第175話 師走の夜

文字数 1,130文字

今度こそ寝ようと思って電気を消した。その三分後また煩いイビキが聞こえてきた。

「あーもううるせぇな」
彼がまた布団を被る。「本当に何もかもごめんね」折角彼が忙しい中来てくれたのに、こんなことになって申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

「悪いと思ってるなら、ちょっとこっち来て、せめて一緒に寝よう」「何もしない?」
「少ししかしない」「それどういうこと」
そう笑いながらも彼の布団に潜り込んだ。私もやっぱり一緒に寝たかったのだ。

「クリスマスイブの日は打ち上げあって会えないし、クリスマスの日も早朝からロケ行って深夜の生放送出るから会えないよ」
「大丈夫だよ、私もう35だし一人で過ごす時間も好きだから。冬休みは今まで手を出してなかった三国志を読んでみようと思って」
「渋いな、じゃあ俺も歴史物って全く読んだことないけれど新幹線乗ってる時に読むよ」

智の煩いイビキをバックミュージックに二人で抱き合いながら何気ないことを話していた。きっとこういう瞬間のことを幸せだと言うのだろう。

「亜紀ちょっと自慢の筋肉見せて」
「見せない」
「男に腕相撲で勝ったんだろ?ちょっとだけ見せて」
「だから、智達の友達でさっすんって人がいるんだけど、私と同じ身長でビジュアル系バンドのボーカルみたいな体型してたんだよね、それでちょっと酔っぱらってたから今ならいけると思って」
「今ならいけるって何だよ、その男可哀想だろ?」
「でも、さっすんは私に負けたショックでジムに通い始めて小柄マッチョになったら同じジムに通う彼女できて去年結婚したから恩人って言われてる」

彼は「そうかそうか」と適当な相槌を打ちながらも、二の腕を触ってきたので力一杯力こぶを作ると彼は笑った。
「本当だ、女にしてはあるかも」「でしょ?肉体労働させられてるから」と笑った。

「なぁ、亜紀ちょっとだけ、俺が元気でるように」
そう言って彼は服の下から体を触ってきた、く すぐられているような気分になり「ちょっとやめてよ」と笑った。

何か段々とエスカレートしていっている気がする。「ちょっと」と言うと、彼はいつかの流行語のように「いいじゃないかちょっとぐらい」と言った。「駄目よダメダメ」と答えて二人でふざけていると、いきなり電気をつけられた。隣を見ると智が恨めしそうな顔してこちらを見ている。


「姉ちゃん、兄ちゃん!俺いるんだから少しぐらい我慢してくれよ!」

智にブチギレられ説教され「二人が寝るまで俺寝ないから」と宣言された。

二人で智に謝って違う布団で寝た。一緒に寝たかったのにな。

「智の奴、凄く邪魔」そう思いながらもいつの間にか寝てしまった。こうして師走の夜が更けていった。




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