第11話 帽子岳の山頂で

文字数 1,670文字

ヒロくんが「先生と結婚するんだったら丸ちゃんにいい事教えてあげる」と叫んだ。

私はすかさず「しないって」と言った。

丸山さんが「何?」と聞くと「先生ってお料理上手に作れるんだよ、調理実習うまいよ」と言った。

「あー本当、俺作るの嫌いだからありがたいな」と丸山さんが調子良く相槌を打った。

「丸山さんは本当調子いいですね、でもヒロさん全国放送で先生のこと褒めてくれて有り難う、もっと何かないの?もっと言って」と私も調子良く言った。

「思い出した!あのね、とろけるチーズご飯好きで毎日食べてるんだよ」

ヒロくんは^_^とんでもない秘密を喋り出した。

「ギャー」と思わず叫ぶと山彦が少し返ってきたような気がした。

何故だか丸山さんがそれにくいついてきた。

「何その情報詳しく教えて」

私は叫んだ。「教えなくていいから、これ全国放送だから!」

けれどヒロ君は止まらない。「あのね、ご飯の上にとろけるチーズかけて胡椒かけてレンジでチンするんだって」とヒロくんは大声で叫んだ。

「うわっ、もう最悪!折角ヒロくん最初は褒めてくれたのに。全国放送なのに。あーもう、しかも胡椒じゃなくて黒胡椒だから!あーもう最悪!でもこんな場面カットされるから大丈夫」

そう自分に言い聞かせると、丸山さんが「いや、意外と放送されるんじゃない。先生凄く取り乱してて面白いし」とひっひっひっと笑った。

「あーそうだ落ち着け、落ち着かないと放送されちゃう。ただの雑談だから、落ち着け。雑談、雑談」

大きく息を吸うと隣にいる丸山さんに話しかけた。

「昔30ぐらいまでは友達が沢山集まって弟達と家でみんなご飯食べるの好きだったんです。

料理上手ってみんなお世辞でも褒めてくれるから気分いいでしょ?

でも弟達も独立して、友達も自分の家庭持って、参加者が一人減り二人減り、二年前に最後の独身の友達が結婚してからは、滅多に料理しなくなりました。

土日にたまにするくらい。あっでもゲイの友達来た時は二人でキャピキャピしながら作ります。

ていうか自分一人の為に毎日ちゃんと作る訳ないでしょ!」

そうやけに早口で叫ぶと、丸山さんは爆笑しながら

「まぁわかるよ、自分のために料理しないよね」と言った。


優くんが更に得意気に丸山さんに話しかける「昨日の夜何食べた?って聞くととろけるチーズご飯か、レンジでチンチーズフォンデュか、チーズパン食べてることが多いよ」

「何で先生の食生活を日本各地の人にバラされなきゃいけないの!しかも全部チープな奴」と叫んだ。

丸山さんはひっひっひとまた爆笑した「先生チーズ好きなの?」と聞いてきた。

もう開き直った。「好きですよ、ジェリーよりチーズ好きです」「あんな穴あいてる塊みたいなチーズ好きなの?」

「私はとろけるチーズ専門ですから、メーカーにも拘りますから!」そうヤケになって叫ぶとヒロくんが「俺はさけるチーズ派」と言ったので子供達が口々に好きなチーズを口にし始めた。

ようやく自分の話が終わったとほっとして、子供達の話しを笑って聞いていた。

するとヒロくんが「丸ちゃんに先生の秘密教えてあげる。実は長野県民なんだよ」と言った。

丸山さんが暫く考えて「ここって群馬だったよね?」と言った。

別にこの秘密だったら全国放送されてたっていい。私は意気揚々と話し始めた。

「丸山さん、ここは群馬ですけど、長野に一番近い群馬なんです。佐久平っていう新幹線の駅わかりますか?」

「わかる、一回そこでロケしたことがある」

「私あそこの新幹線駅から徒歩五分の所のアパートに住んでるんです。そこから車で二十五分山を登れば学校にも着くっていう」

「あれでしょ?埼玉から東京に通勤してくる人みたいな感じでしょ?」

私と丸山さんの会話を聞いてヒロくんが「東京って聞こえるだけでかっこいい、東京って都会の魔物だな」と言った。

丸山さんが「都会の魔物って言ってみたかっただけだろ」とヒロ君に突っ込み、みんなで笑った
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