第174話 師走の夜
文字数 1,830文字
「姉ちゃんと兄ちゃん、俺だけ部屋に残してこんな所で楽しそうにしてて俺も入れてよ!」
「何でお前も入れなきゃいけないんだよ!」
しげちゃんが窓を開けて部屋の中に入った。
私も中に入って窓を閉め、カーテンを閉めた。寒すぎてエアコンを入れたまま寝ているので部屋の中は暖かい、けれどベランダの方が居心地が良かった。
「お前いつから起きてたんだよ!」
「ついさっき、本当についさっき。姉ちゃん達がいちゃついてる所なんて見てないよ、ほ、本当だよ」
必死に嘘をつき通そうとする智を見て私と彼は顔を見合わせ、どちらからともなく笑った。奴はやっぱり愛すべき馬鹿なのだ。
三人で隅に追いやられた机に座ると彼は智に言った。
「いいか、俺は東京に住んでて、あきちゃんはここに住んでる。お前は俺より近くに住んでる。お前は来ようと思えばいつでも来れる。でも俺は仕事の合間を縫って何とか会える。ということは俺が来てる時はお前は遠慮しなければならない。わかったか?」
「わかったよ、兄ちゃん!」
智は子供のように元気に返事をした。
「兄ちゃんそれと俺も単独ライブに行きたいな」「わかった、わかったって」「あと美子も」「智の奥さん?」「そうだよ、わかったわかった」と彼は言った。
「なぁ兄ちゃん、ネタって兄ちゃんが作ってるの?」
「世間のイメージで俺が作ってると思われがちだけどな、北澤と二人で作ってんだよ」
「じゃあ漫才ってどうやって作ってんの?」
智の素朴な疑問だけど、確かに私も興味がある、一体どうやって作ってるんだろう。彼は数秒の後に何故だか私に話を振った。
「なぁ亜紀。俺と付き合ってること誰かに言った?」
「何急に?心配しなくてもあなたが私の個人情報喋りまくってくれるお陰で、この間教頭先生にまで「山浦先生は丸山さんと付き合ってるんか?」って聞かれたから!」
「それなんて答えたの?」
「職員室中の人が私から目逸らした所で校長先生が「じゃあ職員会始めましょう」って気を使ってくれたの、あの気まずい時間といったら」
「そうか、じゃあ友達とか知り合いは?」
「たかちゃん以外は言ってない」
「何でだよ!友達全員に言ってくれよ」
「心配しなくてもあなたが個人情報喋りまくってくれたお陰でラビッツのネット掲示板に私の登山の時の顔写真貼られてるらしいから!
仲良い先生が「35歳顔はまぁまぁなBBA、変態的なBBA、丸ちゃんBBA専ってめっちゃ書かれてましたよ」って意気揚々と教えてくれたから!何で私がネットで誹謗されなきゃならないの!」
さっきいい彼女になりたくて黙っておこうと思った事柄を全て吐き出してしまった。どうやら私には煽り耐性がないようだ。彼は私の方に向かって深々と頭を下げた。
「本当にすみませんでした!」
そして智の方を向き直るとこう言った。
「こういう風に北澤に話しさせて面白かったくだりをマネージャーにメモさせてとっておく。それで俺が一人で完成させる。
亜紀もまぁまぁ評価するけど北澤の方が数十倍キレてて面白いけどな」
「私素人だから!何で笑いで北澤さんと比べられて評価されなきゃならないの!」
そう言うと彼は「こういうアフターフォローもちゃんとするからな」と笑った。
「そっか、じゃあ兄ちゃんの舞台楽しみにしてるよ」
ふと気になることがあった。スマホで検索した。
「今ネットで見たらチケットsold outって書いてあるけど、そんな簡単に席増やせるの?」
「関係者席ってのがあるんだよ」
今までライブに行った時に関係者受付と書いてある場所のことを思い出した。
「関係者受付って書いてある所?」
「そう、そこで名前言えば連れてってくれるから」
「すごーい!いつもここはメンバーの奥さんとか業界の関係者とかメンバーの子供が来る場所なんだなって思ってたから、嬉しい。そんな場所に入れるの」
「そんな事に無邪気に喜んでくれて嬉しいよ。ホワイトアンドブラックはいないけれど、関係者席で見てくれ」
「やった関係者席で見られる!」
何故だか智と手を取り合って喜んだ。
「あと一つ約束がある。関係者席にテレビで見たことある人沢山いると思うけどはしゃぐなよ!」彼は智に言った。
「わかったよ、兄ちゃんまかせといて」そう胸を張った。
