第104話 初めて過ごした朝

文字数 697文字

「床で寝たら風邪ひいちゃうよ」と起こしたが彼は起きない。

仕方がないので自分の掛け布団を彼に被せた。これで寒くはないだろう。

でもそうしたら私が寒い。ふと気持ち良さそうに寝ている彼を見ると魔がさした。

彼の体温を感じながら寝たら気持ちいいだろう、でもバレたら絶対怒られるし、そのまま勢いにまかせて関係をもってしまうかもしれない。

「それでもいいや」

私は神経質で色々拗らせている。だから男の人とまともに付き合ったことがない、ましてや男女の関係なんて持ったことがない。

けれど何故だか何があってもいいやと思ってしまった。

同じ布団に入り彼にくっついて目を閉じた。私は好きな男に流されやすい。

十分程してウトウトしてきた頃、「亜紀、こっち来て」と言う声が聞こえて抱きしめられた。

心臓が大きく脈打った、彼の胸に顔を埋める形になって体温がダイレクトに伝わってくる。これからどうなるのだろう。

けれど、どれだけ待ってみてもその後何の動きもない、おそるおそる彼を見てみると彼は気持ちよさそうに寝たままだった。

何だ、期待して損した。

結局、彼の体温が気持ち良く抱きしめられたまま寝てしまった。


朝目が覚めるともう彼は布団からいなくなっている、リビングにもやっぱりいない。もう仕事行ったのだろうか、家を出る時に一緒に出るから起こしてと言ってあったのに。

テーブルの上に鍵とメモが置いてあるのに気がつく

メモには「この鍵で閉めて出て下さい、鍵はそのまま持ってて下さい」と書いてあった。

本当に何もしないで仕事行っちゃったんだ、彼は朝起きてどう思ったのだろうか。






ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み