第326話 別れの季節
文字数 905文字
そうこうしているうちに「ただいま」と玄関で声が聞こえた。
玄関に小走りに向かい「早かったね」と声をかけると「頑張って早く帰って来た」と彼はコートをかけてソファに座ったので私も隣に座った。
重ちゃんは青い箱なんてなかったかのようにテレビを見出した。
だから私も青い箱がなかったかのようにテレビを見るしかなかった。
途中、いつものように肩に手を回してきたり、体をベタベタと触って来てたりしたけれども、あの青い箱には一切触れない。
机の上に物があるのが嫌だから、絶対気付いていると思うんだけど、どうしてここまで知らないふりをするのだろうか。
ニュースがCMに入った時に彼は何気なくご飯のことを話題にした。
「何か食べにいこうか?、何食べたい?」
「うーん何がいいかな……脂っこい物が食べたい」
「何だよそれ、もっと具体的に言って」
そう言って重ちゃんは笑って立ち上がるとどこからか茶色いA4程の大きさの封筒を持ってきて私に差し出した。
「開けてみて」
言われるがままに封筒の中身を取り出した。どこかのマンションの間取りと内装が載っている紙が数枚入っている。
「……4ldk、すっごい広いね。引っ越すの?」
「今考えてる、どうしようかなって。手狭になるだろ?」
「手狭って今でさえ一部屋余らしてるでしょ?何でまた?あっわかった、番組の企画?何か今家探しみたいなやつ多いもんね」
「企画じゃないよ。企画にしてもいいけど」
何故だか重ちゃんは少し困った顔をした。
「私も今年引っ越さなきゃいけないかもしれないんだよね」
「そうだな、いつにする?」
「いつにするってそんな好きに時期選べないから、来週内示が出ればすぐに家探さなきゃ行けないし、この時期引っ越し業者は高いしさ」
「リアル引っ越し?」
「バーチャル引っ越しでいいならどんなに楽か」
「今の学校から移動になるってこと?」
「うん、五年目だしその可能性が高いってこと」
「そんな事言ってたな、どこになるの?」
「うーんまだわからないけど、高崎かもしれないし前橋かもしれないし、そこら辺だったらいいなって。東京近いからね」
私がそう言うと彼が不服そうにソファに背をつけた。
「あぁそう、なぁ机の上に箱ない?何で開けないの?」
玄関に小走りに向かい「早かったね」と声をかけると「頑張って早く帰って来た」と彼はコートをかけてソファに座ったので私も隣に座った。
重ちゃんは青い箱なんてなかったかのようにテレビを見出した。
だから私も青い箱がなかったかのようにテレビを見るしかなかった。
途中、いつものように肩に手を回してきたり、体をベタベタと触って来てたりしたけれども、あの青い箱には一切触れない。
机の上に物があるのが嫌だから、絶対気付いていると思うんだけど、どうしてここまで知らないふりをするのだろうか。
ニュースがCMに入った時に彼は何気なくご飯のことを話題にした。
「何か食べにいこうか?、何食べたい?」
「うーん何がいいかな……脂っこい物が食べたい」
「何だよそれ、もっと具体的に言って」
そう言って重ちゃんは笑って立ち上がるとどこからか茶色いA4程の大きさの封筒を持ってきて私に差し出した。
「開けてみて」
言われるがままに封筒の中身を取り出した。どこかのマンションの間取りと内装が載っている紙が数枚入っている。
「……4ldk、すっごい広いね。引っ越すの?」
「今考えてる、どうしようかなって。手狭になるだろ?」
「手狭って今でさえ一部屋余らしてるでしょ?何でまた?あっわかった、番組の企画?何か今家探しみたいなやつ多いもんね」
「企画じゃないよ。企画にしてもいいけど」
何故だか重ちゃんは少し困った顔をした。
「私も今年引っ越さなきゃいけないかもしれないんだよね」
「そうだな、いつにする?」
「いつにするってそんな好きに時期選べないから、来週内示が出ればすぐに家探さなきゃ行けないし、この時期引っ越し業者は高いしさ」
「リアル引っ越し?」
「バーチャル引っ越しでいいならどんなに楽か」
「今の学校から移動になるってこと?」
「うん、五年目だしその可能性が高いってこと」
「そんな事言ってたな、どこになるの?」
「うーんまだわからないけど、高崎かもしれないし前橋かもしれないし、そこら辺だったらいいなって。東京近いからね」
私がそう言うと彼が不服そうにソファに背をつけた。
「あぁそう、なぁ机の上に箱ない?何で開けないの?」