第198話 再会は突然に

文字数 1,589文字

雪乃さんはスタイルが抜群にいい、なのであのとんでもない服が凄くよく似合う。彼は雪乃さんを見てスタジオの床に崩れ落ちた。

司会の人が「こちらは丸山くんのお気に入りのソープ嬢雪乃さんです」と丁寧に紹介し字幕でもデカデカとそう出ていた。

「ヤメロ!これ絶対俺の彼女見てるでしょ?俺彼女に滅茶苦茶怒られて最近雪乃ちゃんの所行ってないし!」と叫んでいる。

他の芸人さんが「本当に来てないの?」と聞くと雪乃さんが「あれだけ熱心に通って愛してくれてたのに最近来てくれないの」と喋った。
雪乃さんって声も喋り方もセクシーだ、こめかみがピクピクした。

愛してくれてたって何?

北澤さんが「こいつどんなことしてくるの?」と尋ねると雪乃さんが「本当に普通のことしかして来ないの、何もかも普通」と言ってスタジオの爆笑を掻っさらった。

彼は再び床に崩れ落ちた。
「本当に止めて、雪乃ちゃんこれ以上言わないで。俺の男としての尊厳が……」
すると司会者の人が助け舟を出した。
「普通の男の丸山くんだけれども、良いところもあるよね?ねぇ雪乃ちゃん」

「さっき彼女のアンケートにも書いてあったけれど丸山さんは優しくて、雪乃ちゃんは世界で一番綺麗だねっていつも囁いてくれるの」

北澤さんが「あれ、お前彼女と付き合ってる時に雪乃ちゃんの所通ってたんだよな?彼女よりも雪乃ちゃんの方が綺麗なんだ」と余計なことを叫んだ。

「本当にやめてくれ、折角風俗通いしたこと彼女に許してもらえたのに、またこれで振り出しじゃねぇかよ!」
彼は泣きそうな顔をしてまだ座り込んでいた。

私の方が泣きたいよ。

北澤さんがまた余計なことを言い出した。
「亜紀ちゃんアンケートまで書いてくれたのにこんな事になって絶対怒ってるよ、謝った方がいいんじゃない?」

周りの芸人さん達も囃し立てている。
彼は突然正座した。

「亜紀、風俗店に行って申し訳ありませんでした」と土下座するように頭を深々と下げた。

そんなパフォーマンスされても絶対に許さないから。

すると彼が何やらカンペみたいなものを読み出した。「そんな雪乃ちゃんのデビュー作が、今日発売になりました。みんな買って下さい」

またAVデビューの宣伝に使われてる。雪乃さんは拍手で見送られてどこかに行ってしまった。

北澤さんが彼をフォローするように違う話をし出した。
「こいつね、びっくりする話があるんだけど、この間仕事と次の仕事の時間がたまたま空いたの。次の仕事が富山でロケなわけ、俺とマネージャーはゆっくり行くかって言ってたのに、いつの間にかこいついなくなってるの」

彼が「その話は違う意味でヤメロ!」と叫んだ。

北澤さんが話を続ける。「マネージャーが亜紀先生のとこ行ってるんですよって言ってて、富山で合流したあとコイツに一回やって来たんか?って聞いたら、少し顔見てきただけ」って言うの、皆さんも十代二十代の前半ぐらい彼女の顔少し見る為だけに会いに行くってあったでしょ?」

「お前今いくつなんや?」「42」
会場に笑いが起きた。
「別にいいだろ?彼女の顔見たいただろ?」「その、42のおっさんが今恋して頭おかしくなってるんだよ!何で急に嫌いな歴史の本読み出したの?何で急にホワイトアンドブラックに詳しくなったの?」と北澤さんが叫んだ。
彼は「彼女の好きな物好きになって何が悪い?ほっとけ!」と大声で叫び返した。

周りの芸人さん達に「そんなに好きならじゃあ今プロポーズしろよ」と騒がれて彼はこう叫んだ。

「うるせぇな、俺は絶対結婚なんかしないからな」
「何でやる気もないのに抱きしめて寝させてくる頭おかしい彼女と結婚しないの?」と北澤さんが煽るように言うと彼は「SMクラブに言ってきてってせがんでくる頭おかしい彼女と絶対に結婚しないからな!」と叫んでCMに入った。

最悪だ、何もかも最悪だ。もう滅茶苦茶。

彼の為に良かれと思ってアンケートに協力した自分をぶん殴りたい。



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