第24話 コスモ山浦

文字数 1,158文字

一瞬俺が連れてってやるよ展開かと思ってしまった自分がいた。そんな事はありえない、勘違い女になる前に正気に戻らないと。

「えーっとどこだろ?東京、デート、思いつかないな。こういう時はネット検索してもいいですか?」

そう聞くと丸山さんは「いいよ」と答えた。

ネットで検索すると「お台場海浜公園、東京スカイツリー、葛西臨海公園、レインボーブリッジ、六本木ヒルズ、浅草ってこれ全部修学旅行で回るコースじゃん。下見も含めたら十回ぐらい行きましたよ」

そう言うと丸山さんは「確かに修学旅行生が沢山いそうな場所だな」と笑った。

私は逆に聞いてみたかった。「丸山さんだったらどこに連れてってくれるんですか?」と聞くと一瞬たじろいだような気がした。

けれど、すぐに「俺は何でも相手に合わすよ」と答えた。

「優しいですね!かっこいい!そりゃモデル何人かと軽く付き合えますわ」

そう言うと決まり悪そうに丸山さんが言った。

「まだ覚えてたの?若い時の話だから」

「えー今もじゃないんですか?」と言うと

「じゃあここら辺の人達はデートってどこに行くの?」

と私に強引に話題を返してきた。余程聞かれたくないらしい。

「強引に話変えましたね、いやーどこに行ってるんでしょうね、あー全然思いつかないな」

「じゃあさ、最後に行ったデートの場所は?」

丸山さんがとんでもないことを言い出したので焦った。凄く焦った。

私は焦ると早口になって余計に喋りすぎる。

「一体何言ってるんですか、そもそもデートって何なんですか?男の人と二人で出かける事がデートなら、この間弟と二人で高崎のオゾンに弟の奥さんの誕生日プレゼント見に行きましたけど」

丸山さんは私をみて吹き出した。

「亜紀先生って焦ると早口になるよね、余計聞いてみたくなったよ。家族抜きで、あと登山の時に言ってたゲイの友達も抜きで答えて」

会話の主導権を丸山さんに握られたままでは悔しすぎる。私だって負けてはいられない。

「そんな事言うんだったら、私丸山さんにも聞きますから!いいんですか?ネットに書いちゃうかもしれないですよ」

けれども丸山さんの方が上手だった。

彼は勝ち誇った笑みを浮かべると

「俺はねはっきり覚えてる。五年前に六本木ヒルズに女の人の買い物に付き合って行ってた」

「うわっ、イメージを裏切らないですね。六本木ヒルズで買い物っていう芸能人感。モデルの彼女と行ったんですか?」

「あー、いまいち誰と行ったか思い出せないんだよね」

「酷すぎる!あれ、というかなんで五年前なんですか?」

「俺五年前で女と遊ぶのやめたから」

五年前?私が戸惑っていると彼が

「俺だけに言わせて亜紀先生言わないってことないよね?」とニヤリと笑った。
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