第206話 再会は突然に
文字数 1,528文字
東京駅の北陸新幹線のホームの端にある待合室に二人きりで座っていた。最終の新幹線が到着するのを待っているのだ。
無言でオギの月を食べている、彼が「悪かったってもう言わないから」と甘えた声を出したので彼と目を合わせずに呟いた。
「東京駅で早く乳首見せろって何?って怒ってたのは全然ネタにされてもいい、許容範囲。でもあの夜のこと他人に話すのなしでしょ?」
「ごめん、もう言わないよ」
彼は私の肩に手を回した。
「でもさ、彼女と初めてやろうといい気分で服脱がしてたら、彼女の弟が入ってくるってこんな面白い話ないだろ?」
一番狂っているのはデリカシーのかけらもない智かもしれないし、ここまで怒っている私かもしれない。でもこの人の感覚も十分狂っている、笑いを取れれば何話しても平気なのだろうか。
隣の隣のホームに停車していた緑色の新幹線がゆっくりと発車したのを眺めて小さく息を吐いた。
「重ちゃんにとってはあの夜のことはどうってことないよくあることかもしれないけど、私はそうじゃないから」
「どうってことないってことはなくて、やっと亜紀抱けるって凄い嬉しい瞬間だったんだよ。俺達にとって大切な日になるはずだったんだけどな」
「じゃあ何で智にまで「兄ちゃんあそこまで手出してないなんて紳士だな」って感動されなくちゃいけないの?」
彼は爆笑した、ここで笑える神経が信じられない。
「だろ?俺って信じられないぐらい紳士だろ?亜紀のこと大切にしてるから」
彼が調子に乗り始めたことに苛ついて、思わず泣きそうになった。
「そういう性的なことは誰にも知られたくない」
私の機嫌を取るように抱きしめた。
「とにかくごめんな、もう言わない」
流石の彼も少し落ち込んでるように見えた。
自分の悪いところだと思うけれど、暫く怒っていると急にどうでもよくなる瞬間がくるのだ。自慢じゃないけれど私の怒りのエネルギータンクは人より小さい、だからすぐガス欠を起こしてしまう。
「もういい、これでこの話はおしまい。とにかく二度と言わないで」
そう言うとまた新幹線が轟音を響かせながら隣のホームに入ってきた。
彼は驚いた顔で私をじっと見た。
「今日一日ずっと怒ってるのかと思った。だからチョロいとか甘いって言われるんだぞ。もっと怒れ」
「もう疲れた、怒るってエネルギーがいるからまた明日ね」
「北澤もそうだけど、何でそんなに怒らないの?まぁ俺はそう言う所が好きな所の一つなんだけど」と肩に回している手で私の顔を自分の顔にくっつけた。
「亜紀は俺がしたらこれだけは絶対に許せないことってあるの?」
「素人との浮気」「即答だな」「それだけは無理。何度どうやって謝られようがもう無理」「俺が病気になっても売れなくなってもいいのに、どうして浮気だけがそんなに嫌なんだ?」
「なんでかと言われると、お父さん浮気し放題だったし。お父さんが朝帰りした時のお母さんの悲しい顔は子供心に強烈に残ってる。
お母さんはそれでもお父さんに固執してたけれど、この広い世界のどこかに浮気しないでお母さんのこと愛してくれる人がいただろうにって思うんだよね」
今日叔母さんが言っていた「正子さんも兄さんに出会わなかったら違う人生があった」という言葉を思い出した。幸せだったかなんて母さんにしなわからないけれど、少なくとも側から見てる私には幸せそうには見えなかった。
母さんごめん。彼の目を見てこう言った。
「だからしげちゃんが浮気したら綺麗さっぱり別れようと思ってる。どこかにいる浮気しないで私を愛してくれる人を探したいかな」
「この先こうやって何回も亜紀のこと怒らすかもしれないけれど、絶対に浮気しない、風俗も二度と行かないから一緒にいてくれ」
