第98話 初めて過ごした朝
文字数 1,994文字
「ちょっと寒くなってきたから中に入ろう」そう言うと彼は私の手を引いて中に入った。二人でソファに座りこの間と同じようにテレビを見ていた。
二人の距離が1センチも離れていなかったけれど、この間よりも普通に振る舞えていると思う。
高沢さんという芸人さんが彼女にプロポーズするという企画が流れていた。
「こういうのって本物の彼女なの?」
「本物だよ、偽物だと思ってた?」
「だって、こんな事されて怒り出す人とかいないのかな?」
「今のところ聞いたことないけど、女の人はみんなこういうの好きかと思ってた。こういうのやると女からの好感度上がるらしいし」
「あー私はあんまり好きじゃないかな、観てるのもヒーってなっちゃう。たまに人前で愛を叫ぶの好きな人っているでしょ?」
何故か彼は笑って「いるな」と相槌を打った。
「高校生の時にクラスメイトの彼氏がそのタイプで、女子校だったのにお昼にランチルームに進入してきたんですよ。
「ユカ!世界中の誰より愛してる!」って全校生徒いるのに叫んで、クラスメイトは「光一!私も愛してる」叫び返して調子いい子たちが「ヒューヒュー」って囃し立ててました。
その後ろで私みたいな地味な人達が呆気にとられて眺めてたけど。今でも疑問だけど、それ家で2人で愛を叫び合うのじゃダメだったの?なんでわざわざ人前で?」
彼はニヤリと笑いながら答えた。
「いや、人前でってのがいいじゃん。君を愛してることをここにいる全員の前で宣言してやる!みたいな」
その発言を聞いてこの人もかと思った。私は彼を唖然と見つめていた。彼は私のそんな思いを察知したようだ。
「俺人前で何かするの好きだし、目立つの好きだからこういう仕事してるし」と自信満々に言い放った。
「何か今の発言聞いて芸人さんが公開プロポーズしたがるのも納得した。そういうの好きだからテレビに出てるだろうし」
「俺も高校の時付き合ってた彼女にしたことあるわ。問題児だったから、校内放送ジャックして「美咲愛してる!」って叫んだ」
昔の恋人、美咲っていう名前なんだ。彼が本気で好きだった人なのだろう、っていうか今ここで名前言うな!と心の中で彼に思いっきりビンタした。
「それ、彼女さんの方は怒ってませんでした?」
「いいや、そういうの好きな女だったし」
懐かしそうに話す彼を見て少し切ない気持ちになった。
「そうなんですか」
そう相槌を打つと、私が少し悲しそうにしたのを気づいたのか何なのか「よしじゃあ俺が今度テレビに出て愛を叫んでくる、愛してる亜紀って」と言った。
「やめてよ!もう!絶対に私はそういうの好きじゃないから家の中だけにしてよ!」
「じゃあピアノの弾き語りもセットでしてやる」「それ役満!感動ポルノ!」と怒ると彼は爆笑した。
次の瞬間、何故だかまたキスしてきたので驚いて彼の顔を見つめると得意満面だった。
「この間もそうだけど、いきなりしてくるから、ちょっと心臓に悪い」
焦って口がついつい余計な事を喋ると、彼は「じゃあ、今からするって言えばいいの?」と笑みを浮かべた。
「今からすると言われても心臓に悪いから!」と返すと彼は
「じゃあ今から3分後にするって言えばいい?180一緒に数えようか」
「180ってかなり面倒くさい」
「よしっ、じゃあ10秒に短縮しよう。10.9.8.7654321」と言って頬にキスをした。「7より後は適当に言い過ぎでしょ」
「わかった、じゃあ1秒に短縮しよう、1」そう言うとまたキスをした。
「もう滅茶苦茶」
「じゃあどうすればいいの?」
「……理由言って下さい。私が納得できる、キスしなきゃいけない理由言って下さい」と無理難題を押し付けた。暫くはしてこないだろう。少しほっとしたのもつかの間に彼は10秒ほど難しい顔をすると、急に笑顔になった。
「思い出した、まだクイズの商品あげてなかったね」と言うとまたキスをしてきた。
私の感覚は段々と麻痺してきた、キスすることがそんなに特別な事だと思えなくなってきた。
「…クイズの商品?」私がそう言うと「俺の名前当てクイズの商品」と彼が自信たっぷりに言ったけれど、どうにもわからない。
彼が「帽子岳で重明って当てただろ?」と言った瞬間全てを思い出した。
「あーあれ、正解者には熱いキスをあげますって言ってたやつ…まさか本当に貰うことになるとは思ってなかった」
そういうと彼はニヤリと笑って「今日は熱いキスはできないからまた今度ね。じゃあ次の理由を探そうか」と言った。
「もういいって理由探さなくても、されすぎて段々麻痺してきてこれが普通のことのように思えてきたから」
