第315話 逃げる男

文字数 1,316文字

たかちゃんと一緒にオムライスを作って食べた。料理上手なたかちゃんお手製のデミグラスソースが絶品だ。

オムライスを食べ終わり食器を洗うと二人でお喋りを楽しみながらゲーム機をつけた。今日はたかちゃんオススメの「春のイケメン協奏曲」をプレイする。

「これ18禁って書いてあるけど」
たかちゃんに尋ねると「私たちもう×2の年齢だからいいでしょ?」と言うので深く考えずに「そうだね」と同意した。

幸運なことに隣の部屋の村の中学校の先生は結婚が決まったようで出て行ったばっかりだし、下の部屋はずっと空室だ。

ゲームをわりと大きめな音で流して始めた。

今日は私は筋肉が凄い自衛官の瑛太君を狙い、たかちゃんは繊細な音楽家の未竜君を狙った。

二人でゲームを進めながらガールズトークを話す。私が先週末の出来事を話すとたかちゃんは「中途半端」と笑った。

「でしょ?なんかズルいよね?私次会ったら問いただすから、別れるならはっきりと別れたい」

次の瞬間、画面上で瑛太君が「今度の土曜日泊まりがけで旅行行かない?」と唐突な誘いをして来たけれどゲーム上なのでもちろんokした。

すると画面は豪華なホテルに変わり、瑛太君が何故だかタオル一枚で登場した。

「うわっ」と私が叫び声をあげるとたかちゃんも「いい筋肉」と喜んだ。
「流石18禁だね」と言うとたかちゃんが得意気に「でしょ?」と胸を張った。



次の瞬間、台所と部屋とを繋ぐドアが開き何故かわからないけれど重ちゃんが入ってきた。

「うわっ、なんで!」そう叫ぶと「いくらチャイム鳴らしても出てこないし、中から男の声はするし入ってきた」

たかちゃんは何故だか野太い男の声を出して「お前は亜紀の何なんだ?」と言った。

たかちゃんの持ちネタだ。智と最初に会った時も同じことをして智をパニックに陥れた、

重ちゃんは冷静に「たかちゃんそれやりたかったら、そのゲームの画面消してからして」と画面を嫌そうに指差した。

画面は何故だかタオルがはだけてモザイクがかかった瑛太君がドアップで映っていた。

たかちゃんと私は「いつの間に脱いだの」と声を揃えて叫ぶと慌ててゲームを止めて画面を消した。

私もたかちゃんもこんなゲームをしていると異性に知られたくはなかった。

冷たい視線を向ける彼を和らげようと「土曜までインドじゃないの?」と聞くと

「一日早く帰ってこれたんだよ、また何か余計な事してたら困るから、家で少し寝たらすぐに来た、そしたら本当にとんでもないことしてた」

彼は理不尽な嫉妬をゲームキャラにまで向けた。たかちゃんの前だからそれを隠して穏やかな喋り口調ではいるけれど滅茶苦茶怒っている、私はわかる。

たかちゃんは空気を読んで彼を褒め出した。

「テレビより本物の方が数倍かっこいい!」
すると彼は気を良くして「だろ?よく言われれるよ」と言った。

「凄い好みのタイプ、今度二時間だけ貸して」とたかちゃんが冗談を言いながらゲームを鞄にしまった。

「じゃあ帰るね、あとはごゆっくり」と言いながら逃げるように帰ってしまった。

たかちゃんは異性の目を凄く気にするタイプだ。あのゲームを見られたのが相当のダメージのようだ。

隣を見ると彼が腕組みをしながら私を睨んでいた。やばい、滅茶苦茶怒っている。




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