第3話 帽子岳の山頂で

文字数 861文字

ふと時計をみると十分が経過していた。

私はまた笛を吹いた。「登山体型に整列」そう叫ぶと子供達がまた元の並びに動きはじめた。

歩き出して数分後、丸山さんに聞かれた。「ここからはキツイですか?」「はい、地獄ですよ。覚悟してください」

そう言うと丸山さんはひゃっひゃっと笑い、隣を歩いてる子供に「地獄への階段を今登ってるぞ」と言い「えぇ嘘だー」と笑わせていた。


それから十分程歩いた時、クラスで一番体重が重いヒロくんが限界に近づいてきたみたいだ。

「痛い足が、痛い」と大袈裟に騒ぐ声が聞こえる。

ヒロ君を私の隣に連れて来ると彼のリュックサックを担いだ。

「先生が荷物持つから頑張ろう」そう言うと彼は「…うん」と小さく頷いた。

「ヒロ君頑張れ!」と友達からも応援が飛ぶ。

流石に水筒やお弁当諸々が入った一人分のリュックを余計に持つと重い、大きく息を吐いた。まぁ想定の範囲内だ。

その時リュックの重さが消えた、驚いて振り返ると丸山さんがヒロ君のリュックを持ちあげていた

「先生、荷物持ちすぎですよ」と丸山さんは爽やかに笑った。

「いやいや大丈夫ですよ、ヒマラヤのシェルパは100キロまで持つんですよ」

そう言うと「先生ゴーリキじゃないでしょ」と返ってきた。

話を聞いていたヒロ君が叫んだ。

「コーリキってボケモンじゃん」

アニメのボケットしたモンスター通称ボケモンが好きなヒロくんが楽しい話に息を吹き返す。

「そう言えば先生、コーリキに似てる」と無茶苦茶な話の参加の仕方をしてきた。

丸山さんは「先生はかくとうタイプじゃなさそうだ」と言い子供達にどっと笑いが起きた。

疲れていた子供達は一瞬にして元気になった。

芸人さんって凄いと思った。話術であんなに人を元気にできるんだから。

丸山さんの綺麗に整った横顔を見てそう思った。

結局ヒロ君のリュックを丸山さんに持って貰ったまま歩いている。

本当に丸山さんは親切な人だ、下山したらこの話を沢山の人に広めます。心の中でそう彼に話しかけた。
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