「だろ?挨拶みたいなもんだから」と彼は得意気に言った。
「女慣れしすぎてて怖っ」そう言うと彼はフッと笑った。
二人の距離が1センチも離れていなかったけれど、この間よりも普通に振る舞えていると思う。
高沢さんという芸人さんが彼女にプロポーズするという企画が流れていた。
「こういうのって本物の彼女なの?」
「本物だよ、偽物だと思ってた?」
「だって、こんな事されて怒り出す人とかいないのかな?」
「今のところ聞いたことないけど、女の人はみんなこういうの好きかと思ってた。こういうのやると女からの好感度上がるらしいし」
「あー私はあんまり好きじゃないかな、観てるのもヒーってなっちゃう。たまに人前で愛を叫ぶの好きな人っているでしょ?」
何故か彼は笑って「いるな」と相槌を打った。
「高校生の時にクラスメイトの彼氏がそのタイプで、女子校だったのにお昼にランチルームに進入してきたんですよ。
「ユカ!世界中の誰より愛してる!」って全校生徒いるのに叫んで、クラスメイトは「光一!私も愛してる」叫び返して調子いい子たちが「ヒューヒュー」って囃し立ててました。
その後ろで私みたいな地味な人達が呆気にとられて眺めてたけど。今でも疑問だけど、それ家で2人で愛を叫び合うのじゃダメだったの?なんでわざわざ人前で?」
彼はニヤリと笑いながら答えた。
「いや、人前でってのがいいじゃん。君を愛してることをここにいる全員の前で宣言してやる!みたいな」
その発言を聞いてこの人もかと思った。私は彼を唖然と見つめていた。彼は私のそんな思いを察知したようだ。
「俺人前で何かするの好きだし、目立つの好きだからこういう仕事してるし」と自信満々に言い放った。
「何か今の発言聞いて芸人さんが公開プロポーズしたがるのも納得した。そういうの好きだからテレビに出てるだろうし」
「俺も高校の時付き合ってた彼女にしたことあるわ。問題児だったから、校内放送ジャックして「美咲愛してる!」って叫んだ」
昔の恋人、美咲っていう名前なんだ。彼が本気で好きだった人なのだろう、っていうか今ここで名前言うな!と心の中で彼に思いっきりビンタした。
「それ、彼女さんの方は怒ってませんでした?」
「いいや、そういうの好きな女だったし」
懐かしそうに話す彼を見て少し切ない気持ちになった。
「そうなんですか」
そう相槌を打つと、私が少し悲しそうにしたのを気づいたのか何なのか「よしじゃあ俺が今度テレビに出て愛を叫んでくる、愛してる亜紀って」と言った。
「やめてよ!もう!絶対に私はそういうの好きじゃないから家の中だけにしてよ!」
「じゃあピアノの弾き語りもセットでしてやる」「それ役満!感動ポルノ!」と怒ると彼は爆笑した。
次の瞬間、何故だかまたキスしてきたので驚いて彼の顔を見つめると得意満面だった。
「この間もそうだけど、いきなりしてくるから、ちょっと心臓に悪い」
焦って口がついつい余計な事を喋ると、彼は「じゃあ、今からするって言えばいいの?」と笑みを浮かべた。
「今からすると言われても心臓に悪いから!」と返すと彼は
「じゃあ今から3分後にするって言えばいい?180一緒に数えようか」
「180ってかなり面倒くさい」
「よしっ、じゃあ10秒に短縮しよう。10.9.8.7654321」と言って頬にキスをした。「7より後は適当に言い過ぎでしょ」
「わかった、じゃあ1秒に短縮しよう、1」そう言うとまたキスをした。
「もう滅茶苦茶」
「じゃあどうすればいいの?」
「……理由言って下さい。私が納得できる、キスしなきゃいけない理由言って下さい」と無理難題を押し付けた。暫くはしてこないだろう。少しほっとしたのもつかの間に彼は10秒ほど難しい顔をすると、急に笑顔になった。
「思い出した、まだクイズの商品あげてなかったね」と言うとまたキスをしてきた。
私の感覚は段々と麻痺してきた、キスすることがそんなに特別な事だと思えなくなってきた。
「…クイズの商品?」私がそう言うと「俺の名前当てクイズの商品」と彼が自信たっぷりに言ったけれど、どうにもわからない。
彼が「帽子岳で重明って当てただろ?」と言った瞬間全てを思い出した。
「あーあれ、正解者には熱いキスをあげますって言ってたやつ…まさか本当に貰うことになるとは思ってなかった」
そういうと彼はニヤリと笑って「今日は熱いキスはできないからまた今度ね。じゃあ次の理由を探そうか」と言った。
「もういいって理由探さなくても、されすぎて段々麻痺してきてこれが普通のことのように思えてきたから」
「だろ?挨拶みたいなもんだから」と彼は得意気に言った。
「女慣れしすぎてて怖っ」そう言うと彼はフッと笑った。