第267話 追撃される
文字数 1,418文字
彼には正直に話さないといけない、情けなさすぎて泣きたい、お父さんは何で死後もお金を集りにくるような女の為に全てを投げ打ったのだろうか。
とにかく覚悟を決めて彼を見た。
「NPO法人の人がお父さんと一緒に逃げた女にお父さんからの手紙届けに行ったら、お父さんに生前にお金貸してたって言い張って、子供と連絡取りたいって言ってたらしい」
彼は先週換気扇の汚れを掃除していた時と同じ顔をした。
「うわっ、よく小説である展開じゃねぇか。それって真偽はさておいて相続放棄の手続きすればいいんだろ?」
「何の財産も相続してないからね」と力無く頷いた。
「絶対何言われても払うなよ、小説では一円でも払ったらそう言う奴ら地獄の果てまでついてくるぞ」
「大丈夫、絶対払わない。私お金に関してはかなりシビアだから」
空元気を出して力強くそう言い切った。立ちあがろうとしたけれども目眩がしてまた座り込んでしまった。
どうしてお父さんはこうも私を苦しめるのだろう。
彼も私の隣にしゃがんで心配そうに私を見た。
「取り敢えず弁護士か、知り合いなんかいねぇな。ネットで良さそうな人探してみるか」
弁護士さんを探す心配までして貰って涙が出そうだ。そしてお手伝いさんがいる家庭のお坊ちゃんがこんなに家柄が悪い女と付き合ってくれているというこの奇跡。
そりゃあ彼のお母さんは私のこと遠ざけようとするよ。
そしてこの奇跡は何故か弟にも起こっている。
「実はお父さんの残した借金が出てくるかもしれないって美子ちゃんのご両親が心配してて、そうなった場合に美子ちゃんのお父さんのご友人の弁護士事務所で解決してもらう手筈が整っているらしい」
「さすが美子だな、良かったな」
「……うん、その話聞いた時にいくら父さんでもそこまではないでしょう。ちょっと美子ちゃんのご両親失礼だなって心の中でムカついてたけれど、美子ちゃんのご両親が正しかった。もう恥ずかしいよ」
そう項垂れると彼は私の肩を抱いた。
「大丈夫だよ、亜紀は自分のことじゃないから恥じる必要ない。俺は自分で消費者金融に借金したことあるから」
「もう何でそれを思い出させるの?」
「自分より下を見れば元気になるだろう?」
「ならないし!それって総額幾らくらい借りてたの?」
「一千万ぐらいかな」
途方もない金額にまた目眩がする。
「……もう嫌だ!嘘でしょ?何で一人暮らしなのにそこまで?っていうかそんなのポンと返せるって実家どれだけお金持ちなの!」
「実家は上級国民だけど、俺、消費者金融とか借金に詳しいよ、でも姉ちゃんが泣いて止めてくれって言うからテレビでは話せない。面白い話たくさんあるんだけどな」
目の前にいる恋人の過去に怒りで震える。
「今度消費者金融でお金借りたら別れるからね!」
「もう借りねぇよ、ほら元気になった所でやることがある。座ったままでいいから、今から智に電話してこのこと知らせて、終わったらお父さんの兄妹にも相続権が行くことがあるから知らせた方がいい」
過去借金王だったとは思えない彼の冷静な指示に従い、自分の今やらなければならないことを淡々とこなす。
智に電話すると厄介なので美子ちゃんに直接電話すると、本当に全てご実家の方でやってくれるらしい。感謝しかない。
高山のおばちゃんにも電話して親戚に伝えてくれるように、健にも電話しお母さんに伝えてくれるようにそれぞれ頼んだ。
全てを終えてソファで魂が抜けたように座っていると彼が今日は缶チューハイを持ってきて隣に座った。
とにかく覚悟を決めて彼を見た。
「NPO法人の人がお父さんと一緒に逃げた女にお父さんからの手紙届けに行ったら、お父さんに生前にお金貸してたって言い張って、子供と連絡取りたいって言ってたらしい」
彼は先週換気扇の汚れを掃除していた時と同じ顔をした。
「うわっ、よく小説である展開じゃねぇか。それって真偽はさておいて相続放棄の手続きすればいいんだろ?」
「何の財産も相続してないからね」と力無く頷いた。
「絶対何言われても払うなよ、小説では一円でも払ったらそう言う奴ら地獄の果てまでついてくるぞ」
「大丈夫、絶対払わない。私お金に関してはかなりシビアだから」
空元気を出して力強くそう言い切った。立ちあがろうとしたけれども目眩がしてまた座り込んでしまった。
どうしてお父さんはこうも私を苦しめるのだろう。
彼も私の隣にしゃがんで心配そうに私を見た。
「取り敢えず弁護士か、知り合いなんかいねぇな。ネットで良さそうな人探してみるか」
弁護士さんを探す心配までして貰って涙が出そうだ。そしてお手伝いさんがいる家庭のお坊ちゃんがこんなに家柄が悪い女と付き合ってくれているというこの奇跡。
そりゃあ彼のお母さんは私のこと遠ざけようとするよ。
そしてこの奇跡は何故か弟にも起こっている。
「実はお父さんの残した借金が出てくるかもしれないって美子ちゃんのご両親が心配してて、そうなった場合に美子ちゃんのお父さんのご友人の弁護士事務所で解決してもらう手筈が整っているらしい」
「さすが美子だな、良かったな」
「……うん、その話聞いた時にいくら父さんでもそこまではないでしょう。ちょっと美子ちゃんのご両親失礼だなって心の中でムカついてたけれど、美子ちゃんのご両親が正しかった。もう恥ずかしいよ」
そう項垂れると彼は私の肩を抱いた。
「大丈夫だよ、亜紀は自分のことじゃないから恥じる必要ない。俺は自分で消費者金融に借金したことあるから」
「もう何でそれを思い出させるの?」
「自分より下を見れば元気になるだろう?」
「ならないし!それって総額幾らくらい借りてたの?」
「一千万ぐらいかな」
途方もない金額にまた目眩がする。
「……もう嫌だ!嘘でしょ?何で一人暮らしなのにそこまで?っていうかそんなのポンと返せるって実家どれだけお金持ちなの!」
「実家は上級国民だけど、俺、消費者金融とか借金に詳しいよ、でも姉ちゃんが泣いて止めてくれって言うからテレビでは話せない。面白い話たくさんあるんだけどな」
目の前にいる恋人の過去に怒りで震える。
「今度消費者金融でお金借りたら別れるからね!」
「もう借りねぇよ、ほら元気になった所でやることがある。座ったままでいいから、今から智に電話してこのこと知らせて、終わったらお父さんの兄妹にも相続権が行くことがあるから知らせた方がいい」
過去借金王だったとは思えない彼の冷静な指示に従い、自分の今やらなければならないことを淡々とこなす。
智に電話すると厄介なので美子ちゃんに直接電話すると、本当に全てご実家の方でやってくれるらしい。感謝しかない。
高山のおばちゃんにも電話して親戚に伝えてくれるように、健にも電話しお母さんに伝えてくれるようにそれぞれ頼んだ。
全てを終えてソファで魂が抜けたように座っていると彼が今日は缶チューハイを持ってきて隣に座った。