「そろそろ寝るか、明日も始発で金沢いかなきゃいけないし」「わかった!」と智が元気よく返事をした。
「何でお前も入れなきゃいけないんだよ!」
しげちゃんが窓を開けて部屋の中に入った。
私も中に入って窓を閉め、カーテンを閉めた。寒すぎてエアコンを入れたまま寝ているので部屋の中は暖かい、けれどベランダの方が居心地が良かった。
「お前いつから起きてたんだよ!」
「ついさっき、本当についさっき。姉ちゃん達がいちゃついてる所なんて見てないよ、ほ、本当だよ」
必死に嘘をつき通そうとする智を見て私と彼は顔を見合わせ、どちらからともなく笑った。奴はやっぱり愛すべき馬鹿なのだ。
三人で隅に追いやられた机に座ると彼は智に言った。
「いいか、俺は東京に住んでて、あきちゃんはここに住んでる。お前は俺より近くに住んでる。お前は来ようと思えばいつでも来れる。でも俺は仕事の合間を縫って何とか会える。ということは俺が来てる時はお前は遠慮しなければならない。わかったか?」
「わかったよ、兄ちゃん!」
智は子供のように元気に返事をした。
「兄ちゃんそれと俺も単独ライブに行きたいな」「わかった、わかったって」「あと美子も」「智の奥さん?」「そうだよ、わかったわかった」と彼は言った。
「なぁ兄ちゃん、ネタって兄ちゃんが作ってるの?」
「世間のイメージで俺が作ってると思われがちだけどな、北澤と二人で作ってんだよ」
「じゃあ漫才ってどうやって作ってんの?」
智の素朴な疑問だけど、確かに私も興味がある、一体どうやって作ってるんだろう。彼は数秒の後に何故だか私に話を振った。
「なぁ亜紀。俺と付き合ってること誰かに言った?」
「何急に?心配しなくてもあなたが私の個人情報喋りまくってくれるお陰で、この間教頭先生にまで「山浦先生は丸山さんと付き合ってるんか?」って聞かれたから!」
「それなんて答えたの?」
「職員室中の人が私から目逸らした所で校長先生が「じゃあ職員会始めましょう」って気を使ってくれたの、あの気まずい時間といったら」
「そうか、じゃあ友達とか知り合いは?」
「たかちゃん以外は言ってない」
「何でだよ!友達全員に言ってくれよ」
「心配しなくてもあなたが個人情報喋りまくってくれたお陰でラビッツのネット掲示板に私の登山の時の顔写真貼られてるらしいから!
仲良い先生が「35歳顔はまぁまぁなBBA、変態的なBBA、丸ちゃんBBA専ってめっちゃ書かれてましたよ」って意気揚々と教えてくれたから!何で私がネットで誹謗されなきゃならないの!」
さっきいい彼女になりたくて黙っておこうと思った事柄を全て吐き出してしまった。どうやら私には煽り耐性がないようだ。彼は私の方に向かって深々と頭を下げた。
「本当にすみませんでした!」
そして智の方を向き直るとこう言った。
「こういう風に北澤に話しさせて面白かったくだりをマネージャーにメモさせてとっておく。それで俺が一人で完成させる。
亜紀もまぁまぁ評価するけど北澤の方が数十倍キレてて面白いけどな」
「私素人だから!何で笑いで北澤さんと比べられて評価されなきゃならないの!」
そう言うと彼は「こういうアフターフォローもちゃんとするからな」と笑った。
「そっか、じゃあ兄ちゃんの舞台楽しみにしてるよ」
ふと気になることがあった。スマホで検索した。
「今ネットで見たらチケットsold outって書いてあるけど、そんな簡単に席増やせるの?」
「関係者席ってのがあるんだよ」
今までライブに行った時に関係者受付と書いてある場所のことを思い出した。
「関係者受付って書いてある所?」
「そう、そこで名前言えば連れてってくれるから」
「すごーい!いつもここはメンバーの奥さんとか業界の関係者とかメンバーの子供が来る場所なんだなって思ってたから、嬉しい。そんな場所に入れるの」
「そんな事に無邪気に喜んでくれて嬉しいよ。ホワイトアンドブラックはいないけれど、関係者席で見てくれ」
「やった関係者席で見られる!」
何故だか智と手を取り合って喜んだ。
「あと一つ約束がある。関係者席にテレビで見たことある人沢山いると思うけどはしゃぐなよ!」彼は智に言った。
「わかったよ、兄ちゃんまかせといて」そう胸を張った。
「そろそろ寝るか、明日も始発で金沢いかなきゃいけないし」「わかった!」と智が元気よく返事をした。