第255話 深夜の訪問者
文字数 1,605文字
リビングに戻ってくるとソファに腰を下ろし背伸びをした。
「今日は一日でいろんな情報が多すぎて疲れちゃった」
彼はいつも私の横に隙間なく座るのに何故か反対側のソファに座りこう言った。
「塚田っていう人のこと何で俺に話さなかったの?」
やけに機嫌が悪いと思ったらやっぱりそう来た、どうしてこんなに嫉妬深いのか。
「話してあるじゃん、入学式のオリエンテーションで一目惚れして四年間好きだったの、それ以上でもそれ以下でもない」
彼はわざとらしく大きな溜息をついた。
「今そいつは何してるの?」
「群馬で小学校の先生やってるって風の便りで聞いたことあるけれど」
彼は相槌も打たずに機嫌が悪そうに黙り込んだ。
「ちょっと皿洗う」そう言って立ち上がろうとすると「何で智と健ほっておいて夜中にそいつと大学に行ったんだよ」と吐き捨てられた。
「昔過ぎて思い出せないんだけれど、水曜日はバイト掛け持ちしてて帰りが遅くなるんだよ、それでおばちゃんがあの二人寝かせてくれてたの、ほっておいた訳ではない」
息を一つ吐いた。まだ彼が求める答えには辿り着いていない、自分でもわかっている。
「水曜日は家庭教師のバイトとバイトの間に30分時間が空いて、家庭教師先の家の近くのスーパーで時間潰してたんだよね。そこがたまたま塚田君の家と近かったからたまに会って、それである日会った時に今日学校行かない?って誘われたから行った。そしたらちょうど廊下で義政先生と会った」
「毎週水曜日はその男とそうやって会ってたんだ」
言い方に棘がある。
「そうやって会ってたのは一ヶ月ぐらいだよ、私が風邪ひいて寝込んだ時に家来てくれて、事情は知ってた筈なのに、それから毎日来てたメールが来なくなったんだよね。
その一ヶ月後高校の同級生から「亜紀ちゃんと同じコースの塚田君と付き合うことになりました」って牽制メールが来て、その一時間後に塚田君本人から「彼女が出来たから今までみたいに二人で会えない」ったメールが来た。あの時はショックだったな」
そう正直に言ったけれど、彼はまだ納得がいっていない顔をしていた。これ以上何を話したら納得してくれるのだろう。
「何でそれなのに塚田って男はちょこまか亜紀に構ってきた訳?」
「知らないよ、何でかは私が聞きたいよ」
「あれだよな、塚田って男は自分で背負いこむ覚悟も無かった癖に亜紀のこと手放す気もなかったんだな」
「知らないよ、もういいでしょ?私が唯一体験した懐かしい青春の一ページ」
塚田君のことを悪く言われ少し苛ついていた。そんな私の様子を感じ取り彼は攻め続ける。
「また会えるって今まで思ってたの?」
「……まぁどこかで会えたらいいなとは思ってたけれど、塚田君は流石に結婚してるでしょ?モテてたし子供好きだし、いいパパになってそう」
「何で本当に会えたらいいなって期待してんの?そこで付き合わないって亜紀のことそこまで好きじゃなかった男だぞ?」
彼はだいぶ苛ついてるけれど私も苛ついている。
「わかってるって」
「向こうも亜紀が好きなことに気づいてたよな?それで中途半端に構い続けるって卑怯な男だな」
「卑怯じゃない!仕方ないじゃん!」
卑怯な男と言う言葉を聞いて頭に血が上った。
別に今塚田君を好きな訳じゃない。顔も思いだうとしてもよく思い出せないし。けれど自分の心の中を荒らされたような気がして無性に腹が立った。
「何でムキになって怒る必要があるんだよ!今でもそいつと再会できること望んでるんだろ?」
決して私はそんなこと望んでいない。何でそこまで言われなくちゃいけないのだ。
ふと私の頭の中にお母さんの「美咲ちゃんに凄く似てる」という言葉が思い出された。
精神年齢が54歳の私は、絶対に売り言葉に買い言葉で聞いたらいけないことだと頭では理解していた。
けれど何故だか自分でも止められない。彼をキッと睨んだ。
