第25話 コスモ山浦
文字数 1,653文字
「…こんな事本当に知りたいんですか?」「うん、知りたい」と彼は真面目な顔で頷いた。
私の完敗だ。
「本当にその一緒に行った人と付き合ってるとかではなくて、真田おるっていうドラマやってたの覚えてますか?三年前に真田おるの上田城行きました」
彼はちょっと困惑して言った。「上田城って何するの?」
「私昔から歴史ドラマ好きなんですよ、一緒に行った人も真田おる好きだったから、本丸跡とかから、ここから真田昌幸が上田の街眺めてたんだって、凄く感慨深かったです」
「…それってその後、夜景見に行ったりするの?」
「いいや。そのまま帰りました」
「それデートじゃないでしょ?」
「今思うと何だったかわからないですね」
彼が笑い、私も無理して笑った。これ以上この話題に突っ込まれたくない。
「あっ、私思い出しました。ここらへんの人はみんなショッピングモールオゾンに行くんですよ」
「オゾン?佐久平駅前の?」
丸山さんが怪訝な顔をしたので思わず笑った。
「オゾンの事馬鹿にしてるでしょ?オゾンは朝行けば夕方出てくることも可能なんですよ。田舎民の欲求をすべて満たしてくれる、それがオゾンですから」
そう自信満々に言うと、彼は不思議そうに聞いた。
「俺も営業で月一回は全国各地のオゾンに行かされるけど、オゾンっていつもオゾンに行くの?」
「うーん確かに毎週は飽きますよね」
「他はあっ!いいや、何でもありません」彼は私の一瞬の動揺を見逃さなかった。
「今何か思いついたでしょ?」
「いや同じ職場の新婚さんの子が言ってた事思い出したんですけど、品がないことだったので」
丸山さんは私の引きつった顔を見て吹き出した。
「もうその時点でどんな話か想像つくよ、行く所ないからラブホテルに行くんだろ?」
丸山さんとこんな話をするのもどうかと思ったけれど、ここまで言われたらするしかない。
「…らしいですね。一時間ぐらい並ぶらしいです。そこで保護者も2組並んでたってあっけらかんと話されて」
変な間が一秒開き丸山さんが「普通気まずいよな」と言った。
私の短所は色々な事をついつい喋りすぎてしまうことだ。
それは35年生きてきてよくわかっているけれど、止められない。
「この村の人達ってやけに性に対してオープンなんですよね。
私五年前に初めてあの村に来たんですけど、村あげての歓迎会をやってくれて、その時に隣に座った婦人会の会長さんが開口一番
「あんた、今まで何人と寝た事あるん?」って言うんですよ。
聞き間違いだと思って
「もう一度お願いします」って言ったら「だから何人の男知ってるんって聞いとるんや」って」
丸山さんが唖然と私を見て言った。
「それ今飲み会でも聞いちゃいけないやつ」
「でしょ?で、私があわわってなってたら、一つ年上の先生が気づいて助けてくださってたんです」
「でも私が腹の虫が治らなくてセクハラだって翌日学校で騒いでたら、助けてもらった先生に
「この村ではそれがコミュニケーションのツールだから、この村に馴染んで働くってことは、都会の常識は通用しないよ」って言われたんです。
そして本当に会う人会う人そういうことしか聞いてこないから、一ヶ月もしないうちに慣れちゃいました。
村人の挨拶代わりなんですよ」
丸山さんが数秒考え込んで、深刻な顔で言った。
「じゃあアキ先生は今まで何人と付き合ったことあるの?」
一瞬焦ったけれど、日頃鍛えて貰ってる村人のお陰で冷静に返すことができた。
今まで付き合ったことないなんて言えるわけない。
「丸山さんは何人の女性と付き合ったことあるんですか?軽く付き合った人達もちゃんと数に入れて下さいね」と返すと「負けた」と丸山さんは呟いて笑った。
「昨日も子供から高崎のお見合いパーティーのちらし貰いましたから。
