第189話 クリスマスイブ
文字数 1,730文字
本当はここで甘えた一言を言えればいいのだろう、でも恋愛偏差値35の私は何と言っていいかわからず口が勝手に喋り出した。
「守りに来たって二人ともあなたの関係者でしょ!」
「そう来ると思ったぜ、ごめんなさい。特にあの男の方大丈夫だった?何にもされてない?」
「林田さん怖すぎるから、しげちゃんが呼んでるから一緒に来てって私のこと騙してどっか連れてこうとしたんだって」
「うわっ最悪だな。何にもされてない?」
「木村さんとか団蔵さんとか皆さんが助けてくれた、本当怖かった」
「あいつ毎年のように来て突っかかってくるんだよ、面倒だからほっといたらこれだよ、来年から絶対出禁にするから。あーもう俺が一番嫌なことしてきやがって」
林田さんは強烈に彼のことを意識しているけれど羨望されている彼はそこまででもない、これもまたよくある話だ。
彼の昔の恋人の話は言わないでおいた、彼だって私に知られたくないだろうし、写真の件は思い出したくもないかもしれない。
「ごめん、先に謝ります。だから関係者席で林田さんと騒ぎ起こしました。本当にごめんなさい」
「騒ぎなんかどんどん起こせ、本当に何もなくて良かった」
彼はそう言って私を抱きしめた。
「そういえば智達は?」
「美子ちゃんの実家東京だからそこに今日泊まるってもう行っちゃった」
「そうかちょうどよかったな、なぁ舞台どうだった?」
彼は私を離すと顔を覗き込んでニヤリと笑った、褒めてほしいのだろう、それも物凄く。
「凄く面白かった。重ちゃんって実は凄い人だったんだって気づいた」
「今気づいたの?今まで俺のことちょっと面白いおじさんとしか思ってなかったんだろ?」
「そうかも、こんな歓声浴びてる所見たことなかったから、なんか重ちゃんの凄さに今まで全然気付かなかった」
ふと、さっきのとうもろこしの髭女の言葉が思い出された。私じゃ釣り合ってないのかな。
彼から視線を外し渋谷駅の駅舎に目をやると彼が心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「どうしたの?何かあった?」
私はこう言う時に「何も言わない」という選択肢ができないのだ。私の口は独自に意思を持っていて脳が静止しても口が喋ってしまう。
「何か関係者席に座ってる人達が凄かったし、私が一生関わらないと思ってた人たちがいたりとか、舞台でキラキラ輝いててかっこよすぎて、私と住んでる世界が違うんじゃないかって思っちゃって」
そう言うと彼は困った顔をしていた。そんな卑屈なこと言われても困るよね。私だって卑屈な人間は嫌だ。どうして私の口はいつも後先考えずに何でもかんでも言ってしまうんだろう。
突然彼が大声で叫んだ。
「基本ラインの確認だ、丸山重明は山浦亜紀を世界中の誰よりも愛しています」
周りの人が一斉にこちらを振り向く、けれどもすぐに自分たちの世界に入ってしまった。
唐突な告白に思わず笑ってしまった。
「何で某有名野球漫画のパロディを叫ぶの」
「俺凄く今いい気分、こういうの好きだから、なぁ南?」
「私は目立つの好きじゃないの!ネットニュースに書かれたらどうすんの?」
「どうもしない、事実って認めるだけ」
「恥ずかしいじゃん」
そう言って俯くと彼が悲しい顔をした。どうしてここで可愛く「ありがとう」と言えないのだろう、いや言えるでしょ?言おうとしてないだけ。すると口が勝手にこう呟いた。
「でも嬉しかった」
彼の顔が急に明るくなった。私の口もたまには役立つもんだ。
「ツンデレというコンテンツの何がいいか全く理解できなかったけれど、今ようやくわかった、クソ可愛いな」
「ツンデレ?私35でツンデレになっちゃったの?」
そう笑っていた。すると呼吸を止めて二秒彼が真剣な目をしたから、思わず笑うのを止めて彼を見つめた。
「なぁ亜紀、今日家泊まってかない?この間の続きしようよ」思わず彼の目を見返すとやっぱり真剣な眼差しで私を見つめていた。
こんなにストレートに言われるとどうしていいのかわからない。でも断る理由もないだろう。彼の事が好きなんだから。でもどうやってしたらいいのだろう、あーもう細かい事は気にしない、私は戸惑いながらもゆっくりと頷いた。
