第166話 師走の夜

文字数 998文字

脳内対策会議が開かれこの先の方針を話し合おうとしている。

決して積極的にしたいわけではない。けれど風俗依存症の人が私のお願いを聞いて風俗行くの止めているのにここで拒否するっていうのはいくらなんでも人として酷すぎる。

それに嫌な訳じゃないし。

じゃあどうやってするの?
そういえばこの前の時、次は夜来るとか何とか言って匂わせをしていた。だからちゃんと調べておこうと思ったけれども、ここ二週間仕事が多忙でそんな暇がなかった。

何をどうすればいいのだろう。十何年前の記憶を辿るしかない、高校の時友達と読んでたレディースコミックを思い出せ、でも仲間内で唯一彼氏ができた美里は現実はあんなにバラの花とか舞う感じじゃないから、もっと生々しいよと得意気に語っていた。

そうこう考えてるうちにシャツをまくり上げられ下着の上から胸を触られている。

どうしよう、どうしたらいいんだろう。私はどんな顔で何をしているのが正しいのか、これから何をすればいいのか、誰でもいいから正しい解答を教えてほしい

間違いなくそのうち全部脱がされる。

とにかく結論を出すと、今から35歳の大人として恥ずかしくない最低限度の振る舞いをしなくてはいけない。どんな振る舞いをすればいいのか全くわからないけれど。

でも間違いなく彼は「どうやっていいかわかんない」なんて反応は求めていない。だからした事ないことを彼に悟られてはいけない。
ドン引きされる。

高校生の頃流れた噂によると最初は凄く痛いらしいけど、痛みなんて根性で我慢すれば誤魔化せる。

それで行くしかない。


十年前に研究授業の時に緊張しすぎて使うプリント職員室に忘れて授業したけれど何とかごまかせたから今回も行けるはず。

あれ、いつの間にかシャツも脱がされてブラのホック外そうとしてない?さすがにヤバいでしょ、恥ずかしすぎて逃げ出したい。

でも付き合っていく上で今逃げてもいつかはしなきゃいけないんだから、今我慢した方がいい。今までもそうやって生きてきたんだからそうするべきだ。

自分の生き方まで振り返り始めたその時だった。

玄関が乱暴に開く音がして「兄ちゃんの靴だ!来てるの?やった!」という馬鹿でかい声が聞こえた。

二人で目を合わせ玄関を見た。その一秒後引き戸が勢い良く開いた。

どうしてあいつは今日に限ってチャイムを鳴らさなかったんだろう。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み