから。お金って本当に人を狂わすんだよ」
「説得力あるな、じゃあ俺のアピールポイントは何?俺がテレビ出てるのもそんなに興味なさそうだし」
「興味あるよ、しげちゃん出てたらちゃんと真剣に見るようにしてる」
「そういうことじゃなくて、テレビに出てる人と付き合ってるんだ。いいでしょ?みたいな雰囲気がない」
「そんなに自己顕示欲が激しい女と付き合ってたの?小学生が俺の父ちゃん警察って自慢して偉そうにしてるんじゃないんだからさ」
「父ちゃんは息子に自慢されたら嬉しいだろ?女はそれで自己顕示欲が満たされて、俺も性欲と自尊心が満たされてウィンウィンの関係」
「ちゃんとギブアンドテイクが成立してるんだ」
「じゃあ俺は何を亜紀ちゃんにギブしてるの?」
「ギブ?」
「そう、要するに亜紀ちゃんは一体俺の何が好きで付き合ってるの?優しいっていう便利な言葉はなしで答えて」
「……優しいが使えなかったら何て言えばいいの?しげちゃんの何が好きなんだろう」
「よく考えろ、潔癖症なのに何で俺にキスされても抱きしめて寝られても許せるの?」
彼は何故だかどこか得意気だった。元々自信家なところがある人なんだけれども、自分は好かれていると言う絶対的な自信があるらしい。
構内に新幹線が通過するアナウンスが流れた、
「……思いついた、体温かな。あったかい所が好き」
私がそう答えると、彼は面食らったような顔をした。
「そこら辺歩いてる人もみんな体温あってあったかいけど」
「だから他人の座ってたソファのぬくもりって気持ち悪いし、それとは違うんだって」
「どう違うの?」「しげちゃんの体温はあったかくて気持ちいい」
そう言うと彼に私を抱きしめられた、外でこんなことしないで欲しいと思ったけれど、この駅の構内には相変わらず誰もいなかった。
ふと自分が言ったことを思い出すと恥ずかしくなってきた、失敗したな。
彼の肩越しに「何でこんな恥ずかしいこと言っちゃったんだろ」と言うと「常日頃から思ってるからだろ?」と返された。
「じゃあしげちゃんは私の何が好きなの?優しい抜きで答えて」
「あーやっぱりそう来ると思った」
そう言うと彼は私を抱きしめるのをやめた。