第193話 クリスマスイブ

文字数 1,836文字

泊まってってと言われたが不思議と落ち着いていた。絶対に酔っ払って帰ってきてすぐ寝る様子が想像がついたからだ。

渋谷駅の雑貨屋さんで着替えとパジャマを買った。東京はこんな時間でも物が沢山売っていてしかもどれも可愛い、おまけにクリスマスラッピングされていて気分が更に良くなった。

彼のマンションを目指して歩いているとすれ違うのはやけにカップルだらけだ。どうやら日本においてクリスマスイブは恋人達にとって大切なイベントらしい。

彼が酔わずに帰ってきたら世間一般並みの甘いクリスマスイブを過ごせるのかもしれない。二人で居れるだけで楽しいけど。

教えて貰ったとおりにマンションのオートロックを開けると鍵を開けて彼の部屋に入った。

テレビをつけたけれど面白い番組がない。スマホも電池が少ないので、買ったパジャマを開けてみた。

すると驚愕の事実がわかった。これズボンが足の付け根より数センチしかないホットパンツタイプじゃん。隣にあった奴と間違えた、思わず笑ってしまった。

普段露出しない私がこんなの着てたら「今夜の為にこういう服着て待っててくれたの」とか言われそう。

でもどうせ酔い潰れて帰ってくるだろうからいいや、彼が寝たの見計らってこれ着て寝よう。

ソファでテレビを見ているといつの間にか寝てしまっていた。

深夜1時ごろチャイムが鳴ったので慌てて飛び起きるとモニターにマネージャーさんと案の定酔っ払って眠そうな彼が映っていた。まぁこうなるよね。

玄関を開けてマネージャーさんに「迷惑かけちゃってすみません」と謝ると「亜紀先生逆に申し訳ないです。せっかくのイブなのに」と余計な気遣いをされた。

酔っ払った彼は「亜紀会いたかったよ」と抱きついてきた。マネージャーさんも呆れ顔で見ている。
「改めて紹介してやろう。俺の妻の亜紀だ。今から甘い夜を過ごすから余計な奴は早く帰って」と彼が叫んだ、かなり酔っ払っている。

とにかく彼を抱きつかせたままマネージャーさんと明日の打ち合わせをした。

「明日は何時にどうすればいいですか?」
「明日は6時に車で迎えに来るので下に降りてて貰えば大丈夫です」
「絶対に遅れないように起こします」そう頭を下げて彼を部屋の中に入れると玄関で寝始めてしまった。

「起きて、とにかくシャワー浴びて寝よう」
「もう駄目、動けない」と相変わらず寝たままだ。

どうしようかなと困っていると彼が急に「気持ち悪い」と言い出した、「吐きそう?」と聞いた瞬間に彼は玄関に近い廊下で吐いてしまった。

「大丈夫?」と背中をさすったけれど「もう駄目気持ち悪い」と小声で呟き、顔色もやけに青白い。

「とにかくシャワー浴びに行くよ」と言い彼を何とか洗面所まで連れてくと床に座り込んで「脱がして」と甘えてきた。
仕方がないので彼を万歳させて上の洋服を脱がすと何を思ったのか「はいじゃあ次亜紀も上脱いで」と満面の笑みで言われた。
「脱ぐわけないでしょ?下洗いしてから洗濯するから脱いだ服とにかく全部洗面台に置いといて」
彼は結構酔っ払っている。
「ケチケチ!亜紀のケチ!俺は亜紀の夫だから裸を見る権利があるのに!じゃあ次ズボンとパンツも脱がして」
「自分で脱ぎなさい!今から廊下の片付けしてくるから」

そう言って洗面所の戸を閉め、玄関の後始末に取りかかった。自分で言うのも何だか職業上手慣れている、冬場は月一回は誰かしら吐くからだ。
甘いクリスマスイブは過ごせてないけれど、私が居て良かったよ、本当に。

だいたいの片付けが終わり手を洗っているとら彼が洗面所から出てきたので冷蔵庫から水を出して渡した。
「あーもう亜紀何もかもごめん」
少し酔いが覚めた彼がそう言うので、とにかく先寝ててと彼を寝室に行かせた。

私もシャワーを浴びて、洗濯物をお風呂場に干していると、パジャマを来た時彼が急いでトイレに入って吐くような気配がしたので慌てて様子を見に行った。
トイレの戸が開いていたので声をかけて背中をさすっていた。

「クリスマスイブの夜に抱きもせずに吐いてる男って最悪だな」
「ほらプレゼントくれたじゃん」そう慰めていると「もう一回シャワー浴びる」と彼が後ろを振り向いた。

「あー何で今日に限って足出してるの?」
「買ったらこんなんだったの」
「撫で回したいけど触る元気がない。じっくり見る元気もない」と呟いてシャワーを浴びに行った。









ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み