第15話 帽子岳の山頂で

文字数 1,490文字

その三日後、九月も終わりかけ段々と街道にコスモスの花が咲いてきた頃だった。

窓から入ってくる夜の涼しい風に髪が揺れている。

テレビをだらだら見ていると、丸山さんが出ていた。丸山さんの彼女を探そうという企画で彼が好きな女の人の条件を挙げていた。

「一つ目が頭が悪いこと、悪ければ悪い方がいい。

二つ目が身長が170センチ以上あること

三つ目が谷間が見えるようなセクシーな服着てること

四つ目が○○○が上手いこと

五つ目が自由奔放であること」



「私と全然違うじゃん。○○○って何入るの?」そう言って一人で笑った。

私は勉強するの好きだったし、163センチしかないし、セクシーな服は着たくないし、○○○に私の想像している物が入るんだったら、彼氏いた事ないから上手くできるわけがないし、私は和を尊ぶタイプだ。

「これワンチャンでも相手にされない」とわかっていた事を呟いてまた笑った。

丸山さんと付き合える女の人達が羨ましいなと素直に思った。きっと付き合ってても優しいだろうし、カッコいいし、一緒にいて楽しそう。

ふと登山でくだらない事を話しながら一緒に登ったことを思い出した。

山登る時でさえも楽しかったんだから、一緒にいたらもっと楽しいだろうな。

それに浮気とかしないで、意外と真面目に向き合ってくれそうだ。実際に喋ってみると何かそんな気がした。


番組では色んな女の人を紹介されて、結局最後に誰を選ぶかという場面で丸山さんが「全員と付き合いたいな」と言って、全員からビンタされて終わった。

馬鹿馬鹿しすぎて笑った。凄く笑ってしまった。

そのテレビ番組が終わったので、テレビを消して音楽を流しアリオメーカーをしていた。これはステージを自分で作っていくゲームで小学生がよく日記に書いてたのでやりたくなって買ったのだ。

ネットに投稿すると誰かが自分が作ったステージをやってくれて評価してくれるので、それもまた楽しい。



着信音がなり、スマホを見ると丸山さんからメールが届いていた。

「亜紀先生すみません、亜紀先生から貸して貰ったタオル借りたままでした。」

文面を見て

「聖人か!」

一人でツッコミをいれると「大丈夫ですよ、丸山さんの手を煩わせる訳にはいかないのでどこかに捨てて下さい」と返信した。

すると「いや、申し訳ないです。今週の日曜ちょうど仕事が金沢であって、佐久平を通るのでその時にお返しします。少し会えませんか?」と返ってきたので驚いた。

「丸山さんって聖人ですね、本当に感動です。私は何の予定もないので好きな時に持ってきていただければ、駅でもどこでも取りに伺います」と返信すると

「それでは佐久平駅に十二時頃に着くので、駅で会いませんか?それともしよければ一緒にご飯食べませんか?地元の美味しいレストラン教えて下さい」と返ってきた。

「本当ですか、嬉しいです。では何か考えておきますね。」と送りメールが途切れた。

ふと天井をみる、「丸山さんとご飯か、これってデートみたいじゃん!やった!」と両手を上げて叫んでみた。

そしてその五秒後すぐに我に返った。

「あーあ、せめて十年前だったら、もしかして丸山さんとデートって妄想で今週末まで楽しめたのにな」

とやけにでかい独り言を言ってベッドに寝転んだ。

「もう35だからそんな夢も見られないわー、あー丸山さんって本当にいい人なんだろうな」と呟いた。

何かレストランってあったっけ?せめて何か美味しい物食べて帰ってもらおう。

そう思い慌てて食べグロを検索し出した。
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