第201話 再会は突然に
文字数 1,235文字
部屋の中には、グレーヘアの男性と私によく似た五十代位の女性が座っていた。一度だけ母さんの葬儀で会った私の叔母でもある健の母親とその旦那さんだ。
「亜紀ちゃん?」そう叔母さんに言われると「はい」とできるだけ明るく返事をした。
まだ残りの三人が入ってこれないようだったからできるだけ雰囲気を和らげたい。なのでおばさんと「今日は一段と冷えましたね」と世間話をしていると健が意を決したように部屋に入ってきて私の隣に座った。そして智と美子ちゃんもその横に座った。
叔母さんは健の顔を見るなり泣き出してしまった。その涙を見て何故だか私も泣きそうになるのを堪えた。けれども智の馬鹿はもう声を上げて「母ちゃん、母ちゃん」と泣き出した。
健は智に「お前の母ちゃんじゃねぇだろ」と突っ込んでいる。
叔父さんは優しい眼差しで泣いている叔母さんを見つめていた。
叔父さんが「家内がこんなんだから、自己紹介します。坪内雅司です。家内とは二十年前に結婚して、浜松町で小さなレストランやっています」
「私達も自己紹介します。私は山浦亜紀と申します。叔母さんの姪にあたります。そして健はいいと思うんだけど、隣にいるのが私の弟で叔母さんの甥にあたる智で、その隣が奥さんです。美子ちゃんは「初めまして山浦美子です」とエヘヘと言ってるだけの智とは正反対に丁寧に頭を下げた。
叔母さんがハンカチで涙を拭うと声を震わせ話し始めた。
「健、本当にごめんね。あなたを置いてって本当にごめんなさい」
すると健が言った。
「俺は亜紀の家で愛情注いで育てて貰ったし、怒ってない。亜紀には凄く苦労かけたけど」
「苦労なんかかけてないよ」
私は即座に反論した。
叔母さんは震える声で喋り出した。
「私が昔の嫁ぎ先での暮らしに耐えられなくなっちゃって家出たの。健も連れて家を出ようと思ったんだけど、後継だから絶対渡さないって言われてどこかに連れてかれちゃって、本当にごめんなさい」
叔母さんは何度も泣きながらごめんなさいと謝った。叔母さんが背負ってきた自責の念が悲痛なほど叔母さんを苦しめている。
「私もあの村で育ったからわかるけれど、多分叔母さんが健置いて出ていくように仕向けられてたんだと思います。高山のおばちゃんもそう言ってたし」
健が重い口を開いた。
「あの村に嫁いできた嫁さん達がどんな扱い受けて来たのかわかるから仕方ない、亜紀からだいたいの話は聞いたけど、母さんは利用されただけで何にも悪くないよ」
叔母さんが嗚咽をあげて泣いた。声にならない声でこう呟いた。
「育ててもないのに母さんって呼んでくれて有難う」
この一言で叔父さんも涙を流した。長年一緒にいて叔母さんの苦悩をよくわかっているのだろう。叔母さんはずっと健に母さんと呼んで欲しかったのだ。
智は「母さん、母さん」とまた泣いている。健は「だからお前の母さんじゃねぇだろ」とまた突っ込んでいたけれど目に薄らと涙を溜めていた。
これからもう一度親子をやり直すことができるといいな、健と叔母さんを見ながら思った。
「亜紀ちゃん?」そう叔母さんに言われると「はい」とできるだけ明るく返事をした。
まだ残りの三人が入ってこれないようだったからできるだけ雰囲気を和らげたい。なのでおばさんと「今日は一段と冷えましたね」と世間話をしていると健が意を決したように部屋に入ってきて私の隣に座った。そして智と美子ちゃんもその横に座った。
叔母さんは健の顔を見るなり泣き出してしまった。その涙を見て何故だか私も泣きそうになるのを堪えた。けれども智の馬鹿はもう声を上げて「母ちゃん、母ちゃん」と泣き出した。
健は智に「お前の母ちゃんじゃねぇだろ」と突っ込んでいる。
叔父さんは優しい眼差しで泣いている叔母さんを見つめていた。
叔父さんが「家内がこんなんだから、自己紹介します。坪内雅司です。家内とは二十年前に結婚して、浜松町で小さなレストランやっています」
「私達も自己紹介します。私は山浦亜紀と申します。叔母さんの姪にあたります。そして健はいいと思うんだけど、隣にいるのが私の弟で叔母さんの甥にあたる智で、その隣が奥さんです。美子ちゃんは「初めまして山浦美子です」とエヘヘと言ってるだけの智とは正反対に丁寧に頭を下げた。
叔母さんがハンカチで涙を拭うと声を震わせ話し始めた。
「健、本当にごめんね。あなたを置いてって本当にごめんなさい」
すると健が言った。
「俺は亜紀の家で愛情注いで育てて貰ったし、怒ってない。亜紀には凄く苦労かけたけど」
「苦労なんかかけてないよ」
私は即座に反論した。
叔母さんは震える声で喋り出した。
「私が昔の嫁ぎ先での暮らしに耐えられなくなっちゃって家出たの。健も連れて家を出ようと思ったんだけど、後継だから絶対渡さないって言われてどこかに連れてかれちゃって、本当にごめんなさい」
叔母さんは何度も泣きながらごめんなさいと謝った。叔母さんが背負ってきた自責の念が悲痛なほど叔母さんを苦しめている。
「私もあの村で育ったからわかるけれど、多分叔母さんが健置いて出ていくように仕向けられてたんだと思います。高山のおばちゃんもそう言ってたし」
健が重い口を開いた。
「あの村に嫁いできた嫁さん達がどんな扱い受けて来たのかわかるから仕方ない、亜紀からだいたいの話は聞いたけど、母さんは利用されただけで何にも悪くないよ」
叔母さんが嗚咽をあげて泣いた。声にならない声でこう呟いた。
「育ててもないのに母さんって呼んでくれて有難う」
この一言で叔父さんも涙を流した。長年一緒にいて叔母さんの苦悩をよくわかっているのだろう。叔母さんはずっと健に母さんと呼んで欲しかったのだ。
智は「母さん、母さん」とまた泣いている。健は「だからお前の母さんじゃねぇだろ」とまた突っ込んでいたけれど目に薄らと涙を溜めていた。
これからもう一度親子をやり直すことができるといいな、健と叔母さんを見ながら思った。