第297話 同窓会

文字数 971文字

春子が意を決したようにこう言った。

「あのアキ、私達はアキが散々苦労してきたのも知ってるし、幸せになって貰いたいと思ってるんだ」

きいちゃんが「本当にそう」と言った。

セイコがおそるおそる聞いてくる。
「その怪しい男、本当に仕事は何してるの?お金とか出させられたりしてない?大丈夫?」

完全にヤバい男に引っかかったと思われている。

「私は自分の分は出したいんだけど、女にお金を出させるのはマナー違反って全部出してくれるかな、でも悪いし部屋で帰り待ってる時に洗濯とか掃除とか料理作ったりしてる」

「怪しい男はそんなに稼いでんの?」
「聞いたことないからわかんないんだよね。事務所に強制労働させられて搾取されてるってよく嘆いてるけど」

「……強制労働?……事務所?……搾取?」

「あっ、でも社長さんには恩義を感じて仁義ある関係を結んでるって言ってた」

「……恩義?……仁義?」

何故だかみんながザワザワし出した。

「その怪しい男とどこで出会って何で付き合おうと思ったの?」

私は自信満々に答えた。
「山で出会ってダムで付き合おうと思った」

「……山?……ダム?」「何でそんな人気のない場所?」「埋めたり沈めたりするの?」

春子がおそるおそる尋ねてきた。

「……二人でデートするときはどこに行くの?」
「あんまり出かけないかな、指されたりしても嫌だし」
「……刺される?」

また場が静まり返ってしまった。先生だけは何故だか笑っている。


きいちゃんが私の首にかかっているネックレスを指差した。

「それも……例の怪しい男から貰ったの?」
「うん、クリスマスプレゼントだって貰った」

「それ、多分三十万円くらいするけど、本当に怪しい男は仕事何してんの?」

「三十万円?!一万円くらいかと思ってた。どうしよう、お返しに三千円のTシャツしかあげてないよ」

春子に怒られた。
「えぇっ、高校生でももっと高いまともな物あげるでしょ?亜紀って馬鹿なの?」

「だって、それがいいって言うから……どうしよう?今から何かあげた方がいいかな、同じ値段ぐらいのものって何かある?……三十万って高っ」

先生が口を開いた。
「いいんじゃない?怪しい男が勝手に張り切って買ってきたんだから」

女子達が口々に
「そうですよね」「先生の言う通り、買わせとけば」と追随する。

坂本君が「先生の言う通り!山浦さんそれ別れる時に売ればいいよ」とふざけ出した。


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