「守りに来たって二人ともあなたの関係者でしょ!」
「そう来ると思ったぜ、ごめんなさい。特にあの男の方大丈夫だった?何にもされてない?」
「林田さん怖すぎるから、しげちゃんが呼んでるから一緒に来てって私のこと騙してどっか連れてこうとしたんだって」
「うわっ最悪だな。何にもされてない?」
「木村さんとか団蔵さんとか皆さんが助けてくれた、本当怖かった」
「あいつ毎年のように来て突っかかってくるんだよ、面倒だからほっといたらこれだよ、来年から絶対出禁にするから。あーもう俺が一番嫌なことしてきやがって」
林田さんは強烈に彼のことを意識しているけれど羨望されている彼はそこまででもない、これもまたよくある話だ。
彼の昔の恋人の話は言わないでおいた、彼だって私に知られたくないだろうし、写真の件は思い出したくもないかもしれない。
「ごめん、先に謝ります。だから関係者席で林田さんと騒ぎ起こしました。本当にごめんなさい」
「騒ぎなんかどんどん起こせ、本当に何もなくて良かった」
彼はそう言って私を抱きしめた。
「そういえば智達は?」
「美子ちゃんの実家東京だからそこに今日泊まるってもう行っちゃった」
「そうかちょうどよかったな、なぁ舞台どうだった?」
彼は私を離すと顔を覗き込んでニヤリと笑った、褒めてほしいのだろう、それも物凄く。
「凄く面白かった。重ちゃんって実は凄い人だったんだって気づいた」
「今気づいたの?今まで俺のことちょっと面白いおじさんとしか思ってなかったんだろ?」
「そうかも、こんな歓声浴びてる所見たことなかったから、なんか重ちゃんの凄さに今まで全然気付かなかった」
ふと、さっきのとうもろこしの髭女の言葉が思い出された。私じゃ釣り合ってないのかな。
彼から視線を外し渋谷駅の駅舎に目をやると彼が心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「どうしたの?何かあった?」
私はこう言う時に「何も言わない」という選択肢ができないのだ。私の口は独自に意思を持っていて脳が静止しても口が喋ってしまう。
「何か関係者席に座ってる人達が凄かったし、私が一生関わらないと思ってた人たちがいたりとか、舞台でキラキラ輝いててかっこよすぎて、私と住んでる世界が違うんじゃないかって思っちゃって」
そう言うと彼は困った顔をしていた。そんな卑屈なこと言われても困るよね。私だって卑屈な人間は嫌だ。どうして私の口はいつも後先考えずに何でもかんでも言ってしまうんだろう。
突然彼が大声で叫んだ。
「基本ラインの確認だ、丸山重明は山浦亜紀を世界中の誰よりも愛しています」
周りの人が一斉にこちらを振り向く、けれどもすぐに自分たちの世界に入ってしまった。
唐突な告白に思わず笑ってしまった。
「何で某有名野球漫画のパロディを叫ぶの」
「俺凄く今いい気分、こういうの好きだから、なぁ南?」
「私は目立つの好きじゃないの!ネットニュースに書かれたらどうすんの?」
「どうもしない、事実って認めるだけ」
「恥ずかしいじゃん」
そう言って俯くと彼が悲しい顔をした。どうしてここで可愛く「ありがとう」と言えないのだろう、いや言えるでしょ?言おうとしてないだけ。すると口が勝手にこう呟いた。
「でも嬉しかった」
彼の顔が急に明るくなった。私の口もたまには役立つもんだ。
「ツンデレというコンテンツの何がいいか全く理解できなかったけれど、今ようやくわかった、クソ可愛いな」
「ツンデレ?私35でツンデレになっちゃったの?」
そう笑っていた。すると呼吸を止めて二秒彼が真剣な目をしたから、思わず笑うのを止めて彼を見つめた。
「なぁ亜紀、今日家泊まってかない?この間の続きしようよ」思わず彼の目を見返すとやっぱり真剣な眼差しで私を見つめていた。
こんなにストレートに言われるとどうしていいのかわからない。でも断る理由もないだろう。彼の事が好きなんだから。でもどうやってしたらいいのだろう、あーもう細かい事は気にしない、私は戸惑いながらもゆっくりと頷いた。