第49話 ちゃんとした場所
文字数 1,510文字
金曜日の午後6時、辺りが段々と薄暗くなってきたので職員室のカーテンを閉めた。ふと気がつけば教頭先生と私以外いないといういつもの風景。
十月に入り朝晩はかなり冷え込むようになってきた。
職員室奥の休憩室でマグカップにインスタントコーヒーを入れお湯をそそいだ。休憩室の椅子に腰かけると熱湯に近いコーヒーを冷ましながら、口に少し含んだ。
休憩室に誰か向かってくる足音が聞こえた、教頭先生だろうと高を括っていると、その人が入ってきて驚いた。
森野美香先生だったからだ。
「あれ、美香先生お子さんは?」そう尋ねると「今日旦那が面倒見ててくれるから、今のうちに仕事進めようと思って」と答えてくれた。
美香先生は自分のマグカップに同じ様にインスタントコーヒーを入れるとお湯を注いだ。
そして私に「丸山さんとはうまく行ってるの?」とストレートパンチをかましてきた。
私が何と答えていいかわからず、アワアワしていると、美香先生は髪が邪魔だったらしくパーマのかかった髪をかき分けた。部屋中に甘い果実のようないい匂いが充満した。
何かこの人凄くセクシー。私の百倍ぐらい色気がある。とても同年齢だとは思えない。
美香先生の色気に負けた私の口が勝手にしゃべりだした。
「うまくいくも何もね、何かどうしたらいいんだろうって」
「何を困ってるの?教えて、あんなに素敵な人いないじゃないの?」
美香先生が食い気味に私の隣に座り肘をついて私を見た。
相談に乗ってくれる姿を見ても色っぽい。この人が恋愛の神様の様な気がしてきてしまっている。
すると私の口が意思を持って勝手に喋りだした。
「実は明日も家に来るって言うんだけど、私どうしたらいいんだって思って、このまま丸山さんとは付き合っていいのか、今なら後戻りできるんじゃないかって混乱してて」
「どうして後戻りしようとするの?」
「……怖いんだよね、このまま都会の人の気まぐれに乗っかるのが、いつか急に飽きたって言われてひどい目見そうなのが怖い」
美香先生は微笑みを浮かべて言った。
「好きだったなら、気まぐれに乗っかれば?好きじゃなかったら、もう会わない。恋愛ってそういうもんでしょ?どの人と恋愛しても保証なんてないから」
私の体に電流が走った、神からの啓示をうけた気分になったのだ。
「そうだよね、何でそんな単純な事がわからなかったんだろう。誰と付き合っても保証なんてどこにもないもんね」
「じゃあ明日は楽しんでね」
美香先生はそう言うと休憩室を出ていこうとしたので呼び止めた。
「美香先生、あと一個だけ聞いてもいい?どうやって本人に付き合うって言えばいいと思う?」
彼女は後妻業をしている女の人みたいに色っぽく微笑んだ。
「高校生みたいにそんなこといちいち言わなくていいの。肌を重ねればいいわ」
私は飲んでいたコーヒーを喉につまらせた。
肌を重ねるって言い方もセクシー、真似しよう。そしてそれは私にはハードルが高すぎる。
「楽しそうで羨ましい。向こうもそのつもりでくるでしょ?」
「向こうもそのつもり?……で来ないでしょ?!ちょっとエロいことしょっちゅう言ってるぐらいだから、そのつもりで来ない…よね?」
「もういい大人なんだから、ね?」
彼女は心底羨ましそうに私を見て、コーヒー片手に職員室に帰っていった。
「大丈夫、大丈夫。夜のお店行ってるみたいなこと言ってたから、そのつもりで来ないでしょ」
私は無茶苦茶な理論で丸山さんを一方的に信用することで何とか自分を保つことにした。
熱々のコーヒーを一口、口に含んで飲み込んだ。
十月に入り朝晩はかなり冷え込むようになってきた。
職員室奥の休憩室でマグカップにインスタントコーヒーを入れお湯をそそいだ。休憩室の椅子に腰かけると熱湯に近いコーヒーを冷ましながら、口に少し含んだ。
休憩室に誰か向かってくる足音が聞こえた、教頭先生だろうと高を括っていると、その人が入ってきて驚いた。
森野美香先生だったからだ。
「あれ、美香先生お子さんは?」そう尋ねると「今日旦那が面倒見ててくれるから、今のうちに仕事進めようと思って」と答えてくれた。
美香先生は自分のマグカップに同じ様にインスタントコーヒーを入れるとお湯を注いだ。
そして私に「丸山さんとはうまく行ってるの?」とストレートパンチをかましてきた。
私が何と答えていいかわからず、アワアワしていると、美香先生は髪が邪魔だったらしくパーマのかかった髪をかき分けた。部屋中に甘い果実のようないい匂いが充満した。
何かこの人凄くセクシー。私の百倍ぐらい色気がある。とても同年齢だとは思えない。
美香先生の色気に負けた私の口が勝手にしゃべりだした。
「うまくいくも何もね、何かどうしたらいいんだろうって」
「何を困ってるの?教えて、あんなに素敵な人いないじゃないの?」
美香先生が食い気味に私の隣に座り肘をついて私を見た。
相談に乗ってくれる姿を見ても色っぽい。この人が恋愛の神様の様な気がしてきてしまっている。
すると私の口が意思を持って勝手に喋りだした。
「実は明日も家に来るって言うんだけど、私どうしたらいいんだって思って、このまま丸山さんとは付き合っていいのか、今なら後戻りできるんじゃないかって混乱してて」
「どうして後戻りしようとするの?」
「……怖いんだよね、このまま都会の人の気まぐれに乗っかるのが、いつか急に飽きたって言われてひどい目見そうなのが怖い」
美香先生は微笑みを浮かべて言った。
「好きだったなら、気まぐれに乗っかれば?好きじゃなかったら、もう会わない。恋愛ってそういうもんでしょ?どの人と恋愛しても保証なんてないから」
私の体に電流が走った、神からの啓示をうけた気分になったのだ。
「そうだよね、何でそんな単純な事がわからなかったんだろう。誰と付き合っても保証なんてどこにもないもんね」
「じゃあ明日は楽しんでね」
美香先生はそう言うと休憩室を出ていこうとしたので呼び止めた。
「美香先生、あと一個だけ聞いてもいい?どうやって本人に付き合うって言えばいいと思う?」
彼女は後妻業をしている女の人みたいに色っぽく微笑んだ。
「高校生みたいにそんなこといちいち言わなくていいの。肌を重ねればいいわ」
私は飲んでいたコーヒーを喉につまらせた。
肌を重ねるって言い方もセクシー、真似しよう。そしてそれは私にはハードルが高すぎる。
「楽しそうで羨ましい。向こうもそのつもりでくるでしょ?」
「向こうもそのつもり?……で来ないでしょ?!ちょっとエロいことしょっちゅう言ってるぐらいだから、そのつもりで来ない…よね?」
「もういい大人なんだから、ね?」
彼女は心底羨ましそうに私を見て、コーヒー片手に職員室に帰っていった。
「大丈夫、大丈夫。夜のお店行ってるみたいなこと言ってたから、そのつもりで来ないでしょ」
私は無茶苦茶な理論で丸山さんを一方的に信用することで何とか自分を保つことにした。
熱々のコーヒーを一口、口に含んで飲み込んだ。