「何でそんな昔の事ばっかり拘るの?自分が拘ってるから私も拘ってると思うんでしょ?」
「今日は一日でいろんな情報が多すぎて疲れちゃった」
彼はいつも私の横に隙間なく座るのに何故か反対側のソファに座りこう言った。
「塚田っていう人のこと何で俺に話さなかったの?」
やけに機嫌が悪いと思ったらやっぱりそう来た、どうしてこんなに嫉妬深いのか。
「話してあるじゃん、入学式のオリエンテーションで一目惚れして四年間好きだったの、それ以上でもそれ以下でもない」
彼はわざとらしく大きな溜息をついた。
「今そいつは何してるの?」
「群馬で小学校の先生やってるって風の便りで聞いたことあるけれど」
彼は相槌も打たずに機嫌が悪そうに黙り込んだ。
「ちょっと皿洗う」そう言って立ち上がろうとすると「何で智と健ほっておいて夜中にそいつと大学に行ったんだよ」と吐き捨てられた。
「昔過ぎて思い出せないんだけれど、水曜日はバイト掛け持ちしてて帰りが遅くなるんだよ、それでおばちゃんがあの二人寝かせてくれてたの、ほっておいた訳ではない」
息を一つ吐いた。まだ彼が求める答えには辿り着いていない、自分でもわかっている。
「水曜日は家庭教師のバイトとバイトの間に30分時間が空いて、家庭教師先の家の近くのスーパーで時間潰してたんだよね。そこがたまたま塚田君の家と近かったからたまに会って、それである日会った時に今日学校行かない?って誘われたから行った。そしたらちょうど廊下で義政先生と会った」
「毎週水曜日はその男とそうやって会ってたんだ」
言い方に棘がある。
「そうやって会ってたのは一ヶ月ぐらいだよ、私が風邪ひいて寝込んだ時に家来てくれて、事情は知ってた筈なのに、それから毎日来てたメールが来なくなったんだよね。
その一ヶ月後高校の同級生から「亜紀ちゃんと同じコースの塚田君と付き合うことになりました」って牽制メールが来て、その一時間後に塚田君本人から「彼女が出来たから今までみたいに二人で会えない」ったメールが来た。あの時はショックだったな」
そう正直に言ったけれど、彼はまだ納得がいっていない顔をしていた。これ以上何を話したら納得してくれるのだろう。
「何でそれなのに塚田って男はちょこまか亜紀に構ってきた訳?」
「知らないよ、何でかは私が聞きたいよ」
「あれだよな、塚田って男は自分で背負いこむ覚悟も無かった癖に亜紀のこと手放す気もなかったんだな」
「知らないよ、もういいでしょ?私が唯一体験した懐かしい青春の一ページ」
塚田君のことを悪く言われ少し苛ついていた。そんな私の様子を感じ取り彼は攻め続ける。
「また会えるって今まで思ってたの?」
「……まぁどこかで会えたらいいなとは思ってたけれど、塚田君は流石に結婚してるでしょ?モテてたし子供好きだし、いいパパになってそう」
「何で本当に会えたらいいなって期待してんの?そこで付き合わないって亜紀のことそこまで好きじゃなかった男だぞ?」
彼はだいぶ苛ついてるけれど私も苛ついている。
「わかってるって」
「向こうも亜紀が好きなことに気づいてたよな?それで中途半端に構い続けるって卑怯な男だな」
「卑怯じゃない!仕方ないじゃん!」
卑怯な男と言う言葉を聞いて頭に血が上った。
別に今塚田君を好きな訳じゃない。顔も思いだうとしてもよく思い出せないし。けれど自分の心の中を荒らされたような気がして無性に腹が立った。
「何でムキになって怒る必要があるんだよ!今でもそいつと再会できること望んでるんだろ?」
決して私はそんなこと望んでいない。何でそこまで言われなくちゃいけないのだ。
ふと私の頭の中にお母さんの「美咲ちゃんに凄く似てる」という言葉が思い出された。
精神年齢が54歳の私は、絶対に売り言葉に買い言葉で聞いたらいけないことだと頭では理解していた。
けれど何故だか自分でも止められない。彼をキッと睨んだ。
「何でそんな昔の事ばっかり拘るの?自分が拘ってるから私も拘ってると思うんでしょ?」