第309話 同窓会

文字数 1,108文字

金曜日の夜になっても状況は一つも変わっていない。

どうしたらいいのだろう。

思い切って大学時代の友人である春子にLINEでメッセージを送った。

「実は塚田君から今付き合ってる人と別れて俺と付き合ってくれって言われた」

割とすぐに返信が来た。お子さんはもう寝たのだろう。

「いいじゃん、早く別れなよ。うちらの年齢で結婚してくれない男と付き合うなんて本当に馬鹿だからね」

「そう、それもよくわかってる。これが結婚して子供産める最後のチャンスなのかもしれない」

「わかってるんだったら、別れてきなよ。子供が産まれたら世の中で一番愛しいのは子供になるからね。別れて悲しいのなんて一瞬」

「自分の子供ってやっぱり可愛い?」

「そりゃあね、世界で一番可愛いいよ」

「じゃあ世界で一番好きな人のことなんて綺麗さっぱり忘れられるくらい可愛い?」


「うん勿論。というかそんなに好きなら今付き合ってる人と子供作りたいって言ってみれば?」

「それができれば苦労しない」

「何で話し合いもできないの?そんな一方の我慢で成り立ってるような関係なんか遅かれ早かれ壊れるから」

「そうだよね、それに私の中の妙な正義感が誰かと付き合ってるときに、他の誰かと付き合う算段をたてるなんてあり得ないってずっと攻めてくる」

「未来のない男とずるずる付き合うから悪い。こんなチャンス潰しちゃって、バカだね。とにかく東京在住の42歳自由業の怪しい男とちゃんと話し合えば?」

春子の言葉が胸に染みる。

私達の関係は私の一方的な我慢で成り立っている、そういう関係をズルズル続けているからこうなるんだ。

春子にお礼を言ってベッドに寝転がり目を閉じた。

ベッドに寝転んだままぼーっと天井を見つめていた。

自分のするべき事か見えてきた、私達は無理してこの関係を続けている。彼に話をしてみよう、もう暫くしたら電話をかける。電話の方が言いやすいし。

それに今はこの人とのことにケリをつけても、自分の気持ちも整理できてないのに塚田君とは付き合えない。

これで自分の正論モンスターも納得するだろう。

目を閉じるとバラエティ番組の騒がしさが耳につく。そのまま段々眠くなって夢の世界に入ってく。

遠くで誰かに呼ばれた気がする。「アキ」「アキ、風邪ひくよ」

薄ら目を開けると重ちゃんがいる気がする。ついつい癖でそのまま抱きついてキスをした。ふと我にかえり重ちゃんを突き放した。

「何でいるの?」「また寝ぼけてエロいキスされちゃった。ラッキー」

呑気な顔を見て涙が頬を伝う。

「今週は会いたくないって言ったのに」
「何?どうしたの?寝ぼけてるの?もう金曜だから今週は終わっただろ?」

彼はいつものように無茶苦茶な自分理論を自信たっぷりに主張した。
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