第167話 師走の夜
文字数 1,373文字
智は馬鹿だけど憎めない馬鹿だ。
結局智は私と彼の間に座り美味しそうに笹団子葉寿司を頬張っている。
「兄ちゃんこれ美味しいな」
彼は半ば呆れながら言った。
「そうか好きなだけ食べろ、賞費期限今日までだから」
ふと机の上を見ると、あることに気付いてしまった。さっきのラムネ菓子のようなものが机の上に置きっぱなしになっている。そっと場所を移動すると智に気づかれないようにそっと手を伸ばし机の下に下げた。彼がそれに気付いたようで床の上で手を広げたのでそっと渡した。
普通の人なら例え気づいていても知らないフリをすると思う。けれど智は気を遣うことができない。
「兄ちゃんと姉ちゃんはちゃんと避妊してて偉いな」
また馬鹿でかい声で叫んだ。
「あんたにだけは言われたくないから!あんたが出来ちゃった結婚したせいで何で私が美子ちゃんのお家にビクビクしながら謝りに行かなくちゃいけなかったの!」
「いいじゃんか、美子のお父さんとお母さん全然怒ってなかったし」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「それに子供欲しいから、もう避妊しなくていいからって言ったの美子だし」
「弟夫婦の生々しい事情知りたくないわ!」
「俺だって姉ちゃんと兄ちゃんがやってるの見たくなかったよ」
「そっちが勝手に入ってきたんでしょうが!」
彼が兄弟喧嘩の仲裁に入った。「二人とも落ち着け、お前は今日は何の用事があって来たんだよ?」
彼の前で不毛な兄弟喧嘩を繰り広げる訳にはいかない。私も大きく深呼吸した。
「美子ちゃんと喧嘩したの?」
「喧嘩っていうか、あいつが男に対する理解が足りないんだよ」
「何か嫌な予感がする」
「なぁ兄ちゃん、風俗は浮気じゃないよな?」
部屋に最強寒波が到来した。
「……終わった話を蒸し返すな」
彼が心底気まずそうに呟いた。
「兄ちゃんだってそうだろ?」
智は空気を読まずに追い詰め、彼は渋々話し始めた。
「相手が嫌がってるなら行くのやめろ、どうしても行きたいなら完璧にバレないようにするのがマナーだよな」
「本当にね」
私がそう相槌を打つと彼がビクッとした。
「あんたまさか、またビッグハート行ったんじゃないでしょうね!?」
「ビッグハートは怒られるから行ってない、職場の先輩とオッパブ行ってピンサロ行ったのバレた」
彼は私の顔をチラチラ見ながら
「あーお前それ一番やっちゃいけないやつ」と呟いた。
実の弟が人様の大切なお嬢さんに迷惑をかけているこの事実に怒りが止まらない。
「てゆうか奥さん妊娠中であと三カ月で子供生まれてくるじゃん!ひどい思いして誰の子供妊娠してると思ってんだよ!あんたって奴は本当に絶対許さない」
「姉ちゃんごめんって、兄ちゃんもなんか言ってよ」
「やめろ!俺にふるな!いいこと教えてやる。バレた時点で誠心誠意謝れ。間違っても逆切れするな、だからすぐ家帰って謝ってこい」
「あー、もう経験者は語る風に言わないでよ!」
この間のことを、思い出して大きなため息をついた。
智がどうにかして私の機嫌をとろうとしている。何やら鞄をガサゴソし始めた。
「あっ、そういえば家に昔の兄ちゃんの雑誌あったから、姉ちゃんに見せようと思って」
そう言って鞄から取り出したのはパーマでカッコつけた彼が表紙の雑誌だった。
結局智は私と彼の間に座り美味しそうに笹団子葉寿司を頬張っている。
「兄ちゃんこれ美味しいな」
彼は半ば呆れながら言った。
「そうか好きなだけ食べろ、賞費期限今日までだから」
ふと机の上を見ると、あることに気付いてしまった。さっきのラムネ菓子のようなものが机の上に置きっぱなしになっている。そっと場所を移動すると智に気づかれないようにそっと手を伸ばし机の下に下げた。彼がそれに気付いたようで床の上で手を広げたのでそっと渡した。
普通の人なら例え気づいていても知らないフリをすると思う。けれど智は気を遣うことができない。
「兄ちゃんと姉ちゃんはちゃんと避妊してて偉いな」
また馬鹿でかい声で叫んだ。
「あんたにだけは言われたくないから!あんたが出来ちゃった結婚したせいで何で私が美子ちゃんのお家にビクビクしながら謝りに行かなくちゃいけなかったの!」
「いいじゃんか、美子のお父さんとお母さん全然怒ってなかったし」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「それに子供欲しいから、もう避妊しなくていいからって言ったの美子だし」
「弟夫婦の生々しい事情知りたくないわ!」
「俺だって姉ちゃんと兄ちゃんがやってるの見たくなかったよ」
「そっちが勝手に入ってきたんでしょうが!」
彼が兄弟喧嘩の仲裁に入った。「二人とも落ち着け、お前は今日は何の用事があって来たんだよ?」
彼の前で不毛な兄弟喧嘩を繰り広げる訳にはいかない。私も大きく深呼吸した。
「美子ちゃんと喧嘩したの?」
「喧嘩っていうか、あいつが男に対する理解が足りないんだよ」
「何か嫌な予感がする」
「なぁ兄ちゃん、風俗は浮気じゃないよな?」
部屋に最強寒波が到来した。
「……終わった話を蒸し返すな」
彼が心底気まずそうに呟いた。
「兄ちゃんだってそうだろ?」
智は空気を読まずに追い詰め、彼は渋々話し始めた。
「相手が嫌がってるなら行くのやめろ、どうしても行きたいなら完璧にバレないようにするのがマナーだよな」
「本当にね」
私がそう相槌を打つと彼がビクッとした。
「あんたまさか、またビッグハート行ったんじゃないでしょうね!?」
「ビッグハートは怒られるから行ってない、職場の先輩とオッパブ行ってピンサロ行ったのバレた」
彼は私の顔をチラチラ見ながら
「あーお前それ一番やっちゃいけないやつ」と呟いた。
実の弟が人様の大切なお嬢さんに迷惑をかけているこの事実に怒りが止まらない。
「てゆうか奥さん妊娠中であと三カ月で子供生まれてくるじゃん!ひどい思いして誰の子供妊娠してると思ってんだよ!あんたって奴は本当に絶対許さない」
「姉ちゃんごめんって、兄ちゃんもなんか言ってよ」
「やめろ!俺にふるな!いいこと教えてやる。バレた時点で誠心誠意謝れ。間違っても逆切れするな、だからすぐ家帰って謝ってこい」
「あー、もう経験者は語る風に言わないでよ!」
この間のことを、思い出して大きなため息をついた。
智がどうにかして私の機嫌をとろうとしている。何やら鞄をガサゴソし始めた。
「あっ、そういえば家に昔の兄ちゃんの雑誌あったから、姉ちゃんに見せようと思って」
そう言って鞄から取り出したのはパーマでカッコつけた彼が表紙の雑誌だった。