第323話 逃げる男
文字数 1,019文字
「ずるいんじゃなくてそれが賢いってことだ。こんな事言っても通じねぇだろうな。あー馬鹿だな、本当馬鹿だよ。いい子ぶりっ子しやがって苛つくよ」
彼は猛烈に私の悪口を言い出した。
「別にぶりっこしてるつもりはない。自分が好きなように生きてるだけ」
「その結果が今だろ?誰よりも結婚して子供欲しかったのに、だからこの歳までできてないんだぞ、自分の馬鹿さ加減わかってる?」
「……わかってるよ」
天使のような可愛い赤ちゃんを抱っこしてるのに段々とイライラして来る。
「自分が全部悪いんだぞ、男ウケしそうなその顔も体も全てを無駄にして、正しいことばっかり追求してるから結婚したかったのに独身なんだ」
何で病院の廊下で新生児の甥を抱っこしたまま、好き勝手に生きてきた男に生き方について説教されなきゃいけないのだろうか。
「自分が悪いのは重々承知してる、でも私の気が済む様に生きてきたから何の後悔もしてない」
そう苛つきながら言い返すと彼は呆れ果てたように私を見た。
やりたい事を追求している彼から見ると確かに私は説教したくなる対象なのだろう。
「何が後悔してないだよ、自分の希望が一つも叶ってないだろ?」
彼は大きなため息を一つつき、壁にもたれかかって窓の外の青空を見た。
「……でも俺は亜紀のそういう所に惚れ抜いてる」
下げては上げて忙しい。
何だか恥ずかしくなって何も言い返せなかった。
部屋の中から「ごめんなさーい」という智の叫び声が聞こえて来る。
「あのさ亜紀、こんな所で申し訳ないけれど」
彼はそう言って鞄のチャックを開けた。
「何?結婚指輪でも出すの?」
そう軽口を叩いて、薄く瞼を開けた赤ちゃんをまた見ると、重ちゃんが「そうだよ」と言ったのが聞こえた。
驚いて重ちゃんを見るといつにもなく優しい顔をして私を見ていた。
次の瞬間、急に病室のドアが開き満面の笑みで智が飛び出してきた。
「俺の可愛いいベイビーはどこだい?」と叫び私の腕から強引に赤ちゃんを奪っていった。
「可愛い、なんて可愛いんだ」と叫んだ。
「俺の子供可愛いな、世界で一番可愛いな。兄ちゃんと姉ちゃんも早く子供作った方がいい、子供がいない人にはこの愛しさわかんないだろうな」
何故だか急に上から目線になり子有りマウントを取り出した智に重ちゃんは吐き捨てた。
「あーこいつ殴りたい」
「何で兄ちゃんそんなひどいこと言うんだよ、子供がいないからそんな殺伐とした気持ちになるんだぞ」
智は私達にここへ連れてきて貰ったことを都合よく忘れた。
彼は猛烈に私の悪口を言い出した。
「別にぶりっこしてるつもりはない。自分が好きなように生きてるだけ」
「その結果が今だろ?誰よりも結婚して子供欲しかったのに、だからこの歳までできてないんだぞ、自分の馬鹿さ加減わかってる?」
「……わかってるよ」
天使のような可愛い赤ちゃんを抱っこしてるのに段々とイライラして来る。
「自分が全部悪いんだぞ、男ウケしそうなその顔も体も全てを無駄にして、正しいことばっかり追求してるから結婚したかったのに独身なんだ」
何で病院の廊下で新生児の甥を抱っこしたまま、好き勝手に生きてきた男に生き方について説教されなきゃいけないのだろうか。
「自分が悪いのは重々承知してる、でも私の気が済む様に生きてきたから何の後悔もしてない」
そう苛つきながら言い返すと彼は呆れ果てたように私を見た。
やりたい事を追求している彼から見ると確かに私は説教したくなる対象なのだろう。
「何が後悔してないだよ、自分の希望が一つも叶ってないだろ?」
彼は大きなため息を一つつき、壁にもたれかかって窓の外の青空を見た。
「……でも俺は亜紀のそういう所に惚れ抜いてる」
下げては上げて忙しい。
何だか恥ずかしくなって何も言い返せなかった。
部屋の中から「ごめんなさーい」という智の叫び声が聞こえて来る。
「あのさ亜紀、こんな所で申し訳ないけれど」
彼はそう言って鞄のチャックを開けた。
「何?結婚指輪でも出すの?」
そう軽口を叩いて、薄く瞼を開けた赤ちゃんをまた見ると、重ちゃんが「そうだよ」と言ったのが聞こえた。
驚いて重ちゃんを見るといつにもなく優しい顔をして私を見ていた。
次の瞬間、急に病室のドアが開き満面の笑みで智が飛び出してきた。
「俺の可愛いいベイビーはどこだい?」と叫び私の腕から強引に赤ちゃんを奪っていった。
「可愛い、なんて可愛いんだ」と叫んだ。
「俺の子供可愛いな、世界で一番可愛いな。兄ちゃんと姉ちゃんも早く子供作った方がいい、子供がいない人にはこの愛しさわかんないだろうな」
何故だか急に上から目線になり子有りマウントを取り出した智に重ちゃんは吐き捨てた。
「あーこいつ殴りたい」
「何で兄ちゃんそんなひどいこと言うんだよ、子供がいないからそんな殺伐とした気持ちになるんだぞ」
智は私達にここへ連れてきて貰ったことを都合よく忘れた。