第195話 クリスマスイブ

文字数 1,131文字

高山のおばちゃんに連絡するとすぐに健のお母さんに連絡を取って貰うことができた。おばちゃんによると健のお母さんは東京で再婚して高校生の娘さんが二人いるらしい。

よくよく頭で整理すると私の従姉妹じゃん。健と血の濃さは変わらない親戚だ、急に親近感が湧き彼女達に会ってみたくなった、いつか会えるといいけれど。

小さなレストランを現在のご主人がやっていて火曜日が定休日らしく、一月三日の火曜の夜に会わないかと先方は言っているらしい。

「健に聞いてみるね」と言い電話を切る前におばちゃんにどうしても気になっていたことを聞いてみることにした。

「おばちゃん、健のお母さんって何で健を置いて離婚しなくちゃいけなかったの?」

「あれも可哀想な話で、由恵(よしえ)ちゃんお妾さんの子だったからいい縁談決まらなくて、本妻さんの亜紀ちゃんのおばあちゃんが先方と勝手に話つけてきたんだよ。実際結婚してみたら、由恵ちゃんの旦那さんに公認の愛人さんいてね、その人病気で子供できなかったみたい、だから健くん生まれたらすぐに由恵ちゃん追い出されちゃって、それで東京に行ったの」

衝撃的な話でついていけない、父親の本妻さんに縁談を勝手に不利な形で決められ、嫁ぎ先で自分が産んだ赤ちゃんを取り上げられ追い出されなければならない理不尽がまかり通っていた私の生まれ故郷のあの村にショックを受けた。


「でもね、悪いことはできんよ。由恵ちゃん出て行ってすぐに健くん育ててた爺ちゃん婆ちゃん急に二人とも病気になってね育てられんくなって」
「それで健は家来たの?」
「そう、すぐ由恵ちゃんに連絡すればいいのに健くんの爺ちゃん婆ちゃんが亜紀ちゃんのお父さんにかなりのお金渡して自分たちの近くで育てて欲しいって希望してたみたい」

お父さん、そのお金のことお母さんにちゃんと言ってあったのかな……。

ふと健が家に来た日のことを思い出した。お母さんが「二人も育てられないわよ」と戸惑っていたら「俺も早く帰ってきて手伝うから、頼むよ」とお父さんが珍しく優しい声を出していた。

実際育ててみたらお母さんはすぐに健に愛情が沸いたみたいで健も智も分け隔て無く育てていた。

お父さんに至ってはすぐにまた帰りが遅くなり無断外泊を繰り返していたけれど。というかお父さんってお母さん似の智よりも自分似の健の方を可愛がってたよな。

そりゃそんな村はお年寄りと中年男性しかいなくなって廃れていくよね。本当に女も働ける時代になってよかった。

健のお母さんの無念を感じながら切なくなった。昔はそうするしかないもんな。

そうだ、今東京にいるんだから健と友人達にお昼ご飯食べさせてから帰ろう。そう思い健へと電話した。
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