第27話 コスモ山浦
文字数 1,511文字
丸山さんが困ったように「俺の話?」と聞き返した。
「そう、例えばどうして芸人さんになろうと思ったんですか?」
「WWikipedia見て貰えば早いよ」と丸山さんが逃げようとするので、「折角本人が目の前にいるんだから、本人の口から聞かせて下さい」
そう言うと、困った顔をしていたけれども覚悟を決めたようにいつもの顔に戻った。
「わかったよ、女の人に自分の話するの苦手なんだけど。亜紀先生がそう言うなら、
WWikipediaに載ってないことも交えて話してやる。特別だよ」と私の目をみつめて言った。
一瞬鼓動が速くなった。
勘違いするな、正気に戻れ、自分もう三十五歳だぞと執拗に心の中で唱えた。
丸山さんの顔をじっと見つめた。飛び抜けてイケメンっていう訳ではないけれど、綺麗に整った顔立ちだなと思った。
確か今42歳だって言ってたけれど、これは若い頃モテただろうな。
今も相当だと思う。
「両親が凄く厳しかったんだよ。小さい頃から勉強ばっかりさせられてて、小学校では習い事と塾漬け。
まともに友達と遊んだ記憶が無いくらい。それで中学校のとき親父が出張か何かでいなくて、母親も何か兄貴関連の用事があっていなくて初めて自由になったの。
恐る恐る普段は禁止されてるテレビつけてみたんだよ、そしたら丁度「ネタ見せ番組がやってて、漫才を見た時衝撃だったね。こんなに計算し尽くされてて人を笑わせることってあるんだって。
それ以来漫才師になろうって決めたんだよ。勉強もしなくなったし、親のいうこと聞かなくなったし、先生達にも結構迷惑かけちゃって、普通の人間らしくなったんだけど。
親は後悔しただろうな、あの日家を空けなければって」
「…でも今こんなに成功してるから、喜んでるんじゃないですか?」
そう言うと、丸山さんは恥ずかしそうに目を瞑った。
「母親は喜んでるよ、あんなに俺を抑圧したことはすっかり無かったことにしてさ
父親は俺がちょくちょくテレビに出られるようになった頃、突然亡くなっちゃったんだよ。
だから俺の事をどう思ってたかなんて聞けずじまいだったな」
丸山さんが複雑そうな表情で私の後ろの窓を見た。
「…無責任な事いいますけど、きっと喜んでますよ」
私がそう言うと、丸山さんが「だといいな」と少し笑った。
「あのさ話は変わるけどさ、ホワイトアンドブラック好きなの?登山の時もちょっと言ってたけれど」
彼が壁に貼ってあるポスターとCDとDVDで埋め尽くされた本棚をなぞる様に指さした。
「好きですよ。本棚の中身を見て貰えばわかると思いますが、24年間好きなんです。
初詣に行くと願う事が無さすぎて、世界平和と今年もホワイトアンドブラックが解散しませんようにってお願いするくらい好きです」
そう言うと丸山さんは「もっと自分の願い事しようよ」と言って笑った。
「丸山さんはホワイトアンドブラックの皆さんとお会いすることはありますか?」
丸山さんは首を横に振った。
「ないな。ミュージシャンとはあまり会ったことない。あの人達札幌出身でしょ?
俺の相方が北海道出身だから、親戚がホワイトアンドブラックの誰かと同じ学校通ってたって自慢してるの聞いたことがあるけど」
「えー凄い!!」心からそう思って拍手すると「でも俺じゃないし、しかも遠すぎるだろ」と彼は笑った。
ふと時計を見ると二時半になってしまっていた
「丸山さんそろそろ時間、行かなくちゃいけないですね、帰りは歩いて行きませんか?そんなに時間変わらないし」
そう言うと丸山さんは「いいよ」と言ってくれた。
「そう、例えばどうして芸人さんになろうと思ったんですか?」
「WWikipedia見て貰えば早いよ」と丸山さんが逃げようとするので、「折角本人が目の前にいるんだから、本人の口から聞かせて下さい」
そう言うと、困った顔をしていたけれども覚悟を決めたようにいつもの顔に戻った。
「わかったよ、女の人に自分の話するの苦手なんだけど。亜紀先生がそう言うなら、
WWikipediaに載ってないことも交えて話してやる。特別だよ」と私の目をみつめて言った。
一瞬鼓動が速くなった。
勘違いするな、正気に戻れ、自分もう三十五歳だぞと執拗に心の中で唱えた。
丸山さんの顔をじっと見つめた。飛び抜けてイケメンっていう訳ではないけれど、綺麗に整った顔立ちだなと思った。
確か今42歳だって言ってたけれど、これは若い頃モテただろうな。
今も相当だと思う。
「両親が凄く厳しかったんだよ。小さい頃から勉強ばっかりさせられてて、小学校では習い事と塾漬け。
まともに友達と遊んだ記憶が無いくらい。それで中学校のとき親父が出張か何かでいなくて、母親も何か兄貴関連の用事があっていなくて初めて自由になったの。
恐る恐る普段は禁止されてるテレビつけてみたんだよ、そしたら丁度「ネタ見せ番組がやってて、漫才を見た時衝撃だったね。こんなに計算し尽くされてて人を笑わせることってあるんだって。
それ以来漫才師になろうって決めたんだよ。勉強もしなくなったし、親のいうこと聞かなくなったし、先生達にも結構迷惑かけちゃって、普通の人間らしくなったんだけど。
親は後悔しただろうな、あの日家を空けなければって」
「…でも今こんなに成功してるから、喜んでるんじゃないですか?」
そう言うと、丸山さんは恥ずかしそうに目を瞑った。
「母親は喜んでるよ、あんなに俺を抑圧したことはすっかり無かったことにしてさ
父親は俺がちょくちょくテレビに出られるようになった頃、突然亡くなっちゃったんだよ。
だから俺の事をどう思ってたかなんて聞けずじまいだったな」
丸山さんが複雑そうな表情で私の後ろの窓を見た。
「…無責任な事いいますけど、きっと喜んでますよ」
私がそう言うと、丸山さんが「だといいな」と少し笑った。
「あのさ話は変わるけどさ、ホワイトアンドブラック好きなの?登山の時もちょっと言ってたけれど」
彼が壁に貼ってあるポスターとCDとDVDで埋め尽くされた本棚をなぞる様に指さした。
「好きですよ。本棚の中身を見て貰えばわかると思いますが、24年間好きなんです。
初詣に行くと願う事が無さすぎて、世界平和と今年もホワイトアンドブラックが解散しませんようにってお願いするくらい好きです」
そう言うと丸山さんは「もっと自分の願い事しようよ」と言って笑った。
「丸山さんはホワイトアンドブラックの皆さんとお会いすることはありますか?」
丸山さんは首を横に振った。
「ないな。ミュージシャンとはあまり会ったことない。あの人達札幌出身でしょ?
俺の相方が北海道出身だから、親戚がホワイトアンドブラックの誰かと同じ学校通ってたって自慢してるの聞いたことがあるけど」
「えー凄い!!」心からそう思って拍手すると「でも俺じゃないし、しかも遠すぎるだろ」と彼は笑った。
ふと時計を見ると二時半になってしまっていた
「丸山さんそろそろ時間、行かなくちゃいけないですね、帰りは歩いて行きませんか?そんなに時間変わらないし」
そう言うと丸山さんは「いいよ」と言ってくれた。