「ここ安心安全って書いてあるよ」ってそういう地区なんです」
私はそう言ってまた笑った。
私の完敗だ。
「本当にその一緒に行った人と付き合ってるとかではなくて、真田おるっていうドラマやってたの覚えてますか?三年前に真田おるの上田城行きました」
彼はちょっと困惑して言った。「上田城って何するの?」
「私昔から歴史ドラマ好きなんですよ、一緒に行った人も真田おる好きだったから、本丸跡とかから、ここから真田昌幸が上田の街眺めてたんだって、凄く感慨深かったです」
「…それってその後、夜景見に行ったりするの?」
「いいや。そのまま帰りました」
「それデートじゃないでしょ?」
「今思うと何だったかわからないですね」
彼が笑い、私も無理して笑った。これ以上この話題に突っ込まれたくない。
「あっ、私思い出しました。ここらへんの人はみんなショッピングモールオゾンに行くんですよ」
「オゾン?佐久平駅前の?」
丸山さんが怪訝な顔をしたので思わず笑った。
「オゾンの事馬鹿にしてるでしょ?オゾンは朝行けば夕方出てくることも可能なんですよ。田舎民の欲求をすべて満たしてくれる、それがオゾンですから」
そう自信満々に言うと、彼は不思議そうに聞いた。
「俺も営業で月一回は全国各地のオゾンに行かされるけど、オゾンっていつもオゾンに行くの?」
「うーん確かに毎週は飽きますよね」
「他はあっ!いいや、何でもありません」彼は私の一瞬の動揺を見逃さなかった。
「今何か思いついたでしょ?」
「いや同じ職場の新婚さんの子が言ってた事思い出したんですけど、品がないことだったので」
丸山さんは私の引きつった顔を見て吹き出した。
「もうその時点でどんな話か想像つくよ、行く所ないからラブホテルに行くんだろ?」
丸山さんとこんな話をするのもどうかと思ったけれど、ここまで言われたらするしかない。
「…らしいですね。一時間ぐらい並ぶらしいです。そこで保護者も2組並んでたってあっけらかんと話されて」
変な間が一秒開き丸山さんが「普通気まずいよな」と言った。
私の短所は色々な事をついつい喋りすぎてしまうことだ。
それは35年生きてきてよくわかっているけれど、止められない。
「この村の人達ってやけに性に対してオープンなんですよね。
私五年前に初めてあの村に来たんですけど、村あげての歓迎会をやってくれて、その時に隣に座った婦人会の会長さんが開口一番
「あんた、今まで何人と寝た事あるん?」って言うんですよ。
聞き間違いだと思って
「もう一度お願いします」って言ったら「だから何人の男知ってるんって聞いとるんや」って」
丸山さんが唖然と私を見て言った。
「それ今飲み会でも聞いちゃいけないやつ」
「でしょ?で、私があわわってなってたら、一つ年上の先生が気づいて助けてくださってたんです」
「でも私が腹の虫が治らなくてセクハラだって翌日学校で騒いでたら、助けてもらった先生に
「この村ではそれがコミュニケーションのツールだから、この村に馴染んで働くってことは、都会の常識は通用しないよ」って言われたんです。
そして本当に会う人会う人そういうことしか聞いてこないから、一ヶ月もしないうちに慣れちゃいました。
村人の挨拶代わりなんですよ」
丸山さんが数秒考え込んで、深刻な顔で言った。
「じゃあアキ先生は今まで何人と付き合ったことあるの?」
一瞬焦ったけれど、日頃鍛えて貰ってる村人のお陰で冷静に返すことができた。
今まで付き合ったことないなんて言えるわけない。
「丸山さんは何人の女性と付き合ったことあるんですか?軽く付き合った人達もちゃんと数に入れて下さいね」と返すと「負けた」と丸山さんは呟いて笑った。
「昨日も子供から高崎のお見合いパーティーのちらし貰いましたから。
「ここ安心安全って書いてあるよ」ってそういう地区なんです」
私はそう言ってまた笑った。