第118話 勿忘草
文字数 1,581文字
「智!」
私が一瞬にしてキレたけれど、智はエヘヘとまだ話を続ける。
「あの人いい人そうだったけどな、家も二、三回きてくれて、姉ちゃんに内緒で俺と健にDVDくれたし」
「馬鹿!」と叫んだけれども智は一向に気づかない、
何故かしげちゃんがこの話を掘り下げようとする。
「どんな人だった?」
「えーっとね、ねぇちゃんに言い寄ってきた男、全部で5人知ってるんだけど、5人目で姉ちゃんが29の時の話。一番顔も普通だし、身長も普通だし、仕事もガス会社で働いてて性格も普通だった」
私は石の上に飛び乗り智の口を押さえた。これ以上喋らないように。
「あんた今ここに私が付き合ってる人いるでしょ?馬鹿なの?考えなさい!」
そう言い聞かせるように叫んだけれども
この馬鹿は止められない。私の手をどけて必死に続きを言おうとしている。
「いいよ、俺はそんなこと気にしないから」と彼が言うと、奴は私の手を払い除けることに成功し石を飛び降りた。
「流石兄ちゃんだな。太っ腹」
「どうやってライブで知り合ってきたの?」
彼が私を見つめている。
「……だから友達が急に熱出しちゃって、本日のチケット定価で譲りますってファンサイトに書いたら、中山さんがその日出張の予定が無くなってたみたいで返信が来て会場で会って……」
「有りがちだな、はい、それでその男の面白エピソードは?」
「ない、普通の人だったから何の面白いエピソードもない」
智が急に笑顔になった、嫌な予感がする。
「兄ちゃん、その人は本当にないんだよね。三人目の大病院の息子の方がおも」
「智!」私は再び奴の口を塞いだ。
しげちゃんが困った顔でこう言った。
「聞くのは一日につき一人にしとくよ、今日はホワイトアンドブラックの男、続きどうぞ」
智はようやく散歩で外に出られた犬みたいにはしゃいでいる。
「俺は姉ちゃんとその人お似合いだなって思ってたんだけど、健がその頃姉ちゃんと結婚する気だったから、「俺は亜紀と夜な夜なって」いつものホラ話したら逃げてっちゃったんだよね」
衝撃の事実発覚、私の家庭の事情に耐えられなくて逃げたんだと思っていたのに違ったんかい。普通はそんなこと聞かされたら逃げるよね。
「姉ちゃんそいつの事本気で好きだったみたいで三ヶ月ぐらいずっと落ち込んでたんだよ」
智の必要のない追加情報が聞こえ、ふと我に返った。
「健の奴!道理でおかしいと思ったんだよ!」私がそう叫ぶと、智はまだ話し始めた。
「健は姉ちゃんに寄ってきた男全員にそれやって追い払ったから、凄い奴だよ」
しげちゃんは手を叩いてヒッヒッヒと笑った。
「そんなことだろうと思ってたけれど、やっぱりな。俺は健に深く感謝するよ。健ありがとう」
「兄ちゃん俺にも感謝して」「何で?」
「俺ね、ホワイトアンドブラックの人が姉ちゃんと部屋でキスしようとした所に「中山さん
遊ぼう」って入っちゃって邪魔しちゃったことあるんだよね!」
「うわっ!うわっ!うわっ!智!!あんた言っていいことと悪いこと考えなさい!」
私はその場に崩れ落ちて履いていたベージュのチノパンが枯葉まみれになってしまった。
それ今付き合ってる人の前で言う?我が弟ながら本当にバカすぎて嫌になる。
彼も気まずい顔で遠くを見た。
「それ流石に聞きたくなかったわ、その男とキスしてたの?」
何故だか智が代わりに答えた。
「してないよ、その後すぐに健がほら話吹いてそれ以来家に来なくなっちゃったから、姉ちゃんに中山さんとキスしたかったのにってボコボコに俺蹴られたんだよ」
「キスしたかったんだ」と彼は爆笑した。
「……あーもうこんな事まで喋られて、貝になりたい」
立つ元気が無くて庭に座り込むと智としげちゃんがそんな私を見て更に笑った。
