第179話 クリスマスイブ
文字数 1,420文字
明日24日はお昼の新幹線に乗って高崎で智と美子ちゃんと待ち合わせで東京に行くことになっていた。
早目に寝ようと思うけれど、なかなか寝付けない。テレビをつけると深夜のバラエティにしげちゃんが出ていた。
しばらく見ていると「何で彼女作ったの?」と聞かれて「愛してるから」と平然と答えていた。
「本当に何言ってんだか」と嬉しい思い98%で呟くと今度は「じゃあ結婚しなよ」と言われ「結婚しない、俺は子供嫌いだし、何のために結婚するのか意味わかんねぇし!結婚は人生の墓場」と叫んでいた。
今日このタイミングでこの言い草は凄く傷ついた。
テレビを消すと自然とスマホを開き群馬県の結婚相談所を検索していた。
入会金がいくらで、どれぐらいのお金がかかって会員数がどれだけいて、成婚率がどうでとかなり詳細にチェックしている。
普通なら今付き合っている彼氏に結婚したいな聞いてみる所なんだろう。でも有難いことに聞く前に向こうから無理だと言ってくれているのだ。
「あぁここいいかも、資料請求しよう」
四箇所ほど資料請求し終わった時だった。電話が鳴ったので画面を見ると彼からだった。
半ばヤケクソでとった。
「もしもし」
かなりキツい調子で態度が悪くなっていたと思う。
「亜紀ちゃんごめん寝てた?」
「ううん、寝てないよ!」
「絶対寝てただろ?」
「だから寝てないよ!」
彼が急に優しい声になった。
「こんな時間に電話してごめん、明日本番だからどうしても声が聞きたくて」
暗闇の中時計を見ると十一時半だった。明日の舞台の準備を今までしていたのだろう。
急に優しいトーンでこられると申し訳ない気持ちになってきた。私が単純なのも多分にあるけれど、彼は何というか人の気持ちを操るのが上手い。若い頃心理学の本を全部読んだと話を盛っているだけはある。
こうなったら全部寝ていたせいにしよう。
「本当にごめん、今眠りの世界から正気に戻った。折角電話してくれたのに、本当にごめんなさい」
「ほら、やっぱ寝てたんでしょ。こんな時間にごめん」
彼は優しく笑った。
「明日の準備は終わったの?」
「終わってるようで終わってない、俺神経質だから、前日はあんまり寝れないから」
「私も研究授業の前日寝れないから、その気持ちわかる。完璧に準備してあるはずなのに何かが足りない気がして不安に襲われるんだ」
彼が急にいつもの調子を取り戻した。
「同じだな、俺達は運命の赤い糸で繋がれてるんだぞ」
「よく恥ずかし気もなくそんなこと口にできるね」「事実だから」
いつもの通りやりとりだけれども、いつも通り笑ってしまった。
急に声が真剣なトーンになった。
「なぁ亜紀、舞台の上って特別な場所なんだ。明日俺が今までやって来たこと全部ぶつけるから、お客さんはまぁそうだけど世界で一番に亜紀に見てほしい」
「うん」と一言だけ返事した。それ以上に相応しい言葉が見つからなかったからだ。
彼はすぐにふざけた。
「俺のことちょっと面白いおじさんとしか思ってないだろうけど、惚れ直させてやる」
「うんじゃあ期待してる」
私も軽いトーンで答えた。
電話を切ると「結婚が」「子供が」と悩んでいたことがバカらしくなった。とにかく今は彼のそばにいたい。
友達やゼミの先生までもが変な男と付き合っちゃいけないと言っていたのは、こういうことなんだろう。
私は男で身を滅ぼすタイプだ。
早目に寝ようと思うけれど、なかなか寝付けない。テレビをつけると深夜のバラエティにしげちゃんが出ていた。
しばらく見ていると「何で彼女作ったの?」と聞かれて「愛してるから」と平然と答えていた。
「本当に何言ってんだか」と嬉しい思い98%で呟くと今度は「じゃあ結婚しなよ」と言われ「結婚しない、俺は子供嫌いだし、何のために結婚するのか意味わかんねぇし!結婚は人生の墓場」と叫んでいた。
今日このタイミングでこの言い草は凄く傷ついた。
テレビを消すと自然とスマホを開き群馬県の結婚相談所を検索していた。
入会金がいくらで、どれぐらいのお金がかかって会員数がどれだけいて、成婚率がどうでとかなり詳細にチェックしている。
普通なら今付き合っている彼氏に結婚したいな聞いてみる所なんだろう。でも有難いことに聞く前に向こうから無理だと言ってくれているのだ。
「あぁここいいかも、資料請求しよう」
四箇所ほど資料請求し終わった時だった。電話が鳴ったので画面を見ると彼からだった。
半ばヤケクソでとった。
「もしもし」
かなりキツい調子で態度が悪くなっていたと思う。
「亜紀ちゃんごめん寝てた?」
「ううん、寝てないよ!」
「絶対寝てただろ?」
「だから寝てないよ!」
彼が急に優しい声になった。
「こんな時間に電話してごめん、明日本番だからどうしても声が聞きたくて」
暗闇の中時計を見ると十一時半だった。明日の舞台の準備を今までしていたのだろう。
急に優しいトーンでこられると申し訳ない気持ちになってきた。私が単純なのも多分にあるけれど、彼は何というか人の気持ちを操るのが上手い。若い頃心理学の本を全部読んだと話を盛っているだけはある。
こうなったら全部寝ていたせいにしよう。
「本当にごめん、今眠りの世界から正気に戻った。折角電話してくれたのに、本当にごめんなさい」
「ほら、やっぱ寝てたんでしょ。こんな時間にごめん」
彼は優しく笑った。
「明日の準備は終わったの?」
「終わってるようで終わってない、俺神経質だから、前日はあんまり寝れないから」
「私も研究授業の前日寝れないから、その気持ちわかる。完璧に準備してあるはずなのに何かが足りない気がして不安に襲われるんだ」
彼が急にいつもの調子を取り戻した。
「同じだな、俺達は運命の赤い糸で繋がれてるんだぞ」
「よく恥ずかし気もなくそんなこと口にできるね」「事実だから」
いつもの通りやりとりだけれども、いつも通り笑ってしまった。
急に声が真剣なトーンになった。
「なぁ亜紀、舞台の上って特別な場所なんだ。明日俺が今までやって来たこと全部ぶつけるから、お客さんはまぁそうだけど世界で一番に亜紀に見てほしい」
「うん」と一言だけ返事した。それ以上に相応しい言葉が見つからなかったからだ。
彼はすぐにふざけた。
「俺のことちょっと面白いおじさんとしか思ってないだろうけど、惚れ直させてやる」
「うんじゃあ期待してる」
私も軽いトーンで答えた。
電話を切ると「結婚が」「子供が」と悩んでいたことがバカらしくなった。とにかく今は彼のそばにいたい。
友達やゼミの先生までもが変な男と付き合っちゃいけないと言っていたのは、こういうことなんだろう。
私は男で身を滅ぼすタイプだ。