第305話 同窓会

文字数 1,337文字

翌日の夕方七時過ぎ、高崎駅で新幹線を降りると校長先生と二人で待ち合わせ場所の駅前のファミレスに向かった。

待ち合わせ時間ぴったりに着くと塚田君と米崎小の校長先生がもう席で待っていてくれていた。

校長先生同士は知り合いのようで「久しぶりだな」と陽気に挨拶を交わしている。私も塚田くんと目を合わせて微笑んだ。

とにかく夕飯を食べようということになり、メニューを見て注文した。

塚田君がたらこパスタを注文していたので懐かしい思い出が蘇る。

大学一年の頃、ファミリーレストランでバイトをしていると幸運にも塚田君が友達連れでやってきて、たらこパスタを頼んでいた。

あんなにかっこいい人も、たらこパスタ食べるんだと驚いた記憶がある、懐かしいな。


ご飯を食べながらできるだけ小さな声で肝心の不審点を確認する。

充くんのお母さんの写真を見せると塚田君が「この人お母さんじゃないよ、確か教団の幹部の人のはず。お母さんはもっと細いか弱そうな感じの人だった」と言うので思わず絶句した。

校長先生が「やっぱりそうか」と呟いた。

米崎小の校長先生が小さな声でつぶやいた。

「うちの学校出て行くときにお母さんがわざわざ校長室に来て「やっと腰を下ろせる場所が見つかった」って嬉しそうにしてたんだけどな」

何にも言えない、重苦しい時間が流れる。遠くの席で大学生の集団が陽気に騒いでいるのがやけに耳につく。

校長先生達が深刻な顔で今後を相談をしている。何の力もない私と塚田君はそれを見守るしかない、けれどどれだけ考えても結論が出ない、校長先生と言えど一教員にできることは限られているからだ。

校長先生が「明日、朝イチで上に連絡上げよう、それしか教員にできることはない」と言い米崎小の校長先生もそれに同意した。


ご飯を食べながら宗教団体が高崎で起こした事件を色々聞いた。塚田君も充くんの担任をしていてかなり大変だったらしい。

塚田君がつけていたマル秘の記録とお母さんが映った写真を借りた。校長先生が明日報告する用に資料をまとめるそうだ。

このマル秘資料は今週の土曜に高崎まで私が返しに来ることにした。もう既に一万円使い果たし米しか食べていない智にご飯を食べさせたいし。

昨日塚田君の新しい番号を聞いておいて良かった。

結局米崎小の校長先生に全て奢って貰い、お礼を言いながら店を出た。

校長先生は米崎小の校長先生と大学の同級生のようで、これからもう何人か集めて飲み直すらしい。

平日なのに元気だな。


校長先生達と別れた所でスマホにメッセージがが届き見てみると重ちゃんからだった。

「どうしても付き合いで風俗店に行かないといけなくなった。ごめん」というメッセージだった。

体が怒りで震えた。申し訳なさそうにメールしてきたけれど絶対楽しんで行ってる。

それにこの間そういう店行かないって約束したじゃん。……なのに。

塚田君に「山浦さん」と呼ばれて正気に戻る。彼は穏やかに微笑みながらこう言った。
「俺達もこれから一杯飲まない?」

異様に私がお酒を飲むことを嫌がる重ちゃんのことはわかっていた。ましてや塚田君と二人で飲むなんて彼が激怒するだろう。

けれど付き合いといえどそんな店に行く彼への当てつけだった。

「いいよ」と軽く返事をして近くの塚田君行きつけだというバーへと向かった
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み