私が一瞬にしてキレたけれど、智はエヘヘとまだ話を続ける。
「あの人いい人そうだったけどな、家も二、三回きてくれて、姉ちゃんに内緒で俺と健にDVDくれたし」
「馬鹿!」と叫んだけれども智は一向に気づかない、
何故かしげちゃんがこの話を掘り下げようとする。
「どんな人だった?」
「えーっとね、ねぇちゃんに言い寄ってきた男、全部で5人知ってるんだけど、5人目で姉ちゃんが29の時の話。一番顔も普通だし、身長も普通だし、仕事もガス会社で働いてて性格も普通だった」
私は石の上に飛び乗り智の口を押さえた。これ以上喋らないように。
「あんた今ここに私が付き合ってる人いるでしょ?馬鹿なの?考えなさい!」
そう言い聞かせるように叫んだけれども
この馬鹿は止められない。私の手をどけて必死に続きを言おうとしている。
「いいよ、俺はそんなこと気にしないから」と彼が言うと、奴は私の手を払い除けることに成功し石を飛び降りた。
「流石兄ちゃんだな。太っ腹」
「どうやってライブで知り合ってきたの?」
彼が私を見つめている。
「……だから友達が急に熱出しちゃって、本日のチケット定価で譲りますってファンサイトに書いたら、中山さんがその日出張の予定が無くなってたみたいで返信が来て会場で会って……」
「有りがちだな、はい、それでその男の面白エピソードは?」
「ない、普通の人だったから何の面白いエピソードもない」
智が急に笑顔になった、嫌な予感がする。
「兄ちゃん、その人は本当にないんだよね。三人目の大病院の息子の方がおも」
「智!」私は再び奴の口を塞いだ。
しげちゃんが困った顔でこう言った。
「聞くのは一日につき一人にしとくよ、今日はホワイトアンドブラックの男、続きどうぞ」
智はようやく散歩で外に出られた犬みたいにはしゃいでいる。
「俺は姉ちゃんとその人お似合いだなって思ってたんだけど、健がその頃姉ちゃんと結婚する気だったから、「俺は亜紀と夜な夜なって」いつものホラ話したら逃げてっちゃったんだよね」
衝撃の事実発覚、私の家庭の事情に耐えられなくて逃げたんだと思っていたのに違ったんかい。普通はそんなこと聞かされたら逃げるよね。
「姉ちゃんそいつの事本気で好きだったみたいで三ヶ月ぐらいずっと落ち込んでたんだよ」
智の必要のない追加情報が聞こえ、ふと我に返った。
「健の奴!道理でおかしいと思ったんだよ!」私がそう叫ぶと、智はまだ話し始めた。
「健は姉ちゃんに寄ってきた男全員にそれやって追い払ったから、凄い奴だよ」
しげちゃんは手を叩いてヒッヒッヒと笑った。
「そんなことだろうと思ってたけれど、やっぱりな。俺は健に深く感謝するよ。健ありがとう」
「兄ちゃん俺にも感謝して」「何で?」
「俺ね、ホワイトアンドブラックの人が姉ちゃんと部屋でキスしようとした所に「中山さん
遊ぼう」って入っちゃって邪魔しちゃったことあるんだよね!」
「うわっ!うわっ!うわっ!智!!あんた言っていいことと悪いこと考えなさい!」
私はその場に崩れ落ちて履いていたベージュのチノパンが枯葉まみれになってしまった。
それ今付き合ってる人の前で言う?我が弟ながら本当にバカすぎて嫌になる。
彼も気まずい顔で遠くを見た。
「それ流石に聞きたくなかったわ、その男とキスしてたの?」
何故だか智が代わりに答えた。
「してないよ、その後すぐに健がほら話吹いてそれ以来家に来なくなっちゃったから、姉ちゃんに中山さんとキスしたかったのにってボコボコに俺蹴られたんだよ」
「キスしたかったんだ」と彼は爆笑した。
「……あーもうこんな事まで喋られて、貝になりたい」
立つ元気が無くて庭に座り込むと智としげちゃんがそんな私を見て更に笑った。