第298話 同窓会
文字数 1,387文字
春子が嫌そうな顔で私を見た。
「その怪しい男と結婚するの?」
一番痛い事を聞かれた。
「……私は結婚したいし、子供欲しいんだけど、向こうが結婚願望ないからね、子供も好きじゃないし」
場がまた静まり返る。みんなに同情されているのは分かっている、でも何故だか愚痴が止まらない。誰かに聞いて欲しかったのだ。
「最近気がついたんだよ、この歳で結婚願望のない人と付き合っちゃいけない、最初に確認するべきだった」
「……亜紀、それ普通の女は25歳くらいで気がつくやつ」
女性陣がみんな頷いている。
「あぁそう?10年遅れで気づいちゃった、はははっ」
私の乾いた笑いだけが場に響いた。
「ねぇ亜紀別れなよ、まさか好きだからどうなってもいいって付き合い続けるつもり?」
「先生もいるのにこんな話するのあれだけど、私は確かに馬鹿だけどホームラン級の大馬鹿じゃない。ちょうど今年異動になるし、3月までにちゃんと別れようと思ってる、好きなんだけどね」
春子が何故だか先生に同意を求めた。
「それがいいよ、先生もそう思いますよね」
……何故この話題について先生に聞くの
先生は困惑しながらもこう言った。
「あー山浦さんがどうしても怪しい男がいいって言うんだったら止めないけれど、やっぱり怪しい男は信用ならないからな」
セイコが私の様子を伺うように尋ねた。
「ねぇ、その怪しい人とどこが良くて付き合ってるの?」
さっきからみんなで怪しい怪しいと言うのが嫌だった、彼はそこまで怪しくない。
「怪しくないって優しいんだって。凄く優しいの!」
また場が静まり返った、優しいは時として危険な言葉だ、怪しさを余計に醸し出してしまったようだ。
「優しいの他はちゃんとあるの?優しいだけなんでしょ?」
「あるって、あのね……習字が上手!凄く上手い」
皆が一斉に笑い出し場が和む。小学校の教員をやっている人は共感してくれた。
「それはわかる!素敵に見える!」「でしょ?」
春子が言った。
「ちょっと待って、習字がうまいって先生もそうだからね、先生はお母さんが書道の有名な先生なんですよね?」
「あぁ、有名かどうかはわからないけどそうだよ」
「ほら、先生みたいに元々の育ちが良くて上手いのと、自由業の怪しい男が趣味でやってんのか知らないけどそれで上手いのは違うから!」
「……いや一緒だって」
私がそう呟くと先生だけは笑った。
坂本君が場の空気を変えようと明るくこう言った。
「そういえば先生のチ、自由人の弟さんお元気ですか?」
そういえば学生は義政先生のチンピラの弟さんと呼んでいたけれど、先生の前では気を使い自由人の弟さんと言っていた。
それをすっかり忘れ、この間義政先生の前でチンピラと連呼してしまった。
「チンピラでいいよ、元気だよ。この間久しぶりに会ったな」
「まだ自由なことしてらっしゃるですか?」
「まだ自分の好きなことしてるよ」
あの時私と一緒にいた春子が「弟さんあのド派手な女の人とご結婚されたんですか?」と聞いた。
その話も地味にイラつく。何であの女の人とは結婚して良かったのだろうと思うからだ。
「だいぶ前に別れたよ、今はちゃんとした人と付き合ってるから、弟の視点からみるとその人と結婚してくれた方がいいと思ってるよ」
先生、そんなこと言ってくれてありがとう。
涙出そう。
そして、ラビッツの丸山さん、私の怪しい彼氏、先生のチンピラの弟、ここまで全部同じ人の話であるこの奇跡に感動だ。
「その怪しい男と結婚するの?」
一番痛い事を聞かれた。
「……私は結婚したいし、子供欲しいんだけど、向こうが結婚願望ないからね、子供も好きじゃないし」
場がまた静まり返る。みんなに同情されているのは分かっている、でも何故だか愚痴が止まらない。誰かに聞いて欲しかったのだ。
「最近気がついたんだよ、この歳で結婚願望のない人と付き合っちゃいけない、最初に確認するべきだった」
「……亜紀、それ普通の女は25歳くらいで気がつくやつ」
女性陣がみんな頷いている。
「あぁそう?10年遅れで気づいちゃった、はははっ」
私の乾いた笑いだけが場に響いた。
「ねぇ亜紀別れなよ、まさか好きだからどうなってもいいって付き合い続けるつもり?」
「先生もいるのにこんな話するのあれだけど、私は確かに馬鹿だけどホームラン級の大馬鹿じゃない。ちょうど今年異動になるし、3月までにちゃんと別れようと思ってる、好きなんだけどね」
春子が何故だか先生に同意を求めた。
「それがいいよ、先生もそう思いますよね」
……何故この話題について先生に聞くの
先生は困惑しながらもこう言った。
「あー山浦さんがどうしても怪しい男がいいって言うんだったら止めないけれど、やっぱり怪しい男は信用ならないからな」
セイコが私の様子を伺うように尋ねた。
「ねぇ、その怪しい人とどこが良くて付き合ってるの?」
さっきからみんなで怪しい怪しいと言うのが嫌だった、彼はそこまで怪しくない。
「怪しくないって優しいんだって。凄く優しいの!」
また場が静まり返った、優しいは時として危険な言葉だ、怪しさを余計に醸し出してしまったようだ。
「優しいの他はちゃんとあるの?優しいだけなんでしょ?」
「あるって、あのね……習字が上手!凄く上手い」
皆が一斉に笑い出し場が和む。小学校の教員をやっている人は共感してくれた。
「それはわかる!素敵に見える!」「でしょ?」
春子が言った。
「ちょっと待って、習字がうまいって先生もそうだからね、先生はお母さんが書道の有名な先生なんですよね?」
「あぁ、有名かどうかはわからないけどそうだよ」
「ほら、先生みたいに元々の育ちが良くて上手いのと、自由業の怪しい男が趣味でやってんのか知らないけどそれで上手いのは違うから!」
「……いや一緒だって」
私がそう呟くと先生だけは笑った。
坂本君が場の空気を変えようと明るくこう言った。
「そういえば先生のチ、自由人の弟さんお元気ですか?」
そういえば学生は義政先生のチンピラの弟さんと呼んでいたけれど、先生の前では気を使い自由人の弟さんと言っていた。
それをすっかり忘れ、この間義政先生の前でチンピラと連呼してしまった。
「チンピラでいいよ、元気だよ。この間久しぶりに会ったな」
「まだ自由なことしてらっしゃるですか?」
「まだ自分の好きなことしてるよ」
あの時私と一緒にいた春子が「弟さんあのド派手な女の人とご結婚されたんですか?」と聞いた。
その話も地味にイラつく。何であの女の人とは結婚して良かったのだろうと思うからだ。
「だいぶ前に別れたよ、今はちゃんとした人と付き合ってるから、弟の視点からみるとその人と結婚してくれた方がいいと思ってるよ」
先生、そんなこと言ってくれてありがとう。
涙出そう。
そして、ラビッツの丸山さん、私の怪しい彼氏、先生のチンピラの弟、ここまで全部同じ人の話であるこの奇跡に感動だ。