第17話 コスモ山浦
文字数 1,307文字
次の日の金曜日の夜のことだった。
久しぶりに仕事が何もなく、そろそろ帰ろうかと思った午後五時半、職員室に足を踏み入れると何やら騒がしい。
森野先生が「困った、どうしよう」と騒いでいる。
敏雄先生に「どうしました?」と耳打ちすると「森野先生、今日担当のPTAの部会があるんだけど、お子さん熱出しちゃったみたい。
ほら俺も代わってあげたいけれど、今日娘駅まで送る約束してんだよね。他の先生達と金曜日だから用事あるみたいでさ」と教えてくれた。
正直いい気味だと思った。
いつも私に嫌味を言ってきて謎の派閥間対立まで引き起こされた私は彼女に恨みしかない。
私の後ろの座席で六年生担当の雄介先生と特別支援教室担当の雅司先生が
「子供ぐらいちょっと家で寝かせとけば良くない?」
「女はいいよな、ああやって子供だしにして騒げば誰か仕事代わってくれるんだからさ」
と陰口を言っているのが聞こえた。
その瞬間カチンと来た。
二人とも奥さん教員で実家も遠いけど、もう職場復帰しているはず。二人とも小さな子供が三人いるのに学校休んでるの見たことがない。
奥さんが全部一人で被ってるからでしょ?
小さい子供家で寝かせとけって、そんなのあんまりでしょ?
私は席を立つと森野先生の所へ歩み寄った。
「先生、私代わるからお子さんのところ行ってあげて」
森野先生はまさか私が代わってくれるなんて思いもしなかったようで目が点になっている。
というか職員室中のみんなの目が点になっている。
「あ、ありがとう」
「ほら早く行って」私がそういうと森野先生は帰り支度を始めた。
いい人なんだけど空気を読めない教頭先生が謎の拍手を始めた。
「電撃的な和解、派閥間対立解消の瞬間!」と叫んだ。
職員室が静まり返る。
「教頭先生、派閥なんてありませんから!こんな小さい職員室で派閥なんて馬鹿でしょ?」
私が真っ当な正論を言ってこの場を収めようと思ったが、それでも教頭先生は致命的に空気が読めない。
「いやだって同じ歳だし独身派と結婚派って対立するもんでしょ?」
「対立も何も、私は好きで独身でいるんじゃありません!私だって結婚したかったし、子供欲しかったんです!
だから森野先生が羨ましいし、お子さんがいる先生の負担はなるべく減らしてあげたい。対立してないです!」
そう言うと私の悲痛な叫びを、みんなが同情の目で見ている事に気がついた。
「この野郎、私の一人損じゃん」と心の中で呟くと教頭先生が「秋川さん息子さんの結婚相手いないって言ってたけれど」と言った。
秋川さんの息子さんは50歳独身、ニートでクレーマー、趣味が狩猟でやたらと猟と称して猟銃を持ち歩いている。
村でも有名な厄介者だ。
怒りに震える私を見てみんな次々に「お先に失礼します」と帰っていく。
森野先生も「先生ありがとう、お先に帰らせて貰うわ」と職員室を出ていった。
「教頭先生!」と怒ると「あっ、俺も帰ろう、戸締りよろしく」と走って出て行ってしまった。
誰もいなくなった職員室で小梅丈夫ばりに叫んだ。
「チクショー!」
久しぶりに仕事が何もなく、そろそろ帰ろうかと思った午後五時半、職員室に足を踏み入れると何やら騒がしい。
森野先生が「困った、どうしよう」と騒いでいる。
敏雄先生に「どうしました?」と耳打ちすると「森野先生、今日担当のPTAの部会があるんだけど、お子さん熱出しちゃったみたい。
ほら俺も代わってあげたいけれど、今日娘駅まで送る約束してんだよね。他の先生達と金曜日だから用事あるみたいでさ」と教えてくれた。
正直いい気味だと思った。
いつも私に嫌味を言ってきて謎の派閥間対立まで引き起こされた私は彼女に恨みしかない。
私の後ろの座席で六年生担当の雄介先生と特別支援教室担当の雅司先生が
「子供ぐらいちょっと家で寝かせとけば良くない?」
「女はいいよな、ああやって子供だしにして騒げば誰か仕事代わってくれるんだからさ」
と陰口を言っているのが聞こえた。
その瞬間カチンと来た。
二人とも奥さん教員で実家も遠いけど、もう職場復帰しているはず。二人とも小さな子供が三人いるのに学校休んでるの見たことがない。
奥さんが全部一人で被ってるからでしょ?
小さい子供家で寝かせとけって、そんなのあんまりでしょ?
私は席を立つと森野先生の所へ歩み寄った。
「先生、私代わるからお子さんのところ行ってあげて」
森野先生はまさか私が代わってくれるなんて思いもしなかったようで目が点になっている。
というか職員室中のみんなの目が点になっている。
「あ、ありがとう」
「ほら早く行って」私がそういうと森野先生は帰り支度を始めた。
いい人なんだけど空気を読めない教頭先生が謎の拍手を始めた。
「電撃的な和解、派閥間対立解消の瞬間!」と叫んだ。
職員室が静まり返る。
「教頭先生、派閥なんてありませんから!こんな小さい職員室で派閥なんて馬鹿でしょ?」
私が真っ当な正論を言ってこの場を収めようと思ったが、それでも教頭先生は致命的に空気が読めない。
「いやだって同じ歳だし独身派と結婚派って対立するもんでしょ?」
「対立も何も、私は好きで独身でいるんじゃありません!私だって結婚したかったし、子供欲しかったんです!
だから森野先生が羨ましいし、お子さんがいる先生の負担はなるべく減らしてあげたい。対立してないです!」
そう言うと私の悲痛な叫びを、みんなが同情の目で見ている事に気がついた。
「この野郎、私の一人損じゃん」と心の中で呟くと教頭先生が「秋川さん息子さんの結婚相手いないって言ってたけれど」と言った。
秋川さんの息子さんは50歳独身、ニートでクレーマー、趣味が狩猟でやたらと猟と称して猟銃を持ち歩いている。
村でも有名な厄介者だ。
怒りに震える私を見てみんな次々に「お先に失礼します」と帰っていく。
森野先生も「先生ありがとう、お先に帰らせて貰うわ」と職員室を出ていった。
「教頭先生!」と怒ると「あっ、俺も帰ろう、戸締りよろしく」と走って出て行ってしまった。
誰もいなくなった職員室で小梅丈夫ばりに叫んだ。
「チクショー!」