第96話 初めて過ごした朝
文字数 1,374文字
「あの二人が専門学校卒業すると同時に私も今の学校に転勤になったんですよ。よりにも寄ってこんな群馬の外れの山奥に?って最初愕然としました。おまけに学校に紹介された住む所長野県なんだって。でもちょうどいい機会なので二人にもアパート借りさせて自立させました。
これが全てかな、他は何にもないです。三年前に健がスカウトされて東京行ったぐらいで、ここ五年間は村人の目が怖くてお洒落もできないで、本当に地味にひっそりと暮らしてました」
「……俺は派手な服装の女が好きなんだけど、亜紀ちゃんの普段着てる服の地味な感じが最近癖になってきた。脱がさずにしたら余計エロさが増すなって思うんだよね」
丸山さんはわざとこういうことを言っている、私を傷つけないように何を話そうか言葉を選んでいるのだろう。
「何言ってるの」と私も彼に合わせて笑った。
「アパートに三人で暮らしてた時って大変じゃないの?」
「私の部屋と智と健の部屋とリビングって感じで使ってたから、そんなには……でもあの人達の部屋入ると、裸の女の人のポスターは大切に飾ってあるし、裸の女の人の本とかDVDとか、とにかく裸の女の人だらけなんですよ、それが嫌だったかな」
彼は「しゃあねぇな、若い男だからな」と笑った。
「しかもあの人達の友達もロクでもなくて、いいブツ手に入ったんだよって、レンタルしたやつ両手に抱えて家遊びに来てたんですよ。よくわかんない気使われて、亜紀さんも見る?って一本手渡されたりとか」
「それ見たの?」
「見てないから!」
「じゃあAV見たことある?」
流石にそれは見たことがない、というか深夜番組じゃないんだから、そんな事私に聞かないで欲しい。焦ってまた早口になった。
「ないから!それで一回不眠症になったんだよね。リビングにしかテレビない時、あの人達夜中にみようとするから、全部音声が聞こえてくるの。女の人の声が響いて眠れなくなってだからすぐに小さいテレビとイヤホン買ってあげました」
彼は「男ってそうだよね」と相槌をうつと
「不眠症になるってどんな声聞こえて来たの?」と聞いて来た。
「どんな声って、だから」「ちょっとやってみて」私は当時のあの声を思い出して、一瞬真似しようかと思ったけれどすぐに気がついた。
「……やる訳ないでしょ?」
「後ちょっとだったのに」と彼は目を閉じた。
「俺の妄想では亜紀ちゃん喘ぎまくってるから、次はこうしたらどんな声出るかなって、毎晩寝る前に考えてる」
あまりに馬鹿馬鹿しくて笑ってしまった。
「他に考えることないの?何なのその妄想力」
また何も言わない時間が過ぎていく、何となく東京タワーを眺めていると彼が口を開いた。
「亜紀ちゃんは、さっきの話を人にするの嫌なの?」
「そりゃあ嫌でしょ、凄いねとか頑張ったねとか偉いなとか、尊敬するとか、可哀想だねとか言われるから何かムカつくじゃないですか?何で上から目線?みたいな」
「じゃあ凄いね頑張ったね偉いな尊敬する可哀想」
彼の子供みたいな言い回しに思わず笑ってしまった。
「何月何日何時何分地球が何回周った時みたいな言い方止めて」
笑いながら言い終わるか否やで丸山さんに抱きしめられた。彼はそれ以上何にも言わなかったから、その優しさが身に染みた。
これが全てかな、他は何にもないです。三年前に健がスカウトされて東京行ったぐらいで、ここ五年間は村人の目が怖くてお洒落もできないで、本当に地味にひっそりと暮らしてました」
「……俺は派手な服装の女が好きなんだけど、亜紀ちゃんの普段着てる服の地味な感じが最近癖になってきた。脱がさずにしたら余計エロさが増すなって思うんだよね」
丸山さんはわざとこういうことを言っている、私を傷つけないように何を話そうか言葉を選んでいるのだろう。
「何言ってるの」と私も彼に合わせて笑った。
「アパートに三人で暮らしてた時って大変じゃないの?」
「私の部屋と智と健の部屋とリビングって感じで使ってたから、そんなには……でもあの人達の部屋入ると、裸の女の人のポスターは大切に飾ってあるし、裸の女の人の本とかDVDとか、とにかく裸の女の人だらけなんですよ、それが嫌だったかな」
彼は「しゃあねぇな、若い男だからな」と笑った。
「しかもあの人達の友達もロクでもなくて、いいブツ手に入ったんだよって、レンタルしたやつ両手に抱えて家遊びに来てたんですよ。よくわかんない気使われて、亜紀さんも見る?って一本手渡されたりとか」
「それ見たの?」
「見てないから!」
「じゃあAV見たことある?」
流石にそれは見たことがない、というか深夜番組じゃないんだから、そんな事私に聞かないで欲しい。焦ってまた早口になった。
「ないから!それで一回不眠症になったんだよね。リビングにしかテレビない時、あの人達夜中にみようとするから、全部音声が聞こえてくるの。女の人の声が響いて眠れなくなってだからすぐに小さいテレビとイヤホン買ってあげました」
彼は「男ってそうだよね」と相槌をうつと
「不眠症になるってどんな声聞こえて来たの?」と聞いて来た。
「どんな声って、だから」「ちょっとやってみて」私は当時のあの声を思い出して、一瞬真似しようかと思ったけれどすぐに気がついた。
「……やる訳ないでしょ?」
「後ちょっとだったのに」と彼は目を閉じた。
「俺の妄想では亜紀ちゃん喘ぎまくってるから、次はこうしたらどんな声出るかなって、毎晩寝る前に考えてる」
あまりに馬鹿馬鹿しくて笑ってしまった。
「他に考えることないの?何なのその妄想力」
また何も言わない時間が過ぎていく、何となく東京タワーを眺めていると彼が口を開いた。
「亜紀ちゃんは、さっきの話を人にするの嫌なの?」
「そりゃあ嫌でしょ、凄いねとか頑張ったねとか偉いなとか、尊敬するとか、可哀想だねとか言われるから何かムカつくじゃないですか?何で上から目線?みたいな」
「じゃあ凄いね頑張ったね偉いな尊敬する可哀想」
彼の子供みたいな言い回しに思わず笑ってしまった。
「何月何日何時何分地球が何回周った時みたいな言い方止めて」
笑いながら言い終わるか否やで丸山さんに抱きしめられた。彼はそれ以上何にも言わなかったから、その優しさが身に染みた。