第254話 深夜の訪問者
文字数 1,311文字
塚田君とはどこかでまた会えたらいいなとは思っていたけれど、普段は完全に忘れてた。女というか私は昔の恋なんかそこまで気にしちゃいない。
先生はこの嫉妬深い頭がおかしい人をおもちゃにし出した、小さい頃はこうやって遊んでいたのだろう。
「重明怒りすぎだよ、思い出した、卒業式後の飲み会の最後に塚田君「同じ学校で働くことがあったらその時は付き合ってくれ」って言ってたよね」
……先生、そんな事まで思い出すの止めて
「あれは塚田君酔っ払ってたから、同じ学校って何?そこはまた会ったらでいいでしょってツッコミいれる所満載の酔っ払いの戯言」
私がそう言うと彼は鼻で笑った。
「どうせその塚田って男が近づいてきたのはいいものの事情を知って支えきれないって判断したんだろうな、でも女々しくずっとグズグスしてたんだろ?」
頭がキレる彼の推論が当たりすぎていて何にも言い返せない。
「俺はそんな判断しないからな、全力で亜紀のこと愛するし支える」
思わず吹き出した。
「いや、チンピラさんは一番最初に逃げるタイプじゃん」
「逃げない」
「私が18の頃、健はまだいいけれど智8歳で今よりずっとお馬鹿なんだよ。モンシロチョウの幼虫捕まえて、今日は一緒に布団で寝るんだってきかなくて、結局潰しちゃうような馬鹿なんだよ。耐えられるの?」
彼はぐぬぬと顔を顰めている。でもひょっとしてこの人だったら本当に逃げなかったかもしれない、情深い人だから。そんな事は実際なってみないとわからないけれど。
「ねぇ本当に耐えられるの?」
彼を揶揄うつもりでそう言うと
「ヤメロ!ゾワゾワって来ただろ!」
彼は自分の背中を必死で掻いたので指をさして笑った。
私達の様子を見ながら先生は言った。
「重明はよく山浦さんと付き合えたなって、俺はそっちにびっくりしてる。重明のどこが良かったの?」
「それ俺も聞きたいな、彼氏が有名人だって自慢してないというかむしろ隠してるし、何か買おうかって聞くと要らないって言うし」
先生は弟に対しては手厳しい。
「じゃあどこが良くて山浦さんはこんな不良債権と付き合ってるの?」
しげちゃんは実のお兄さんの手厳しい言葉を渋い顔で言い直した。
「不良債権じゃなくて元不良債権だ」
「どこがかって言われると、自分でもよくわからないんですけど……頭おかしいこと言ってくるけれど、重明さんって優しいんですよ、凄く優しいんです。凄く大切にしてくれてるし、この人と付き合ってて幸せだなって思うんです」
「実の兄の前でそんな恥ずかしいこと言うな」と彼はそっぽを向いてしまった。
「そんなに惚気られると俺まで恥ずかしくなってきたよ、邪魔者はもう帰るよ。皿洗いは元不良債権にやらせて」そう言って先生は立ち上がった。
「おう、今から熱い夜を過ごすから早く帰れ」「また何言ってんの!」そう言ったけれど、彼はどこふく風だった。
玄関まで見送ると「重明、そんなに山浦さんのこと好きなんだったら早く結婚しろよ、考えないんだったら今すぐに別れろ」
「あーもーうるさいな。いつも正論モンスターだな」彼がそう言うと「じゃあ帰るよ」そう言ってドアが閉まった。
先生が去り際に残した一言が重すぎてしばらく何故だかお互いに一言も喋りださなかった。
先生はこの嫉妬深い頭がおかしい人をおもちゃにし出した、小さい頃はこうやって遊んでいたのだろう。
「重明怒りすぎだよ、思い出した、卒業式後の飲み会の最後に塚田君「同じ学校で働くことがあったらその時は付き合ってくれ」って言ってたよね」
……先生、そんな事まで思い出すの止めて
「あれは塚田君酔っ払ってたから、同じ学校って何?そこはまた会ったらでいいでしょってツッコミいれる所満載の酔っ払いの戯言」
私がそう言うと彼は鼻で笑った。
「どうせその塚田って男が近づいてきたのはいいものの事情を知って支えきれないって判断したんだろうな、でも女々しくずっとグズグスしてたんだろ?」
頭がキレる彼の推論が当たりすぎていて何にも言い返せない。
「俺はそんな判断しないからな、全力で亜紀のこと愛するし支える」
思わず吹き出した。
「いや、チンピラさんは一番最初に逃げるタイプじゃん」
「逃げない」
「私が18の頃、健はまだいいけれど智8歳で今よりずっとお馬鹿なんだよ。モンシロチョウの幼虫捕まえて、今日は一緒に布団で寝るんだってきかなくて、結局潰しちゃうような馬鹿なんだよ。耐えられるの?」
彼はぐぬぬと顔を顰めている。でもひょっとしてこの人だったら本当に逃げなかったかもしれない、情深い人だから。そんな事は実際なってみないとわからないけれど。
「ねぇ本当に耐えられるの?」
彼を揶揄うつもりでそう言うと
「ヤメロ!ゾワゾワって来ただろ!」
彼は自分の背中を必死で掻いたので指をさして笑った。
私達の様子を見ながら先生は言った。
「重明はよく山浦さんと付き合えたなって、俺はそっちにびっくりしてる。重明のどこが良かったの?」
「それ俺も聞きたいな、彼氏が有名人だって自慢してないというかむしろ隠してるし、何か買おうかって聞くと要らないって言うし」
先生は弟に対しては手厳しい。
「じゃあどこが良くて山浦さんはこんな不良債権と付き合ってるの?」
しげちゃんは実のお兄さんの手厳しい言葉を渋い顔で言い直した。
「不良債権じゃなくて元不良債権だ」
「どこがかって言われると、自分でもよくわからないんですけど……頭おかしいこと言ってくるけれど、重明さんって優しいんですよ、凄く優しいんです。凄く大切にしてくれてるし、この人と付き合ってて幸せだなって思うんです」
「実の兄の前でそんな恥ずかしいこと言うな」と彼はそっぽを向いてしまった。
「そんなに惚気られると俺まで恥ずかしくなってきたよ、邪魔者はもう帰るよ。皿洗いは元不良債権にやらせて」そう言って先生は立ち上がった。
「おう、今から熱い夜を過ごすから早く帰れ」「また何言ってんの!」そう言ったけれど、彼はどこふく風だった。
玄関まで見送ると「重明、そんなに山浦さんのこと好きなんだったら早く結婚しろよ、考えないんだったら今すぐに別れろ」
「あーもーうるさいな。いつも正論モンスターだな」彼がそう言うと「じゃあ帰るよ」そう言ってドアが閉まった。
先生が去り際に残した一言が重すぎてしばらく何故だかお互いに一言も喋りださなかった。