第67話 武道館の後で
文字数 1,456文字
まだ10月だというのに、今夜は冷え込んで気温が一桁まで下がってしまった。私が住んでいる標高700メートルのこの街は、街道のコスモスも花が枯れ、一足早く秋の終わりが見えてきた。
クラスの子供からお土産で草津温泉の湯の花を貰ったので温泉気分でお風呂に浸かりながら、本を一冊読み終えた。それでもまだ入っていたかったのでお風呂の蓋を机代わりにスマホでネットニュースを見ていた。
その中で一つの記事に目が止まる。
「ラビッツ丸山謎の怪我」と言う見出しで、丸山さんの顔に殴られたようなアザがあり、憶測を呼んでいる。
といった内容だったけれどコメント欄が酷かった。
「盛り場で喧嘩したんだ」とか「ヤクザと女絡みで喧嘩した」とな「女に殴られた」とか散々な内容で埋め尽くされていた。
大きな溜息をつくと、スマホを窓際に置いた。
その時だった、着信音が聞こえたのでスマホをまた手に取るとやっぱり丸山さんからだった。
「もしもし、なんかネットニュースに変な記事が出てて、私がダムなんて行こうって誘ったばっかりに何か本当にごめんなさい」
「いいよ、だって俺達が行かなかったらあの女の子酷い目にあってただろ?」
「そうなんだけど、丸山さんが色々言われてて」
そう言うと彼は笑った。
「大丈夫だって、すぐにネットの人たちも興味なくなるよ、俺を知ってる人たちは絶対喧嘩なんかしないってわかってるから、俺は亜紀ちゃんが俺と付き合うって言ってくれたから、それだけで良かったなって」
別に付き合うとは、はっきり言ってないんだけどなと心の中で思いつつ話を続けた。
「あれから一週間と三日経ちますけれど、怪我は良くなりましたか?」
「亜紀ちゃんそれ毎日聞いてくるね」
「だって心配で」
「そんなに心配してくれて嬉しいよ。だいぶ消えてきた。マネージャーに無理やり連れてかれた医者にも、俺おっさんの割には治るの早いって言われたわ」
「良かったです、少しほっとしました」
「亜紀ちゃん今お風呂入ってる?」「バレました?今日子供から草津温泉の湯の花貰ったんです。温泉入ってる気分で気持ちいいですよ」
「ちょっと風呂のお湯叩いて音出して」
意味も分からず彼に言われた通りにすると
「いいなぁ、次はちょっと立ち上がってみて」
「私立ち上がったら何か楽しいんですか?」
「凄く楽しい、今そこにいる気分で想像してるから、ちょっと立ち上がって」
「そんな事言われて立ち上がる人いないでしょ」
「駄目?駄目なら1分だけでいいからビデオ通話しよう」「するわけないでしょ?」
「じゃあ10秒だけ」「無理です」
「静止画でいいから自撮りして」「嫌です」
すると「丸山さんそろそろ」というマネージャーさんらしき男の人の声が電話越しに聞こえてきた。
「ちょっと待って、今誰か周りにいるんですか?」
「いないよ。今楽屋だから、北澤とマネージャーしかいない」
私はありったけの声で叫んだ。
「人がいるのにこんな会話して、頭おかしいんじゃないですか!」
すると笑い声が聞こえ「だいぶおかしいよな」「そうですね」と北澤さんとマネージャーさんと思われる会話が遠くに聞こえた。
丸山さんは「いいじゃん、付き合ってるんだから別に。じゃあ今から収録だから切るね」と言って電話は切れた。
もしかしなくても丸山さんって神経質で拗らせてて、おまけに凄く変な人なのかもしれない。
じゃなきゃ私と付き合いたいと思わないよなと妙に納得した。
クラスの子供からお土産で草津温泉の湯の花を貰ったので温泉気分でお風呂に浸かりながら、本を一冊読み終えた。それでもまだ入っていたかったのでお風呂の蓋を机代わりにスマホでネットニュースを見ていた。
その中で一つの記事に目が止まる。
「ラビッツ丸山謎の怪我」と言う見出しで、丸山さんの顔に殴られたようなアザがあり、憶測を呼んでいる。
といった内容だったけれどコメント欄が酷かった。
「盛り場で喧嘩したんだ」とか「ヤクザと女絡みで喧嘩した」とな「女に殴られた」とか散々な内容で埋め尽くされていた。
大きな溜息をつくと、スマホを窓際に置いた。
その時だった、着信音が聞こえたのでスマホをまた手に取るとやっぱり丸山さんからだった。
「もしもし、なんかネットニュースに変な記事が出てて、私がダムなんて行こうって誘ったばっかりに何か本当にごめんなさい」
「いいよ、だって俺達が行かなかったらあの女の子酷い目にあってただろ?」
「そうなんだけど、丸山さんが色々言われてて」
そう言うと彼は笑った。
「大丈夫だって、すぐにネットの人たちも興味なくなるよ、俺を知ってる人たちは絶対喧嘩なんかしないってわかってるから、俺は亜紀ちゃんが俺と付き合うって言ってくれたから、それだけで良かったなって」
別に付き合うとは、はっきり言ってないんだけどなと心の中で思いつつ話を続けた。
「あれから一週間と三日経ちますけれど、怪我は良くなりましたか?」
「亜紀ちゃんそれ毎日聞いてくるね」
「だって心配で」
「そんなに心配してくれて嬉しいよ。だいぶ消えてきた。マネージャーに無理やり連れてかれた医者にも、俺おっさんの割には治るの早いって言われたわ」
「良かったです、少しほっとしました」
「亜紀ちゃん今お風呂入ってる?」「バレました?今日子供から草津温泉の湯の花貰ったんです。温泉入ってる気分で気持ちいいですよ」
「ちょっと風呂のお湯叩いて音出して」
意味も分からず彼に言われた通りにすると
「いいなぁ、次はちょっと立ち上がってみて」
「私立ち上がったら何か楽しいんですか?」
「凄く楽しい、今そこにいる気分で想像してるから、ちょっと立ち上がって」
「そんな事言われて立ち上がる人いないでしょ」
「駄目?駄目なら1分だけでいいからビデオ通話しよう」「するわけないでしょ?」
「じゃあ10秒だけ」「無理です」
「静止画でいいから自撮りして」「嫌です」
すると「丸山さんそろそろ」というマネージャーさんらしき男の人の声が電話越しに聞こえてきた。
「ちょっと待って、今誰か周りにいるんですか?」
「いないよ。今楽屋だから、北澤とマネージャーしかいない」
私はありったけの声で叫んだ。
「人がいるのにこんな会話して、頭おかしいんじゃないですか!」
すると笑い声が聞こえ「だいぶおかしいよな」「そうですね」と北澤さんとマネージャーさんと思われる会話が遠くに聞こえた。
丸山さんは「いいじゃん、付き合ってるんだから別に。じゃあ今から収録だから切るね」と言って電話は切れた。
もしかしなくても丸山さんって神経質で拗らせてて、おまけに凄く変な人なのかもしれない。
じゃなきゃ私と付き合いたいと思わないよなと妙に納得した。