第312話 同窓会
文字数 1,121文字
タイミングよく歩行者用信号が青に変わったので駅まで続く交差点を渡る。
「ここら辺詳しいの?」「うん、学生時代は通ってたし、前の勤務校が高崎だったから」「そうか」と重ちゃんは言った。
私たちが横断歩道を渡りきるとまた車が一斉に走り出す。
駅の構内に入ると忙しなく人々が行き来していた。新幹線のホームで彼が佐久平行きの切符を買って渡してくれた。
「寄り道しないでちゃんと家に帰って下さい。家に帰るまでが遠足ですからね」と言った。
私が頷くと「俺、この後お世話になってるプロデューサーの誕生会があるから新幹線ですぐに帰るよ」と優しい笑顔を向けてくれた。
しげちゃんは予定があるのに無理やり来てくれた、けれどここで流される訳にはいかない。
いつまでも恋愛に浸ってるわけにはいかないのだ。
切符を入れ改札を通り抜けると新幹線乗り場は駅の構内とは打って変わり人が数人パラパラといる程度で静まり返っていた。
涙が溢れているのに気づかれないように彼の少し後ろを歩く。
それなのに彼は「泣きすぎだよ」と振り返ったので「どうして何でもわかるの?」と聞いた。
「いいか、アキを世界で一番愛してるのはどこのどいつだい?俺だよ」
懐かしすぎる女王様キャラの登場に思わず泣きながら笑った。
「愛してるっていうことはその人の考えてる事は全部わかるんだぜ、ベイビーロックンロール」
彼はまたふざけた。
自分はすぐに泣く女が嫌いだ、けれども最近は涙腺が崩壊しやすい。もう若くないのだろう。
「わかってないよ、全然わかってない」
彼は立ち止まって私の顔を見つめ、急に真面目な顔でこう言った。
「わかってる、昨日様子がおかしかったから、亜紀が寝たの見計らって勝手にLINE覗いた。勝手に見てごめん」
正直に言うとホッとした。これで余計なこと説明しなくても彼が理解してくれると思ったからだ。
「……塚田君は私にとって大切な人だった。しげちゃんと出会ってなかったら付き合いたかったし結婚したかった。
でも今はしげちゃんのことが好きで付き合ってるからそんな事できない」
「そうだろ?」と彼はまたふざけようとしたけれど、彼を真剣に見つめた。
「でも私にはどうしても譲れない夢がある。十年前だったら何にも気にせずに一緒にいられたのに。けど私もう35なんだよ。だから私には時間がない、ごめん」
「本当にそうきたか」
彼は何故だか笑った。
「それで俺が風俗行ったのも怒らなかったんだ」
泣きすぎて言葉が出てこないので頷いた。
「いつからそんなこと考えてたの?」
彼が遠くを見つめながら聞いた。
「……いつからかな、年末にテレビで結婚する気ないって言ってた時から考えてはいた」
「随分前だな、何だよそれ」
彼は何故だか悲しそうに笑った。
「ここら辺詳しいの?」「うん、学生時代は通ってたし、前の勤務校が高崎だったから」「そうか」と重ちゃんは言った。
私たちが横断歩道を渡りきるとまた車が一斉に走り出す。
駅の構内に入ると忙しなく人々が行き来していた。新幹線のホームで彼が佐久平行きの切符を買って渡してくれた。
「寄り道しないでちゃんと家に帰って下さい。家に帰るまでが遠足ですからね」と言った。
私が頷くと「俺、この後お世話になってるプロデューサーの誕生会があるから新幹線ですぐに帰るよ」と優しい笑顔を向けてくれた。
しげちゃんは予定があるのに無理やり来てくれた、けれどここで流される訳にはいかない。
いつまでも恋愛に浸ってるわけにはいかないのだ。
切符を入れ改札を通り抜けると新幹線乗り場は駅の構内とは打って変わり人が数人パラパラといる程度で静まり返っていた。
涙が溢れているのに気づかれないように彼の少し後ろを歩く。
それなのに彼は「泣きすぎだよ」と振り返ったので「どうして何でもわかるの?」と聞いた。
「いいか、アキを世界で一番愛してるのはどこのどいつだい?俺だよ」
懐かしすぎる女王様キャラの登場に思わず泣きながら笑った。
「愛してるっていうことはその人の考えてる事は全部わかるんだぜ、ベイビーロックンロール」
彼はまたふざけた。
自分はすぐに泣く女が嫌いだ、けれども最近は涙腺が崩壊しやすい。もう若くないのだろう。
「わかってないよ、全然わかってない」
彼は立ち止まって私の顔を見つめ、急に真面目な顔でこう言った。
「わかってる、昨日様子がおかしかったから、亜紀が寝たの見計らって勝手にLINE覗いた。勝手に見てごめん」
正直に言うとホッとした。これで余計なこと説明しなくても彼が理解してくれると思ったからだ。
「……塚田君は私にとって大切な人だった。しげちゃんと出会ってなかったら付き合いたかったし結婚したかった。
でも今はしげちゃんのことが好きで付き合ってるからそんな事できない」
「そうだろ?」と彼はまたふざけようとしたけれど、彼を真剣に見つめた。
「でも私にはどうしても譲れない夢がある。十年前だったら何にも気にせずに一緒にいられたのに。けど私もう35なんだよ。だから私には時間がない、ごめん」
「本当にそうきたか」
彼は何故だか笑った。
「それで俺が風俗行ったのも怒らなかったんだ」
泣きすぎて言葉が出てこないので頷いた。
「いつからそんなこと考えてたの?」
彼が遠くを見つめながら聞いた。
「……いつからかな、年末にテレビで結婚する気ないって言ってた時から考えてはいた」
「随分前だな、何だよそれ」
彼は何故だか悲しそうに笑った。