第207話 再会は突然に

文字数 1,065文字

「健の母親と会ってきたんだろ?どうだった?」
「旦那さんも優しそうな人で健に妹が二人いるんだって、だから今度叔母さんと叔父さんがやってるレストランに健行ってみるって」

「良かったな」
「うん、でも改めて見ると叔母さんって私にそっくりなんだよね。父方の爺ちゃんの血が強くでちゃってる」
「見てみたい、叔母さん何歳?」
「52歳だって言ってた」
「俺余裕で抱けるわ」

また青筋ができたのがわかったようで素直に「調子に乗ってすみませんでした」と謝罪した。

「俺、亜紀に似てるセクシー女優見つけたんだよ」
「はい?」
「すぐ動画ダウンロードしたんだけど、途中で見るのやめたんだよ」
「何で?発売されてる全部の作品みたいって言ってたじゃん」
「自分で脱いでるシーンまでは良かったんだけど、男優に何かされてるのみたら腹立ってきてさ、亜紀に色々していいの俺だけだから」
この直ぐ後にだから来週色々させろと言われる気がしたので進路妨害した。
「我慢してみなきゃAVマイスター名乗れないよ」
「何でその称号を知ってんだよ。無理だ。あれだけは無理」
「見れるよ大丈夫。自分を信じて」
「何で俺がこんな事励まされなきゃいけないんだよ」
その時新幹線がもうすぐ到着するというアナウンスが入った。

「もうすぐ最終の新幹線来るんだね、早いね」「本当は泊まって欲しいけど」
「明日はまだ冬休みだけど朝から役場の人と雪祭りの打ち合わせしなきゃいけないんだよ。来週また会えるから、温泉行くんでしょ?」と彼の目を見た。けれど彼はどこか不機嫌そうだった。

「役場の人と打ち合わせってあの男と?」
「斉藤くんのこと?流石に向こうも違う人寄越してくると思うよ。また不倫がーって根も葉もないこと村人に噂されるし」
「また奥さんがハイヒールでコツコツって足音たてながら亜紀に嫌がらせしに来るぞ」
二人で目を合わせて笑った。

「あと一週間頑張って働くよ。今度は絶対に誰にも言わないから、俺の好きなようにさせて」

結局それ言うよね。
何故だか彼が私の目をじっとみつめて言った。彼の真剣さに戸惑いを覚えて「好きなようにって何?どんな事?」と言いながら席を立った。

「わかってる癖に聞くなよ」と彼は私の背後で笑っていたけれどそれ以上何も言えなかった。


新幹線に乗り込むと直ぐに走り出して窓越しに彼に手を振っていたのが一瞬で見えなくなった。

人もまばらな車内で来週のことを考えた。
ずっと考える事を放棄していたけれど、二人で温泉に泊まるって今度こそそういうことなんだよね。
智も入って来ないし、お酒も飲みすぎないだろうし。
……どうしたらいいんだろう。













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