第64話ちゃんとした場所
文字数 1,434文字
そう言うと何故だか彼が得意気に声を張った。
「亜紀ちゃん、俺テレビで見せる姿の何倍も神経質で拗らせてるから、俺の勝ちだ」
「じゃあ具体的に私に勝ってるなって所教えてください」そう言って頬を緩めた。
「亜紀ちゃんの言ってること共感できるよ。人のこと滅多に好きになれないし、適当に付き合ってる女と一緒にいても二時間が限度だから。
どうしても泊まりでどこか行きたいって言われて連れてったら、他人がいると眠れないし疲れるし翌日げっそりして会話もしたくないから」
そう言って彼は本当にやつれた表情になった。だったら行かなきゃいいのにと言う言葉を飲み込んだ。彼なりに一応付き合っている女の人の希望は叶えようと思っていたのだろう。
そして、どうしても聞きたいことがあって切り出した。
「…丸山さん、一つ聞いてもいいですか?その二時間で身体の関係持ってるんですよね?」
「はははっ……それはご想像にお任せします」
彼は気まずそうに口籠った。
「それ神経質じゃないですよね?私好きじゃない人に体触られたり、半径五十センチ以内に入られるのも嫌ですから」
彼は少し焦りながらこう弁解した。
「男と女は違うから、ね?」
私が怪訝な顔で何にも言い返さないと彼は「男にはとにかく女抱きたいって時があるんだよ!」と突然叫んだ。
あまりの開き直りに思わず笑ってしまった。
「それ男にはじゃなくて、俺にはって話でしょ?凄く正直ですね」
彼が急に真面目な調子で喋り始めた。
「正直ついでに言うけど、日本各地でこういう風に女口説いてんじゃないかって思ってるでしょ?」
一瞬横にいる彼を見ると、鋭い目つきで私を見ていた。
「…まだ3割ぐらいは思ってます」
「今日やたらとスマホ鳴ってるから、女とやり取りしてるんだろうなって疑ってたでしょ?」
「7割ぐらいそう思ってました」
「これは、先輩八割、店の女の営業二割だから」
「…店の女」私がそういって黙り込んだけど、彼は続けた。
「女癖が悪い奴は病気だから、治らないじゃないか?って不安に思ってるんでしょ?」
「それは9割ぐらい思ってます」
「今は物珍しいから寄ってくるけど、そのうち、飽きたら違う女の所行くって勝手に決めつけてんだろ?」
「それは九割九分九厘九毛九糸思ってます」
すると彼は余裕たっぷりにこう言った。
「0.00001 %でも俺のこと信じてくれてんだ。なぁ亜紀ちゃんも俺のこと好きなんでしょ?」
テレビでは美味しそうなスイーツの紹介がされていた。
女の人の甲高い声が車内に響く。
「……割合への変換早いですね、合ってるかな、あー紙とペンないとわかんないや。数学苦手だし」
私はそうやって話を誤魔化した。彼は私の混乱をさらについてきた。
「なぁ、亜紀ちゃん。俺のこと信じて欲しい」
私は何も言えなくなった。二人で黙ったままの時間が1分ほど過ぎると、目の前に警察署が見えてきた。
「ここが警察署です。車この駐車場でいいかな」
そう呟いて車を止めた。
エンジンを止めると彼が車のドアを開けて出ようとした。
「丸山さんのこと、本当に信じていいんですか?」
そう呟くと彼は素っ気なく「うん」と一言だけ言うと車の外に出た。
普段は詐欺師並みに饒舌な癖に、こう言うときは「うん」しか言わないんだと彼の背の高い後ろ姿を見て思った。
私も一呼吸置いて彼の後を追うように車を降りた。
「亜紀ちゃん、俺テレビで見せる姿の何倍も神経質で拗らせてるから、俺の勝ちだ」
「じゃあ具体的に私に勝ってるなって所教えてください」そう言って頬を緩めた。
「亜紀ちゃんの言ってること共感できるよ。人のこと滅多に好きになれないし、適当に付き合ってる女と一緒にいても二時間が限度だから。
どうしても泊まりでどこか行きたいって言われて連れてったら、他人がいると眠れないし疲れるし翌日げっそりして会話もしたくないから」
そう言って彼は本当にやつれた表情になった。だったら行かなきゃいいのにと言う言葉を飲み込んだ。彼なりに一応付き合っている女の人の希望は叶えようと思っていたのだろう。
そして、どうしても聞きたいことがあって切り出した。
「…丸山さん、一つ聞いてもいいですか?その二時間で身体の関係持ってるんですよね?」
「はははっ……それはご想像にお任せします」
彼は気まずそうに口籠った。
「それ神経質じゃないですよね?私好きじゃない人に体触られたり、半径五十センチ以内に入られるのも嫌ですから」
彼は少し焦りながらこう弁解した。
「男と女は違うから、ね?」
私が怪訝な顔で何にも言い返さないと彼は「男にはとにかく女抱きたいって時があるんだよ!」と突然叫んだ。
あまりの開き直りに思わず笑ってしまった。
「それ男にはじゃなくて、俺にはって話でしょ?凄く正直ですね」
彼が急に真面目な調子で喋り始めた。
「正直ついでに言うけど、日本各地でこういう風に女口説いてんじゃないかって思ってるでしょ?」
一瞬横にいる彼を見ると、鋭い目つきで私を見ていた。
「…まだ3割ぐらいは思ってます」
「今日やたらとスマホ鳴ってるから、女とやり取りしてるんだろうなって疑ってたでしょ?」
「7割ぐらいそう思ってました」
「これは、先輩八割、店の女の営業二割だから」
「…店の女」私がそういって黙り込んだけど、彼は続けた。
「女癖が悪い奴は病気だから、治らないじゃないか?って不安に思ってるんでしょ?」
「それは9割ぐらい思ってます」
「今は物珍しいから寄ってくるけど、そのうち、飽きたら違う女の所行くって勝手に決めつけてんだろ?」
「それは九割九分九厘九毛九糸思ってます」
すると彼は余裕たっぷりにこう言った。
「0.00001 %でも俺のこと信じてくれてんだ。なぁ亜紀ちゃんも俺のこと好きなんでしょ?」
テレビでは美味しそうなスイーツの紹介がされていた。
女の人の甲高い声が車内に響く。
「……割合への変換早いですね、合ってるかな、あー紙とペンないとわかんないや。数学苦手だし」
私はそうやって話を誤魔化した。彼は私の混乱をさらについてきた。
「なぁ、亜紀ちゃん。俺のこと信じて欲しい」
私は何も言えなくなった。二人で黙ったままの時間が1分ほど過ぎると、目の前に警察署が見えてきた。
「ここが警察署です。車この駐車場でいいかな」
そう呟いて車を止めた。
エンジンを止めると彼が車のドアを開けて出ようとした。
「丸山さんのこと、本当に信じていいんですか?」
そう呟くと彼は素っ気なく「うん」と一言だけ言うと車の外に出た。
普段は詐欺師並みに饒舌な癖に、こう言うときは「うん」しか言わないんだと彼の背の高い後ろ姿を見て思った。
私も一呼吸置いて彼の後を追うように車を降りた。