第13話 帽子岳の山頂で

文字数 807文字

お風呂あがりに何となくテレビをつけると丸山さんが出ていた。

テレビの中の丸山さんは「俺はね、風俗嬢って世界で一番尊い職業だと思うの、俺みたいな奴の寂しさも優しく包み込んでくれるから」と夜のお店について力説していた。

テレビで見ると色々拗らせてる変な人かと思ったら、実際会ってみると優しくて背も高くて顔もかっこよくて面白くて凄く素敵な人だった。

丸山さん本当に素敵な一日を有難うございます。心の中でお礼を言った。

その時メールの着信音がしてスマホを見ると丸山さんからメールが届いていた

「写真ありがとうございました。今日はお疲れ様です。本当に楽しかったです。子供達にもよろしくお伝え下さい」

「うわぁ、めっちゃいい人!こんな下々の人間にまで優しく丁寧に接してくれて、来年の週刊誌の抱かれたい男アンケートで絶対に丸山さんに投票します!」

一人で早口で叫んでしまった。ここでメールを終わらすのは失礼な気がするので

「はい、ありがとうございます。子供達にも伝えておきます。それではお休みなさい」と返信した。

麦茶を自分のコップに注ぐとまた着信音がした。「お休みなさい」とまた返信があった。

「うわぁ、めっちゃいい人!テレビで拗らせキャラになってるけど、こりゃあモテるわ!丸山さんありがとう!」

何故だか天に向かって叫んだ。

この今表示されてるアドレスって丸山さん本人のかと思ったが、まぁこう言う時に使う用の捨てアドだろう。

「ハァ、丸山さんいい気持ちにさせてくれてありがとう。途中ちょっとふざけてたけど。

やっぱり誰に対しても丁寧な姿勢って好感触、いい男の条件!智と健にも言い聞かせてやんなきゃね!」

何故だか二人の弟のことを思い出し、後で丸山さんのことをメールしようと思った。

そして麦茶を喉に流し込んだ。

私には手が届かない、素敵な丸山さんとの接触はこれで終わった。

はずだった。
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