第18話 コスモ山浦

文字数 789文字

日曜日午後十二時、佐久平駅の新幹線の改札口で少し緊張しながら丸山さんを待っていた。

東京から帰ってきた親子連れが楽しそうにお土産片手に改札から出てきた。

私は普段の休日に出かける時はもうちょっとお洒落な格好をしているし、メイクもしている。

けれど丸山さんに「こいつ何か勘違いしてる」と思われても嫌なので、敢えて登山の時と同じくスッピンでジャージとtシャツとパーカーに一つ結びという格好で待っていた。

五分ぐらい待っていると、丸山さんがキャップを目深に被って本当に降りてきた。

私が手を振ると丸山さんが気づきこちらに、来てくれた。

「本当にタオルだけの為に来てくださるなんて感激です」

そういうと、彼は爽やかにこう言った。

「いや、人から借りたものは返さなくちゃ。それに、ここ気に入ったから、もう一度来たくて」

「そう言えば丸山さん、山賊焼が食べたいんですよね?実は山賊焼って松本の食べ物で、ここら辺のレストランでないんですよ。

良かったら家来ませんか?あと揚げるだけにしてるんで。あっ本当に襲ったりしないんで安心して下さい」

そう笑顔で言うと数秒の間の後に

「えっ、いいの?じゃあ行くよ」と笑顔で言った。

丸山さんを助手席に乗せると

「母と姉以外の女性が運転する車に初めて乗ったよ」と言った。

「本当ですか?田舎は一人一台乗らないとやってけないですからね。バスも電車もないし」

駐車場を出て交差点に止まると信号が青に変わり車を発進させた。駅前のショッピングモールは今日も家族連れで溢れている。

「亜紀先生、運転上手だね。運転上手い女の人はカッコいいよ」

丸山さんがお世辞を言い始めた。

「私この間の件があるのでお世辞、簡単に信じませんよ」

「まだ覚えてたんだ」「私恨み深いですから」と言って二人で笑っていると、すぐにアパートが見えてきた。
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