第204話 再会は突然に

文字数 1,434文字

「何にせろ俺は本当に丸山さんに感謝してるよ。意外に凄く亜紀のこと大切にしてくれてるし」
「何にせろ意外とちゃんと付き合ってくれてるよねって何で健がそんなこと知ってんのよ、私健に丸山さんの話しないじゃん」

健はニヤリと笑った、嫌な予感がする。

「丸山さん、よくラジオで亜紀の話してるよ、稽古日曜だから、終わりに必ず稽古場であのラジオ流れてんだよね」
「嫌な予感、何話してんの?どうせ私聞けないと思って調子こいてんでしょ?」

「なんか風俗行ってたの週刊誌にバラされて、最終の新幹線乗って謝りに行ったらクソ怒られた話とか」
「あー最悪だ。どうせ怒られて興奮したとか言ってたんでしょ?」

「言ってた、会話とかリアルに再現してて、みんな笑って聞いてたけど、俺亜紀の声で再現されて凄く恥ずかしかったよ。どんな事したかとか何歳から行ってたとか何で追い詰めて詳しく聞く必要があるんだよ」

これは恥ずかし過ぎる、何で弟というかラジオを聞いている人たち全員にあの件を知られなきゃいけないんだろう。
大きな息を一つ吐いたけれど東京では息は白くはならない。

「いや何か腹立ってきて全部聞いたら腹立たないかと思ったんだけど、余計ムカついた」
「当たり前だろ、素直に全部言う丸山さんも頭可笑しいけど」
「最悪だよ本当に、ネタに使われまくってさ。他にもヤバいこと言ってた?」

「ヤバイっていうか、毎週何かしら亜紀のこと言ってるから、俺気まずい。しかも何故か北澤さん毎回、亜紀ちゃんがって名前出して、丸山さんが名前言うなってギャグみたいになってるから」
「はははっ、それぐらいならまだいい」
私は乾いた笑いを発した。

電車は東京駅に着いたようだ、四人で京浜東北線のホームから階段を降りて人が沢山行き交う通路に出た。

すると智が「先週車に乗ってたら、兄ちゃんのラジオ始まって兄ちゃん過激なこと言ってたよ」と大声で叫んだ。

「馬鹿!それは言うな!」と健が叫んだ。
「よく知らないけど、言っていいことなの?」と美子ちゃんが心配している。

健の慌て具合からして凄く嫌な予感がする。
「何て言ってたの?」私が笑顔で聞くと、智は満面の笑みで話始めた。

「彼女には、イケメンな弟と馬鹿な弟がいて、イケメンな方は東京にいて、馬鹿な方が高崎にいて車で一時間かけてアポ無しで彼女の家によく来るって言ってて、あっ俺のことだって思って」
「それで?」
笑顔でそう聞くと智は更に意気揚々と話し始めた。

「この間彼女の家に夜行って初めてやろうと思って彼女の服脱がしてたら、馬鹿な方が勝手に玄関のドア開けて入ってきたんだよ。俺の靴見て引き返すんじゃなくて寧ろ「兄ちゃん来てたの」って意気揚々と中まで入ってきた。時間帯考えろ!夜十時って絶対にやってる時間帯だろ!しかもそいつ朝まで一緒にいたからな。って言ってて、それ聞いて俺悪いことしたなって思ったんだよね」

その場で気を失うかと思った。この話だけは誰にも言ってないとネタにしていないと信じていたからだ。

更に智の追撃が続く。
「あいつが後10秒遅く来てたら、乳首みれたのにって、早く乳首見せろって叫んでたよ」

周りの人が振り返り私たちを見ている。この話が聞こえてどんな奴かと確認しているようだ。

美子ちゃんが「そんな事大声で言っちゃ駄目でしょ!」と怒り、智はようやくデリカシーにかけ過ぎる事を言ったと気付いたようだった。

健は気まずそうに私を慰める言葉を探している。

弟というかラジオを聞いていた人達全員にあんなことまで知られて私は灰になった。

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