彼はそう言って髪を撫でてきたので少し笑って頷いた。
無言でオギの月を食べている、彼が「悪かったってもう言わないから」と甘えた声を出したので彼と目を合わせずに呟いた。
「東京駅で早く乳首見せろって何?って怒ってたのは全然ネタにされてもいい、許容範囲。でもあの夜のこと他人に話すのなしでしょ?」
「ごめん、もう言わないよ」
彼は私の肩に手を回した。
「でもさ、彼女と初めてやろうといい気分で服脱がしてたら、彼女の弟が入ってくるってこんな面白い話ないだろ?」
一番狂っているのはデリカシーのかけらもない智かもしれないし、ここまで怒っている私かもしれない。でもこの人の感覚も十分狂っている、笑いを取れれば何話しても平気なのだろうか。
隣の隣のホームに停車していた緑色の新幹線がゆっくりと発車したのを眺めて小さく息を吐いた。
「重ちゃんにとってはあの夜のことはどうってことないよくあることかもしれないけど、私はそうじゃないから」
「どうってことないってことはなくて、やっと亜紀抱けるって凄い嬉しい瞬間だったんだよ。俺達にとって大切な日になるはずだったんだけどな」
「じゃあ何で智にまで「兄ちゃんあそこまで手出してないなんて紳士だな」って感動されなくちゃいけないの?」
彼は爆笑した、ここで笑える神経が信じられない。
「だろ?俺って信じられないぐらい紳士だろ?亜紀のこと大切にしてるから」
彼が調子に乗り始めたことに苛ついて、思わず泣きそうになった。
「そういう性的なことは誰にも知られたくない」
私の機嫌を取るように抱きしめた。
「とにかくごめんな、もう言わない」
流石の彼も少し落ち込んでるように見えた。
自分の悪いところだと思うけれど、暫く怒っていると急にどうでもよくなる瞬間がくるのだ。自慢じゃないけれど私の怒りのエネルギータンクは人より小さい、だからすぐガス欠を起こしてしまう。
「もういい、これでこの話はおしまい。とにかく二度と言わないで」
そう言うとまた新幹線が轟音を響かせながら隣のホームに入ってきた。
彼は驚いた顔で私をじっと見た。
「今日一日ずっと怒ってるのかと思った。だからチョロいとか甘いって言われるんだぞ。もっと怒れ」
「もう疲れた、怒るってエネルギーがいるからまた明日ね」
「北澤もそうだけど、何でそんなに怒らないの?まぁ俺はそう言う所が好きな所の一つなんだけど」と肩に回している手で私の顔を自分の顔にくっつけた。
「亜紀は俺がしたらこれだけは絶対に許せないことってあるの?」
「素人との浮気」「即答だな」「それだけは無理。何度どうやって謝られようがもう無理」「俺が病気になっても売れなくなってもいいのに、どうして浮気だけがそんなに嫌なんだ?」
「なんでかと言われると、お父さん浮気し放題だったし。お父さんが朝帰りした時のお母さんの悲しい顔は子供心に強烈に残ってる。
お母さんはそれでもお父さんに固執してたけれど、この広い世界のどこかに浮気しないでお母さんのこと愛してくれる人がいただろうにって思うんだよね」
今日叔母さんが言っていた「正子さんも兄さんに出会わなかったら違う人生があった」という言葉を思い出した。幸せだったかなんて母さんにしなわからないけれど、少なくとも側から見てる私には幸せそうには見えなかった。
母さんごめん。彼の目を見てこう言った。
「だからしげちゃんが浮気したら綺麗さっぱり別れようと思ってる。どこかにいる浮気しないで私を愛してくれる人を探したいかな」
「この先こうやって何回も亜紀のこと怒らすかもしれないけれど、絶対に浮気しない、風俗も二度と行かないから一緒にいてくれ」
彼はそう言って髪を撫でてきたので少し笑って頷いた。